インターネット社会では、個人が著作物を公開して、世界中に見てもらうことが簡単にできるようになっています。
また逆に、他人が創作した著作物等なのに、勝手に海賊版をアップロードしてしまう人もいます。
今回は、著作権の利用と保護について、文化庁の最新の動きを少しだけご紹介いたします。
まずは、著作物の利用について。
2025年1月20日~2月19日18時まで、未管理公表著作物裁定制度に関する文化庁告示案についての、パブリックコメントが募集中です。
この裁定制度は現行では、著作者不明(匿名)の場合、著作物を利用したいと国に申し出て長官が定める補償金を支払う(著作権者のために供託する)ことで、一定期間、著作物を利用できる、というものです。
未管理公表著作物とは、ざっくり言うと
1.著作権について、著作権等管理事業者による管理が行われておらず、
2.著作物等を利用させるかどうかについての著作権者の意思を円滑に確認するために必要な情報が適切に公表されていない著作物です。
例えば、クリエイターがイラストサイトに掲載したイラストを、利用したいと考える企業がいたとします。
企業はクリエイターにメッセージを送ろうとしますが、クリエイターの連絡先の記載がない場合、許可を得られないので、困ってしまいます。
そこで、改正著作権法が施行されると、文化庁長官にそのイラストの使用について判断を仰ぐことができるようになります。
未管理公表著作物等を利用しようとする者は、次の各号のいずれにも該当するときは、文化庁長官の裁定を受け、かつ、通常の使用料の額に相当する額を考慮して文化庁長官が定める額の補償金を著作権者のために供託して、当該裁定の定めるところにより、当該未管理公表著作物等を利用することができる。
一 当該未管理公表著作物等の利用の可否に係る著作権者の意思を確認するための措置として文化庁長官が定める措置をとつたにもかかわらず、その意思の確認ができなかつたこと。
二 著作者が当該未管理公表著作物等の出版その他の利用を廃絶しようとしていることが明らかでないこと。
2 前項に規定する未管理公表著作物等とは、公表著作物等のうち、次の各号のいずれにも該当しないものをいう。
一 当該公表著作物等に関する著作権について、著作権等管理事業者による管理が行われているもの
二 文化庁長官が定める方法により、当該公表著作物等の利用の可否に係る著作権者の意思を円滑に確認するために必要な情報であつて文化庁長官が定めるものの公表がされているもの
3 第一項の裁定(以下この条において「裁定」という。)を受けようとする者は、裁定に係る著作物の題号、著作者名その他の当該著作物を特定するために必要な情報、当該著作物の利用方法及び利用期間、補償金の額の算定の基礎となるべき事項その他文部科学省令で定める事項を記載した申請書に、次に掲げる資料を添えて、これを文化庁長官に提出しなければならない。
一 当該著作物が未管理公表著作物等であることを疎明する資料
二 第一項各号に該当することを疎明する資料
三 前二号に掲げるもののほか、文部科学省令で定める資料
4 裁定においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 当該裁定に係る著作物の利用方法
二 当該裁定に係る著作物を利用することができる期間
三 前二号に掲げるもののほか、文部科学省令で定める事項
5 前項第二号の期間は、第三項の申請書に記載された利用期間の範囲内かつ三年を限度としなければならない。
6 第六十七条第四項及び第六項から第十項までの規定は、裁定について準用する。この場合において、同条第七項第一号中「第五項各号」とあるのは「第六十七条の三第四項各号」と、同条第八項第二号中「第五項第一号」とあるのは「第六十七条の三第四項第一号及び第二号」と読み替えるものとする。
7 裁定に係る著作物の著作権者が、当該著作物の著作権の管理を著作権等管理事業者に委託すること、当該著作物の利用に関する協議の求めを受け付けるための連絡先その他の情報を公表することその他の当該著作物の利用に関し当該裁定を受けた者からの協議の求めを受け付けるために必要な措置を講じた場合には、文化庁長官は、当該著作権者の請求により、当該裁定を取り消すことができる。この場合において、文化庁長官は、あらかじめ当該裁定を受けた者にその理由を通知し、弁明及び有利な証拠の提出の機会を与えなければならない。
8 文化庁長官は、前項の規定により裁定を取り消したときは、その旨及び次項に規定する取消時補償金相当額その他の文部科学省令で定める事項を当該裁定を受けた者及び前項の著作権者に通知しなければならない。
9 前項に規定する場合においては、著作権者は、第一項の補償金を受ける権利に関し同項の規定により供託された補償金の額のうち、当該裁定のあつた日からその取消しの処分のあつた日の前日までの期間に対応する額(以下この条において「取消時補償金相当額」という。)について弁済を受けることができる。
10 第八項に規定する場合においては、第一項の補償金を供託した者は、当該補償金の額のうち、取消時補償金相当額を超える額を取り戻すことができる。
11 国等が第一項の規定により未管理公表著作物等を利用しようとするときは、同項の規定にかかわらず、同項の規定による供託を要しない。この場合において、国等は、著作権者から請求があつたときは、同項の規定により文化庁長官が定める額(第八項に規定する場合にあつては、取消時補償金相当額)の補償金を著作権者に支払わなければならない。
今回パブコメ募集が実施されている文化庁告示は、この文化庁裁定を行うにあたり、文化庁がどのような判断方法で未管理公表著作物と判断するかという指針です。
著作権者の意思を確認するための方法として、著作物周辺の情報を確認したり、ネットやデータベースの検索で著作権者の情報を調べたりして、見つけた連絡先(可能なら2つ以上)に連絡してみて、14日間応答を待つ、などの案が示されています。
特に、匿名の個人クリエイターや、趣味で創作をしている人の場合には、その著作物が未管理公表著作物となってしまう可能性は十分あります。
下記のページに文化庁告示(案)の概要がありますので、気になる方は、是非チェックしてみてください。
次に、著作物の保護について。
2025年1月14日から、「インターネット上の著作権侵害等に対する個人クリエイター等による権利行使の支援」が開始しました。
これは、近年、インターネット上での著作権侵害の被害が拡大していることを受けて、個人クリエイターが海賊版の削除請求などにかかる費用の補助を文化庁が行うというものです。
インターネット上の著作権侵害等に対して、個人クリエイター等が、
削除請求・発信者情報開示請求・損害賠償請求を弁護士に委任した場合、
1件あたり上限150万円(損害賠償請求に係る経費を含む場合は、上限400万円)までの費用が支援されます。
(なお、申請時に自己負担額(11,000円(税込)が必要)
ただ、公募ではなく、文化庁ポータルサイトの無料相談窓口経由の申請のみとなっています。
窓口の弁護士が、著作権侵害の蓋然性が高いと判断した場合、補助金の申請についても案内してくれるとのことです。
[担当:岩田]
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