老舗の二社が、「八丁味噌」の名称を使えなくなるかもしれない!と騒がれていた、「八丁味噌」の地理的表示(GI)登録問題、
2024年1月24日、発祥の地、愛知県岡崎市八丁町で八丁味噌を製造する老舗の二社「カクキュー」と「まるや八丁味噌」とでつくる「八丁味噌協同組合(以下、「八丁組合」といいます。)」が、新たに生産者団体として追加登録をされたことで、今後も「八丁味噌」の名称を使えることとなりました。
この問題、生産地を岡崎市八丁町に限定し、江戸時代からの伝統に沿った厳格な生産基準での登録を希望していた八丁組合ではなく、愛知県全体を生産地とし、比較的緩やかな生産基準で申請していた「愛知県味噌溜醤油工業協同組合(以下、「県組合」といいます。)」に対して、2017年にGI登録が認められたことに対し、八丁組合メンバーのうち1社が登録処分の取り消しを求めて提訴しましたが請求棄却された結果、八丁組合メンバーが「八丁味噌」の名称を使えなくなるピンチに瀕していたものです。
地理的表示法は、「個」の利益ではなく、「地域の共有財産」を保護することを目的としており、既に登録されている産品の基本的な基準の範囲内であるとの条件を満たす限り、独自の基準を申請する生産者団体の追加登録を認めています(法15条1項)。八丁組合は、この制度を利用して、生産者団体の追加登録を申請したもので、生産地を岡崎市八丁町に限定し、県組合よりも厳格な生産方法を明細書等に記載しています。特許的に言うと、クレーム1より限定したクレームを主張する人が共同権利者に加われる、みたいな感じ? そうすると、より広いクレームの人が最初に登録されることがポイントになってきますね。
登録の内容はこちらからご覧になれます。
八丁組合にとっては、背に腹は代えられず妥協した、ということになりましょうが、もし八丁組合のみにGIの登録が認められていたと仮定すると、逆に、これも数十年に亘って「○○○(メーカー名)八丁味噌」を名乗ってきた県組合メンバーが「八丁味噌」の名称を使用できなくなっていたであろうと思われ、それも混乱を招くでしょ、というわけで、どちらも使用できることになったことで、良い結果となったと言えるのではないでしょうか。
日本で地理的表示として登録された名称は、今後、国際協定により、海外でも保護されることとなります。(現状、欧州連合(EU)や英国との間ではGIの相互保護が行われています。※)「対世界」の視点に立てば、八丁町か、愛知県か、の差は大したことない!両者で、八丁味噌を世界に向けて盛り上げていってほしいです!
以前に取り上げた「八丁味噌」の話題はこちら
愛知県人ながら普段は合わせ味噌派の私も、赤味噌は常備しております(どて煮とか、豚汁用)。が、普通の赤味噌か、八丁味噌か、ってことはあまり気にしてなかったな。。。そして、私がここ何年か使っている赤味噌は、八丁味噌ではなかった… 次は八丁味噌にしてみよう。八丁味噌は、赤味噌の一種だと思いますが、意識して八丁味噌を選んでいる人はどれくらいいるんだろう?
参考
「地理的表示保護制度概要(商標制度利用者向け)」藤村浩二 特許研究 No.63 2017/3
※農林水産省HP「海外における日本のGI保護」
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/gi_act/protection_abroad/index.html
[担当:上田]
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