大阪地裁 令和6年(ワ)第12150号
商標権侵害差止等請求事件
■判決文
https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-96088.pdf
■本件各商標
本件商標1
登録第889339号「よろこび」
指定商品:第33類「日本酒」
本件商標2
登録第4938994号「よろこび」
指定商品:第33類「日本酒」等
本件商標3
登録5095211号「よろこび\喜」
指定商品:第33類「日本酒」等
■被告各標章
■当事者及び被告製品
原告X:本件各商標の権利者。酒造会社。
被告Y1:飲食店を運営する会社。被告すし店を運営。
被告Y2:酒造会社
被告製品:Y2が製造し、Y1が被告すし店で来店客に提供する「喜び」という名称の日本酒
事案の概要
被告Y2は、平成16年11月頃から令和6年9月まで、被告Y1から依頼を受けて、Y1における専売品として被告製品を製造し、酒屋を介してY1に納入した。被告製品には、「喜び」との名称が記載された商品ラベルが付されていた。Y1は、被告製品を、自身が運営するすし店で来店客に提供していた。
本事案は、Xが、被告らの行為がXの商標権の侵害を構成するとして、被告製品を製造販売等することについての差止等と、被告らに対する、共同不法行為に基づく損害賠償金1億0352万7607円の連帯支払を請求した事案である。
裁判所の判断
■争点1(被告各標章が本件各商標と類似するか)について
(1)本件各商標と被告各標章の類否について(本件商標1についてのみ抜粋)
本件商標1と被告標章1及び2…は、平仮名で統一されているかどうかという点で、外観には一定の差異があるものの、取引者や需要者にとっては、「よろこび」の漢字による表記が「喜び」であることは常識に属することであって、共通するものというべきである上、観念及び称呼は共通する。
…以上のことからすると、本件商標1と被告標章1及び2とが日本酒に使用された場合には、その出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるから、被告標章1及び2は、本件商標1と類似する。
→被告側は、本件商標2及び3について先使用権の主張をしたが、本件商標2及び3の出願日時点で「需要者の間に広く認識されていたとは認められない」との理由で主張が認められず、被告らの被告各標章の使用は、Xの各商標権を侵害すると判断された。
■争点4(共同不法行為の成否及び連帯責任の範囲)について
前提事実のとおり、被告Y2は、被告Y1から依頼を受けて、被告標章1又は2を含む商品ラベルを付した被告製品を製造し、酒屋を介して被告Y1に納入し、被告Y1は、被告Y2から、酒屋を介して被告製品の納入を受け、被告すし店において、メニューに被告標章3を付して、来店客に被告製品を提供していたのであり、被告らは、共同して本件各特許権(判決文のまま)を侵害する行為を行っていたものと認められるから、被告らには共同不法行為(民法709条、719条1項前段)が成立する。
そして、共同不法行為が成立する以上、被告らは損害の全範囲につき不真正連帯債務を負うところ、本件においては、原告の請求(被告Y1の売上高を基礎として商標法38条3項によって算定される損害賠償)にしたがった算定には理由があり、これによることになる。
■争点5(損害の発生及び額)について
(1) 被告製品の売上高について
Xは、商標法38条3項(使用料相当額)の損害賠償を請求していた。
平成16年12月から令和6年9月までの被告Y1における被告製品の売上高(税込)は、15億6391万5397円であり、これを基礎として、消費税相当額も考慮した本件各商標の使用料相当額を算定すべきである。なお、同期間の被告Y2における被告製品の売上高(税込) は、上記金額を下回るから、共同不法行為が成立する被告らについては、被告Y1の上記売上高をベースに使用料相当額を算定すべきことになる。
(2) 使用料率について
・アルコール飲料のロイヤリティ料率に係る調査
・原告商標の顧客吸引力(長年の使用による一定の顧客吸引力が備わっていることはうかがわれる一方、その周知性については特段の証拠がない)
・被告すし店が著名であることを踏まえた、被告各標章を被告商品に用いたことによる売上及び利益への貢献度
・被告製品が、被告すし店において来店客に提供されているものであって一般の市場で取引されるものではないため、原告製品と被告製品が市場において競合しないこと
などが考慮され、使用料率は、2パーセントと認められた。
「商標法38条3項により算定されるXの損害額は、3127万8308円(15億6391万5397円×0.02)(1円未満四捨五入)」とされた。
コメント
判決文に「Y1は、最終的には「喜」「代」「村」のそれぞれを冠した日本酒を販売予定であった。」とあることからして、「喜び」との商品名を考え、Y2にその商品名でのラベルの作成を依頼したのはY1だと推測される。
Y2は、「ハイ、承知しました」と、Y1の注文通りに納品していたら、Y1との共同不法行為を成したとして、連帯して損害賠償責任を負うことになった。
しかも、損害賠償額の算定の基礎とされた売上高は、Y2からY1への卸値ではなく、Y1の店舗での売上高である。
純米酒「喜び」の製造販売で、Y2が完全に割を食う形になってしまった。
OEMにおける受託者は、委託者のブランド名の商品を製造して委託者に納品するが、そのブランド名が第三者の権利を侵害するものである場合には、自身も責任を問われる可能性がある。
OEMの受託者は、商品の名称の安全性についての責任の所在を、契約等でしっかりと確認する必要がある。
<担当:上田>



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