どれを商標の類否判断の参考に?

<平成19年(行ケ)第10090号 審決取消請求事件>(判決文はこちら

 久し振りの判例紹介です。本事件は、称呼が『カイ』という商標の類否に関するものです。
 商標の類否は、「称呼(読み方)」、「外観(見た目)」、「観念(イメージ)」のいずれか1つが似ていたら類似と判断する、というのが一応のセオリーでした。称呼が『カイ』で同じなら類似とされるのか?についてです。
 
 さて、本事件で登場するのは以下の『カイ』商標たちです。指定商品は「薬剤」等を含み
重複しています。
 
  ・引用A商標「快」(登録日H4.1.31)
  ・引用B商標「」(登録日H12.9.8)
  ・本件商標「海」(登録日H16.5.14)
  ・原告出願商標「KAI」(出願中)

 原告は、『本件商標「海」は引用A商標「快」及び引用B商標「」と類似するのに過誤登録されてしまった』として無効審判を請求しましたが、認められませんでした。これを不服として訴訟を起こしたのが本事件です。
 (なお、原告の出願商標「KAI」は本件商標「海」と類似とされて拒絶査定が出たので、原告は不服審判を請求している最中のようです。)
 また、原告は、『引用B商標「」は引用A商標「快」と類似するのに過誤登録されてしまった』として他の無効審判を請求し、請求が認められました。称呼『カイ』が同じだから、という理由です。

 ということは、ここまでに、
  (1)引用A商標「快」vs.引用B商標「
⇒類似、
  (2)引用A商標「快」vs.本件商標「海」⇒非類似、
  (3)本件商標「海」vs.原告出願商標「KAI」⇒類似、
 
 と判断されたことになります。
 同じ称呼『カイ』でも判断が分かれてますね…
 
 それで、本事件の本題である
  (2)引用A商標「快」vs.本件商標「海」⇒非類似
 の正否について、裁判所は以下のように判断しました。かなり端折って、要点のみをご紹介します。

 『称呼は『カイ』で共通するけど、「快」と「海」では観念も外観も著しく異なるので、誤認混同を生じるおそれはなく、非類似と認められる
 ちなみに、商標の類否は、外観、観念、称呼等によって取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべきだから、類否判断において称呼の占める割合が、当然に、他の要素である観念や外観と比べて大きいということはできない。
 それに、『引用A商標「快」vs.引用B商標「
」』の審決を引き合いに出したって、別事件で、あくまで引用A商標「快」と引用B商標「」との類否について判断したものだからね。本事件とは事案が異なるよ
 

 結果として、審決『(2)引用A商標「快」vs.本件商標「海」⇒非類似』と同様の結論となりました。
 
 でも、
  (1)引用A商標「快」vs.引用B商標「」⇒称呼『カイ』が同じだから類似、
  (2)引用A商標「快」vs.本件商標「海」⇒称呼『カイ』は同じだけど観念も外観も著しく異なるので非類似、
 って一体…。どちらを参考にすればよいのでしょう?
 っていうか、参考にすると『事案が異なる』と言われてしまうのでしょう…
 商標の類否判断って…

 本日はこの辺で。
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コメント

  1. Unknown
    ひろたさん。
    こんにちわ。
    台風ですが、なんとか傘以外は、大丈夫でした。
    やはり安い傘は、駄目ですね。
    今回の判例の記事も勉強になります。
    確かに商標の類似判断って、僕も良くわからないです。
    論文の過去問だとだいたい両商標は類似しないものと
    するとかのただし書きがありますから。
    また、野球ですが、大阪球団の勢いが止まりませんね。
    でもひろたさんの地元の球団は、三位内に入ると
    思うので。

  2. Unknown
    商標の類否判断は難しいですね。『事案が異なる』と言われたら、そりゃそーよ、と返す言葉がありませんが…。
    審決や判決にキャッチアップしてトレンドを掴むというのが王道でしょうか。

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