あいぎ特許事務所が発行している「AIGI MAGAZINE」は「パテントの小部屋」「ブランドの小部屋」「知財お役立小ネタ」の3本立て。そのうち「ブランドの小部屋」の記事を、1ヶ月遅れで掲載いたします。
「ブランドの小部屋」は、ブランドに関わる商標や意匠等の制度について、小ネタとして、わかりやすくお伝えしてくシリーズです。
前回は『商標は「商品・サービス(役務)」とセットで考える』というお話をしました。これは、第2回以降への伏線だったのです…(笑)。
今回は、企業様や個人事業主様の殆どが関わる社名や屋号のハナシです。
1.そもそも商標登録すべきなの?
社名と一言にいっても、人によって思い浮かべるものが違う可能性があります。
①「株式会社○○」「有限会社××」のように、正式名称を思い浮かべる場合
②「TOYOTA」「SONY」のように、よく使われている略称を思い浮かべる場合
この2つのパターンのうち、①では、正式名称が商標として機能しないパターンもあります。
例えば、商品パッケージやウェブサイトの隅っこに小さくしか書いてない等、要するに「社名推し」ではない場合です。
社名を、取引先やユーザーに浸透させる意図がなければ、わざわざ商標登録するまでもないと思います。
一方、①の正式名称であっても、商品パッケージの前面やウェブサイトの上部に大きく表示していたり、宣伝広告で目立たせてる等の「社名推し」であれば、商標登録の検討対象になるでしょう。
また、②の略称は、殆どの場合、取引先やユーザー間に覚えてもらいやすいように使っていると考えられ、やはり商標登録の検討をお勧めします。
社名が、もし他人の権利侵害になって使えなくなった場合のダメージが大きのであければ、自ら商標登録しておくのが、最も安全で安上がりな方法です。
「屋号」も同じように、商売する上で「屋号推し」かどうかで、考えるとよいと思います。
ただし、「株式会社伊藤」「鈴木商店」等といったように、
「めちゃありがちな苗字(失礼💦)」+「めちゃありがちな社名・屋号表記(「株式会社」「有限会社」「商店」等)」
は、「商標としての機能が弱いもの」に該当するので、(有名になってないとか、ちょいと工夫をしない限り)そもそも商標登録できない可能性が高いです…。
2.商号と商標の違い
ここで「おいおい。登記してるのに、商標登録しなかんの?」と疑問に思われたかもしれません。
商号は、同じビル等同一住所に同一のものがなければ登記できます。また、商号登記しても他人の使用を止めさせることはできません。
なので、日本中に同じ商号が多数あること自体は許容されています。
一方、商標は、競合ジャンルの商品・サービスで同一/類似のものがないという条件で登録でき、登録できたら他人の使用を止めさせられます。そして、商標権は日本全国に及びます。
なので、自社名と同じ/類似の商標を、他人が競合ジャンルで登録していたら、その社名を商標として機能するような使用をすると、他人の商標権の侵害になる可能性があります。
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