あいぎ特許事務所が発行している「AIGI MAGAZINE」は「パテントの小部屋」「ブランドの小部屋」「知財お役立小ネタ」の3本立て。そのうち「ブランドの小部屋」の記事を、1ヶ月遅れで掲載いたします。
「ブランドの小部屋」は、ブランドに関わる商標や意匠等の制度について、小ネタとして、わかりやすくお伝えしてくシリーズです。
前回に引き続き、社名や屋号のハナシです。
ビジネスを垂直展開・水平展開して、グループ化やフランチャイズ化する場合、社名や屋号を他社等に使用させることがあります。
その場合、事前に何をしておけばよいでしょうか?
商業登記?
いえ、商業登記は、社名に権利を与えるものでなく、使用許諾とは直接的には関係ないことが殆どです(前回のメルマガがヒントです)。
契約?
はい、事前に、使用許諾する商標・範囲・使い方・使用料等の諸々を決めておくことはとても重要です。
※フランチャイズの場合、中小小売商業振興法で、「商標」は事前に開示すべき項目となっていますね。
ですが、その前にやるべきことは?
ここで「商標登録」とピンと来れば、安心です。
とはいえ、実際は、社名や屋号を商標登録しないまま他社に使用許諾しているケースも少なくないです。
(有名な名称は別として)商標権がないのに、そもそも使用許諾する根拠は?と疑問ではありますが…。
それはさておき、商標登録しないまま他社に社名や屋号を使わせるのは、ヒヤヒヤもので危険です。
なぜ危険なのか?を、2つの視点でご説明します。
(1)他社の権利になってしまう可能性
日本の商標法では、先に使用開始した者ではなく、先に出願した者に優先的に権利が与えられる制度を採用しています。
ですので、商標権のないまま使用許諾すると、契約相手が先に出願して権利を取得し、自分の方が権利侵害になる、ということが起こり得ます。
また、全く関係のない第三者が権利取得し使用中止を求められると、契約相手から「使用許諾してもらったのに使えない」として、契約違反を問われる可能性も考えられます。
(2)契約解除後に他社の使用を禁止できない可能性
とはいえ、自ら商標登録しなくても、契約期間中、特に何もなく平穏に過ぎることも多いと思います。
ですが、契約解除後はどうでしょう?契約解除後に同種業態の事業展開を禁止する条項(競業禁止条項)を設けることは、原則的に、優先的地位の濫用となり得るので、難しいと考えられます(特定商権の維持等に必要な範囲での縛りを除く)。
すると、(有名な名称は別として)契約解除後に、相手が、他地域で似た名称で商売を始めても、止める手段がない…という事態に陥る可能性が。
以上より、他者に社名や屋号を使わせる場合は、自ら商標権を取得しておくことが鉄則とわかります。
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最近も、フランチャイズ契約解除直後に、相手に屋号を先取り商標出願されトラブルになり裁判で争われた事例がありました(令和4年(行ケ)10034)。
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