<平成20年(ワ)第25956号不正競争行為差止等請求事件>(判決文はこちら)
昨夜は三重県の菰野町で中小企業向けに商標と意匠のセミナーを行ってきました。
菰野町といえば、私が毎月のように通っている御在所の麓の町です。
御在所まで行き着く裏道も知り尽くした親しみのある町でございますが、初めて知ったのが「マコモ」という植物を名産品として売り出し中だということ。今度行ったら「マコモ」関連グッズを買ってみます~。
なんて、ちょい宣伝しときます(笑)。詳しくは三重県菰野町商工会のHPをご覧ください→こちら
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さて、本日ご紹介する事件は、不競法の事件。2条1項1号&3号で争われたものです。
この事件では“原告さんが販売していた商品は周知商品等表示と認められるのか!?”がスペクタクル(?)となっております。とくとご覧ください。
○対象商品
まず、原告さんが販売していた商品「SCRATCH」はこちら。
(原告さんHPより)
『直径約4ミリメートル,長さ約7.5センチメートルのステンレス製でシルバー色の円筒管と,その内部に原告円筒管の内周径とほぼ同じ直径で,長さが原告円筒管より約1.5センチメートル長い樹脂製で黒色の付属スティックとが組み合われており,原告円筒管の両端は,それぞれ開口して,その各先端部分の円周に沿って断面略三角形の刃が設けられてる。』(判決文2~3頁)
なお、上記商品「SCRATCH」は、米国STT社が米国内で販売していた商品「SCRAPE IT」が元の商品で、STT社の米国以外の総代理店E社→I社輸入→原告さん購入という経緯をたどり、原告さんが「SCRATCH」という商品名でH18から日本国内で販売したものです(判決文24~25頁)。
その「SCRAPE IT」はこんな感じ(→「SCRAPE IT」のHPをご覧ください。音声が出るので要注意!)。
一方、被告さんの商品「夢見るかかとちゃん」はこちら。
(被告さんHPより)
『直径約5ミリメートル,長さ約7センチメートルのステンレス製でシルバー色の円筒管(と,その内部に被告円筒管の内周径とほぼ同じ直径で,長さが被告円筒管より約1センチメートル長い樹脂製で白色の付属スティックとが組み合わされており,被告円筒管の両端は,それぞれ開口して,その各先端部分の円周に沿って断面略三角形の刃が設けられている。』(判決文3頁)
原告さんの商品「SCRATCH」も被告さんの商品「夢見るかかとちゃん」も
『円筒管を持って刃の部分を皮膚に対して垂直に当てて擦ることにより足や手の角質を削り取って除去し,円筒管に溜まった角質はスティックを挿入することにより押し出して除去するという方法で使用される。』
だそうです。…何だか痛そう??…
○2条1項1号の不正競争行為の成否
(1)原告商品の形態の周知商品等表示該当性について
冒頭で述べたように、この事件のスペクタクルは、“原告さん商品「SCRATCH」が周知商品等表示に該当するか!?”でございます。
裁判所は、商品「SCRATCH」の「形態の独自性」と「形態の周知性」について、それぞれ詳細に検討していますので、ごくごく簡単にご紹介いたします。
・「形態の独自性」について(判決文23~28頁)
裁判所は肯定しています。
その理由としては、まず、原告さん商品販売開始当初、角質除去具の商品としては、ブラシ様のもの、平板で細長い棒状のもの、野菜等のピーラー(皮むき具)様のものがあったようですが、これらと対比しても、原告さん商品は、極細でコンパクトな円筒管形状&円筒管の材質がステンレス製で光沢のあるシルバー色で、全体としてシャープでシンプルな印象を与えており、その点が特に看者の注意を惹く特徴である、とされています。
加えて、美容用の角質除去具という商品の性質上、需要者は美容に関心の高い女性を中心とした一般消費者で、これら需要者が美容器具を購入するに当たっては、機能のみならず、外形的なデザインの美しさや新しさにも着目する傾向が強いと考えられるけど、原告さん商品は販売開始後短期間のうちにヒット商品になったという事情があるので、販売開始当初は他の角質除去具に見られない独自の特徴であったということができる、とされています。
なお、被告さんは、原告さん商品販売開始当初、同様の形態の角質除去具が出回っていたと主張しましたが、その一つがSTT社の上記「SCRAPE IT」だったり、医療用の専門的な器具だったり、種類が異なる器具だったりしたことから、被告さんの主張は受け入れられませんでした。
・「形態の周知性」について(判決文28~34頁)
これについても、裁判所は肯定しています。
商品の販売数やら、雑誌・新聞等への掲載やら、テレビ放送等々の事情が考慮されました。
以上を踏まえ、まとめとして、裁判所は次のように認定しています。
『原告商品の上記形態は,遅くとも平成19年11月26日ころまでには,全国の美容雑貨関係の取引業者及び美容に関心の高い女性を中心とした一般消費者の間において,特定の営業主体の商品であることの出所を示す出所識別機能を獲得するとともに,原告商品を表示するものとして需要者である上記取引業者及び一般消費者の間に広く認識されるに至ったものと認めるのが相当である。』
(2)商品形態の類似性について(判決文36~37頁)
次に、原告さん商品「SCRATCH」と、被告さん商品「夢見るかかとちゃん」の形態の類似性について。
被告さんは、①円筒管の太さと長さ,②ステンレス部分の厚み,③刃先の角度,④刃先の有効長,⑤スティックの長さと色が相違する、と主張しておりました。
しかしながら、裁判所は、被告さん商品も“極細でコンパクトな円筒管形状&円筒管の材質がステンレス製で光沢のあるシルバー色で、全体としてシャープでシンプルな印象”という原告さん商品の特徴を備えており、被告さんが主張する相違点は需要者らの注意を惹かない些細な相違点にすぎず、全体として見たら両商品は類似する、としております。
(3)混同のおそれの有無について(判決文37頁)
上記(1)のように原告さん商品「SCRATCH」が周知商品等表示に該当し、上記(2)のように被告さん商品の形態が原告さん商品の形態に類似するので、美容に関心の高い女性を中心とした一般消費者(=需要者)において、両商品の混同を生じるおそれがあると認められる、とされております。
(4)まとめ(判決文37~28頁)
上記(1)~(3)からして、被告さんが商品を販売する被告の行為は、不競法2条1項1号の不正競争行為に当たるものと認められる、とされました。
以上、この事件のスペクタクル、“原告さん商品「SCRATCH」が周知商品等表示に該当するか!?”の争点を含む2条1項1号不正競争行為成否の判断のご紹介でした~
ちなみに…。
原告さんは「SCRATCH」を商標登録されとりますが(第5044606号、第5157887号)、被告さんの方も「夢みるかかとちゃん」を商標登録されとります(第5212772号 )。
被告さんのネーミングセンスはなかなかいい感じだと思いましたが…
本日はこの辺で。次回も見ようかなと思われたらぷちっと押してね…じゃないと、寝込んじゃうから…
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【執筆記事】
「知財管理」誌 VOL.60 NO.6
(並行輸入と商標権侵害 -並行輸入の抗弁における「同一人性の要件」及び「品質管理性の要件」-)
「知財産管理」誌 VOL.58 NO.5
(「腸能力」審決取消請求事件(平成19年(行ケ)第10042号 審決取消請求事件)
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【関係事件】
代理人になった事件です。負けたのでご紹介するのをためらっておりましたが、思い切って…。
平成18年(行ケ)第10367号審決取消請求事件
なお、牛木理一先生のHPで紹介いただいているので(「特許ニュース」2007年6月29日号の記事です)、そちらも併せてご覧ください~(こちらのB-27の項です)。
【ZIP FM Z-TIME BIZ】
ここのフォトギャラリーになぜかわたくしが。
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