<平成22年(行ケ)第10127号審決取消請求事件>(勝手に第一事件:判決文はこちら)
<平成22年(行ケ)第10279号審決取消請求事件>(勝手に第二事件:判決文はこちら)
<平成22年(行ケ)第10157号審決取消請求事件>(勝手に第三事件:判決文はこちら)
昨日触れたリラックマの件ですが、“法的に問題なさそう”とか言っちゃいましたが、作者さんの感じ方によっては名誉声望保持権(著作権113条6項)侵害に該当するかもしれんし、そもそもの人格権侵害ぽくて名誉毀損ってことにもなり得るかも…。すんません(こっそり訂正しました)。
気を取りなおして、本日は、おお、S先生の事務所の業務を受託している会社さん(原告)が、積水化学工業さんとNTTさん(被告)の商標の登録を取消すべく審決取消訴訟を提起した3つの事件を取り上げさしてもらいます。おお…。
■まずは、取消しの対象となった本件商標と、被告補助参加人Aさん(NTTデータさん:NTTさんの子会社)、Bさん(NTTデータセキスイシステムズさん:積水化学工業さんのグループ会社)の使用標章などをご紹介いたします。
取消しの対象となった本件商標はこちら。
勝手に第一事件:登録第3114802号、権利者:積水化学工業さん
勝手に第二事件:登録第3303268号、権利者:日本電信電話さん
勝手に第三事件:登録第4657563号、権利者:日本電信電話さん
「NTTデータ」(標準文字)
一方、被告補助参加人AさんBさんが使用していた標章はこちら。
使用標章1
使用標章2
また、被告補助参加人Bさんが職員さんの名刺に表示していた結合標章1と、HPに表示していた結合標章2はこちら。
結合標章1
結合標章2
■概要
原告さんは、補助参加人Bさんに国内出願業務の支援システム開発(サーバ開発、クライアント開発)を委託し、Bさんはシステム開発を行い納入しました。ところが、原告さんは、納入されたシステムに不備があると主張しています。
そして、原告さんは、“補助参加人A,Bは本件商標の通常使用権者で、広告等により、本件商標の指定役務である「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」について、高質な役務を提供するという印象を需要者に与えていたにもかかわらず、Bが提供した役務の質は極めて低質であったから、Bは、本件商標に類似する商標の使用であって役務の質の誤認を生ずるものをした”として、53条1項の規定による本件商標の取消しを求めました。
※なお、ご存知だと思いますが、53条1項の「品質/質の誤認」には、劣悪な商品/役務を提供して需要者の期待を裏切った場合も含まれるとされています。
■争点に対する裁判所の判断
1.第一事件の本件商標と、使用標章1,2との類否
裁判所は、本件商標「セキスイ」と、使用標章1,2「株式会社NTTデータセキスイシステムズ」は非類似と判断しました。
まず、使用標章1についてですが、全体からは『かぶしきがいしゃえぬてぃてぃでーたせきすいしすてむず』又は『えぬてぃてぃでーたせきすいしすてむず』のいずれかの称呼を生じるとした上で、
本件商標とは外観、称呼において異なり、観念において同一とはいえず、取引の実情を考慮した場合にも、本件商標と使用標章1の類似性を肯定すべき格別の事情があることを認めるに足りる証拠はないとし、非類似と判断しています(第一事件判決文9頁~11頁)。
なお、“使用標章1のうち「セキスイ」の部分だけを本件商標と比較すると、本件商標と使用標章1は類似する”との原告さんの主張に対しては、
『「NTTデータセキスイシステムズ」の部分は,より強い自他役務の識別機能を有しており,さらに,「NTTデータセキスイシステムズ」の部分は,各文字がいずれもゴシック体でほぼ同じ大きさであり,まとまりよく一連に記載されているから,これに接した取引者・需要者は,この部分全体を一体として把握するものと認められる。そして,「セキスイ」の部分は,15文字からなる「NTTデータセキスイシステムズ」の部分に包含されており,4文字を占めるにとどまるから,殊更に他の構成部分と切り離し,「セキスイ」の部分のみを取り出して観察することを正当化するような事情を見いだすことはできない。』
としています(第一事件判決文11頁~12頁)。
また、本件商標と使用標章2との類否も、使用標章1との類否と同様に非類似と判断しています(第一事件判決文12頁~13頁)。
2.第二事件の本件商標と、使用標章1,2との類否
裁判所は、本件商標「NTT」と、使用標章1,2「株式会社NTTデータセキスイシステムズ」は非類似と判断しました。
まず、使用標章1についてですが、上記1.の類否判断と同様に、本件商標とは外観、称呼において異なり、観念において同一とはいえず、取引の実情を考慮した場合にも、本件商標と使用標章1の類似性を肯定すべき格別の事情があることを認めるに足りる証拠はないとし、非類似と判断しています(第二事件判決文10頁~12頁)。
なお、“使用標章1のうち「NTT」の部分だけを本件商標と比較すると、本件商標と使用標章1は類似する”との原告さんの主張に対しても、
『「NTTデータセキスイシステムズ」の部分のうち,「NTT」の部分のみはアルファベットであるが,商業登記上の商号にアルファベットを使用する例が少なくないことなどを考慮すると,アルファベットであることにより,「NTT」の部分のみが目立つとはいえない。そして,使用標章1において,「NTT」の部分は,15文字からなる「NTTデータセキスイシステムズ」の部分に包含されており,3文字を占めるにとどまるから,殊更に他の構成部分と切り離し,「NTT」の部分のみを取り出して観察することを正当化するような事情を見いだすことはできないし,原告が主張するように「NTT」の部分のみを取り出して観察することを正当化するような事情を見いだすこともできない。』
としています(第二事件判決文12頁~13頁)。
また、本件商標と使用標章2との類否も、使用標章1との類否と同様に非類似と判断しています(第二事件判決文13頁~14頁)。
3.第三事件の本件商標と、使用標章1,2との類否
裁判所は、本件商標「NTTデータ」と、使用標章1,2「株式会社NTTデータセキスイシステムズ」は非類似と判断しました。
まず、使用標章1についてですが、上記1.2.の類否判断と同様に、本件商標とは外観、称呼において異なり、観念において同一とはいえず、取引の実情を考慮した場合にも、本件商標と使用標章1の類似性を肯定すべき格別の事情があることを認めるに足りる証拠はないとし、非類似と判断しています(第三事件判決文11頁~13頁)。
なお、“使用標章1のうち「NTT」の部分だけを本件商標と比較すると、本件商標と使用標章1は類似する”との原告さんの主張に対しても、
『使用標章1において,「NTTデータ」の部分は,15文字からなる「NTTデータセキスイシステムズ」の部分に包含されており,6文字を占めるにとどまるから,殊更に他の構成部分と切り離し,「NTTデータ」の部分のみを取り出して観察することを正当化するような事情を見いだすことはできないし,原告が主張するように「NTT」の部分のみを取り出して観察することを正当化するような事情を見いだすこともできない。』
としています(第三事件判決文13頁~15頁)。
また、本件商標と使用標章2との類否も、使用標章1との類否と同様に非類似と判断しています(第三事件判決文15頁~16頁)。
4.結合標章1,2の商標としての使用の有無
原告さんは、第二事件・第三事件において、結合標章1,2も商標として使用されているのであって、第一事件・第二事件の本件商標「NTT」と「NTTデータ」は取消されるべきものだと主張していました。
しかしながら、裁判所は、いずれも商標として使用されているものとは認められない、としました。
(1)結合標章1について(第二事件判決文15頁、第三事件判決文16頁)
『結合標章1は,補助参加人Bの職員の名刺に付されたものであり,その具体的使用態様に鑑みると,補助参加人Bが補助参加人Aと同じ企業グループに属することを表示するために付されているものと認められ,商標として使用されているものとは認められない。
原告が補助参加人Bに委託したコンピュータシステムの作成業務に従事した者が,結合標章1が表示された名刺を原告に交付したとしても,その名刺自体に補助参加人Bの業務や広告文等が記載されているものではなく,自己の氏名や役職を相手方に示すために名刺が用いられたものと認められるから,その名刺が役務に関する広告であると解することはできず,結合標章1を付した名刺を交付したことをもって,結合標章1の商標としての使用であるということはできない。』
(2)結合標章2について(第二事件判決文15頁~16頁、第三事件判決文16頁~17頁)
『補助参加人Bのウェブページには,パッケージソフトやインターネットを通じたソフトウェアの提供に関する説明,紹介等が記載されていたこと,結合標章2は,同ウェブページの上端に表示されたことが認められるが,同ウェブページは,補助参加人Bの製品,サービス等を公衆に向けて一般的に紹介したものであり,原告が補助参加人Bに委託した具体的なコンピュータシステムの開発,作成業務に関連するものではない。そうすると,補助参加人Bのウェブページにおいて結合標章2が表示された態様は,補助参加人Bが原告に提供した具体的な役務(原告が質が低いと主張する役務)との関連において結合標章2が使用されたものということはできないから,商標法53条1項本文の要件に該当しない。その他,補助参加人Bが,原告に対して提供した役務と具体的な関連性を有する態様で結合標章2を商標として使用していたことを認めるに足りる証拠はない。』
■結論
以上のとおり、『補助参加人Bによる使用標章,結合標章の使用は,商標法53条1項の要件を欠くので,本件商標の登録は取り消すことはできない」との審決の判断に誤りはない』とされ、原告さんの請求は認められませんでした、おお…。
本日は以上です!次回も見ていただけるのならぷちっと押してくださいね…
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※左上の画像データは名古屋市さんのご好意により提供していただきました。
この記事を読んでひろた興味を持たれた方は…
【執筆記事】
「知財管理」誌 VOL.60 NO.6
(並行輸入と商標権侵害 -並行輸入の抗弁における「同一人性の要件」及び「品質管理性の要件」-)
「知財産管理」誌 VOL.58 NO.5
(「腸能力」審決取消請求事件(平成19年(行ケ)第10042号 審決取消請求事件)
「パテント」誌 2011.2 Vol.64
(部分意匠に関する判例研究 -類否判断を中心に- 包装用容器事件)
字数制限が厳しかったので尻切れトンボ気味ですが…
【関係事件】
代理人になった事件です。負けたのでご紹介するのをためらっておりましたが、思い切って…。
平成18年(行ケ)第10367号審決取消請求事件
なお、牛木理一先生のHPで紹介いただいているので(「特許ニュース」2007年6月29日号の記事です)、そちらも併せてご覧ください~(こちらのB-27の項です)。
【ZIP FM Z-TIME BIZ】
ここのフォトギャラリーになぜかわたくしが。
見付からないよ~?→2008/07/23のところ…
※注意!弁理士さんや知財部門のご担当など、クロートの方へ!
このブログでは、わかりやすくするために、正確でない表現を使ったり、はしょったり、大雑把にしてたり、…等々してますが、目くじら立てずに見逃して下さい<( )>
また、判例・新着審決・最近の話題は、“ホットなうちに”スピード重視でご紹介しておりますので、読み間違い・勘間違い・理解間違いがあるかもしれません。疑問を感じられたらご一報いただけるとありがたく存じます<( )>
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