<知財高 令和6年(行ケ)第10056号 審決取消請求事件>
■判決文
https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-95208.pdf
■本件商標
「ゴミサー」
指定役務:第40類 生ゴミ処理機の貸与 等
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/TR/JP-2021-078037/40/ja
商品と役務の類否が争点となった事件を紹介します。
■事案の概要
原告Xは、被告Y所有の本件商標に対し、4条1項11号、4条1項15号及び4条1項7号を理由として無効審判を請求したが、請求は不成立とされた。Xが4条1項11号の無効理由として引用した商標は、X所有の以下の商標(以下、「引用商標」という。)である。
引用商標「ゴミサー」
指定商品:第7類 生ゴミ処理機 等
審決理由は、
”「生ゴミ処理機の貸与」と「生ゴミ処理機」の一般的、恒常的な取引の実情において、貸与と商品の販売とは、流通形態を異にするものである。また、前記商品と役務の用途については、「生ゴミ処理機の貸与」の用途は、「生ゴミ処理機の貸与のため(用)」であるのに対し、「生ゴミ処理機」の用途は、正に生ゴミを処理・分解するための商品そのものであるから、必ずしも用途が一致するとはいえない。また、製造・販売する事業者がリース又はレンタルする事業者と同じであるとはいえないことからすると、必ずしも商品の販売場所と役務の提供場所が一致するとはいえない。そうすると、需要者の範囲において一致する場合があるとしても、一般的、恒常的な取引の実情を勘案して総合的に考慮すると、当該役務と商品とは相違するものである。”
というものであった。
本事件は、Xが審決の取り消しを求めて提起したものであり、判決では、審決が覆えされ、本件商標は無効にすべき、と判断された。なお、本判決では、4条1項15号及び4条1項7号については判断されていない。
■裁判所の判断
裁判所は、「商品の販売と貸与に関する取引の実情」として、建設機械の製造業者が、販売と貸与の両方を行っている事実を複数挙げた上で、以下のように判示した。
商標法施行規則6条及び同規則別表によれば、「土木機械器具」が、商標法施行令2条及び同施行令別表による商品及び役務の区分の第7類「加工機械、原動機(陸上の乗物用のものを除く。)その他の機械」に属する商品とされており、建設機械は第7類に属する商品であると認められる。
引用指定商品「生ゴミ処理機、液体肥料製造装置」も、第7類に属するものであるから、引用指定商品と建設機械は同じ第7類に属する商品である。
(エ) 以上のとおり、引用指定商品と同じ第7類に属する建設機械について、その製造業者又はその関連会社が、販売とともに貸与(レンタル)も行っているという取引の実情がある。これに加え、複写機、プリンター等の出力機器や事務用機器等の商品を取り扱う会社においても、会社の目的に商品の販売と貸与の両方を挙げる会社が複数存在する(甲72~74。なお、被告も、会社の目的に「産業用機械器具の製造、販売及び賃貸」が含まれている[弁論の全趣旨]。)。機械に商標を使用する者がその機械の貸与も行っていることは、通常、特に意外なこととまではいえず、むしろ、予想し得る範疇のことといえる。また、本件指定役務の需要者は生ゴミ処理機を使用する者であり、引用指定商品の需要者も、その多くは、生ゴミ処理機を使用する者であると推認されるから、双方の需要者は多くの部分で共通する。
これらの事情を考慮すれば、本件指定役務と引用指定商品に同一又は類似の商標を使用する場合には、同一営業主の製造、販売又は提供に係る商品又は役務と誤認されるおそれがあると認められる関係があるということができる。したがって、本件指定役務と引用指定商品は類似するものと認められる。
結論として、本件商標は、その登録出願の日前の登録出願に係る他人の登録商標である引用商標と同一であって、その商標登録に係る指定商品に類似する役務について使用するものであるから、商標法4条1項11号に該当するとして、無効にすべき、と判断された。
■コメント
本件商標の指定役務「生ゴミ処理機の貸与」と引用商標の指定商品「生ゴミ処理機」の類否判断にあたり、「生ゴミ処理機」と同じ分類に属する「建設機械」について、同一営業主により販売と貸与が提供されている取引の実情があるから、「生ゴミ処理機」も、同一営業主により、製造販売及び貸与が行われていても不思議ではないとして、商品と役務の類似性が肯定された事件であり、「え、それでいいの?」と感じてしまった事件である。
この事件には、生ゴミ処理機の製造業者であるXが、所有していた商標登録(引用商標と、商標と指定商品が同じもの)を失効させてしまった後に、X商品の主要な販売店であったYに引用商標を登録されてしまい、無効審判を請求したものの成功しなかったという背景がある。Xが、せめて「生ゴミ処理機の貸与」の区分で登録を、ということで取得したと思われるのが、本件商標である。
背景が似た事件として、「AWG治療事件」(知財高 令和6年(行ケ)第10028号)があった。「医療用機械器具」と「医療用機械器具の貸与」の類否が問題となったこの事件では、「医療用機械器具」自体について、同一事業者が製造販売及び貸与の両方を行っている事実等が証拠として挙げられ、納得しやすかった。
(知財高 令和6年(行ケ)第10028号)
https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-93492.pdf
商品と役務の類否判断においては、「商品と役務の用途の共通性」も一判断要素となるが、これがいつも分かりにくい。「生ゴミ処理機」の用途は理解できるが、「生ゴミ処理機の貸与」の用途は、「生ゴミ処理機の貸与のため(用)」と言われても、ピンとこない。
その点、「AWG事件」の判決は、民法601条を引用し、「貸与という行為は、単に貸渡し行為をすることのみならず、需要者に当該機械器具を使用させることを当然に予定するものである」とし、「貸与の用途は、医療用機械器具の医療目的での使用ということができ、本件指定商品・医療用機械器具の用途と共通する」と判示した。これも説得力があった。このロジックは本事件でも使えたんじゃないのかなあ?
賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる。
もう1点、「AWG治療事件」では、”本件商標(「医療用機械器具の貸与」を指定役務とする登録)の登録が有効なものだとすると、「AWG治療」の商標を医療用機械器具に付した上でこれを貸与する行為(当然に「引渡し」を包含する。)は、通常、本件商標に係る商標の使用と認めるのが自然であり(同法2条3項3号)、商標権の及ぶ範囲の重複・抵触が生じかねない。このような状況を招来させるのは、(中略)商標法全体の整合的解釈という観点からは好ましいことでない。”として、本件指定役務「医療用機械器具の貸与」と本件指定商品「医療用機械器具」とは、類似するものと判断するのが適切である、と判示されたのも、頷けるものだった。
今回のゴミサー事件判決は、AWG治療事件と比較すると、少々説得力に欠ける印象を抱いたが、AWG治療事件とゴミサー事件が続いたことで、「○○」との商品と「○○の貸与」の役務とは相互に類似する、との流れが強まったようにも思え、実務への影響(特に、審査段階)が気になるところである。どちらの事件も、一つの商標を原告被告間で取り合いになっている状況があったことの影響はなかったのか、今後の審判決を注視したい(あまりないかもしれないが…)。
<担当:上田>
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