INTEL(インテル)入っとる?

 うちのダンナは弁当男子です(というには薹が立ちすぎ)。自作の弁当をあまりに自画自賛するので、うらやましくなった私も最近は弁当女子です(というには薹が立ちすぎ)。最近は互いに自画自賛し合っております。

 さて、昨日の続きです。

 まずは、今回の事件の本件商標をもう一度。無効審判は4条15号、8号、7号を理由として請求されたのですが、8号だけを理由に無効審決が出されました。
 

 
 原告(商標権者)は無効審決を取消すべく、8号該当性を否定する主張をしたわけですが、裁判所はどう判断したのでしょうか?「INTEL(インテル)入っとる?」
 
   裁判所は8号の趣旨と、そこから把握される8号の「含む」の意義を述べていますので、引用します(判決文20頁)。
 『法4条1項8号が,他人の肖像又は他人の氏名,名称,著名な略称等を含む商標はその他人の承諾を得ているものを除き商標登録を受けることができないと規定した趣旨は,人の肖像,氏名,名称等に対する人格的利益を保護すること,すなわち,人(法人等の団体を含む)は,自らの承諾なしにその氏名,名称等を商標に使われることがない利益を保護することにあるところ(最高裁平成17年7月22日第二小法廷判決・裁判集民事217号595頁),問題となる商標に他人の略称等が存在すると客観的に把握できず,当該他人を想起,連想できないのであれば,他人の人格的利益が毀損されるおそれはないと考えられる。そうすると,他人の氏名や略称等を「含む」商標に該当するかどうかを判断するに当たっては,単に物理的に「含む」状態をもって足りるとするのではなく,その部分が他人の略称等として客観的に把握され,当該他人を想起・連想させるものであることを要すると解すべきである。

 かかる見地から見ると、今回の本件商標は「INTEL(インテル)入っとる」の?裁判所の判断を見てみると…。
 『本件商標の文字部分が,黒色の活字体で大きく明瞭に,かつ各文字を同一の書体・同一の大きさ・同一の間隔で表されていることに照らすと,「INTELLASSET」の文字部分は外観上一体として把握されるとみるのが自然である上,「INTELLASSET」が日本においてなじみのない語であり,一見して造語と理解されるものであって,特定の読み方や観念を生じないと解される(本件商標中の図形部分を考慮しても同様である。)。したがって,被告の略称である「INTEL」は,文字列の中に埋没して客観的に把握されず,被告を想起・連想させるものではないと認めるのが相当である。そうすると,本件商標は物理的には被告の略称である「INTEL」を包含するものの,「他人の氏名・・・の著名な略称を含む商標」(法4条1項8号)には当たらないというべきであり,~』(判決文21頁)

 つまり、商標的には「INTEL(インテル)入っとらん」と。ふつーに見たらそうなる気もしますが…。

 なお、被告(インテル側)は、以前の事件(平成19年(行ケ)第10113号審決取消請求事件)の別件商標を引き合いに出して主張を行っていましたが、これに対する裁判所の見解も判示されています。
 『被告は,別件商標において,冒頭の「I」だけでなく中間部分の「A」も大文字となっているのは,原告が別件商標の出願時,「INTELL」部分と「ASSET」の部分に分割して認識,称呼されるべきものであるということを認識していたからであるとも主張する。しかし,原告の商号が株式会社「インテラセット」であって,日本語(片仮名)の表記から「インテル(INTELL)」の部分と「アセット(ASSET)」の部分を分割して認識,称呼することはできないこと,本件商標においては「A」の文字が他の文字に比べて大きな文字とはなっておらず,「ASSET」の部分を独立又は分割して認識させるような表記とはなっていないこと等からすると,被告の上記主張は採用することができない。』(判決文22頁)

 ちなみに、以前の事件の別件商標はこれ。無効審判も審決取消訴訟でも4条15号、8号、19号、10号、11号、7号を理由として請求されたのですが、審決取消訴訟で8号だけを理由に審決が取消されたのでした。
 

 これは「INTEL(インテル)入っとる」とされたんですが…どうですか?

 それでは、本日はこの辺で。
 次回はまた意匠の深い(?)ハナシに戻ります。
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この記事を読んでひろた興味を持たれた方は…

【執筆記事】
  
「知財産管理」誌 VOL.58 NO.5
  (「腸能力」審決取消請求事件(平成19年(行ケ)第10042号 審決取消請求事件)

【関係事件】
 代理人になった事件です。負けたのでご紹介するのをためらっておりましたが、思い切って…。
 
平成18年(行ケ)第10367号審決取消請求事件
 なお、牛木理一先生のHPで紹介いただいているので(「特許ニュース」2007年6月29日号の記事です)、そちらも併せてご覧ください~(こちらのB-27の項です)。

【ZIP FM Z-TIME BIZ】
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