アスリート

<平成22年(行ケ)第10005号審決取消請求事件>(判決文はこちら)
<平成21年(行ケ)第10411号審決取消請求事件>(判決文はこちら

 本日は「結合商標vs.単体商標」の事件をご紹介します。
 
 単体商標(登録商標)の商標権者さんは、自分の単体商標を引用商標として、結合商標の登録に対して無効審判を請求しておりました(無効理由:3条1項柱書、4条1項10号及び4条1項11号)。

 しかし、審決では請求が認められませんでしたので、単体商標の商標権者さんが原告となって提起したのが、今回の10005事件と10411号事件です。
 
 それではまず、10005号事件と10411号事件のそれぞれの本件商標(結合商標)を。
 
 10005号事件の本件商標:
 「アスリートレーベル」(標準文字)、指定商品「医療用腕環」など。

 10411号事件の本件商標:
 「ATHLETE LABEL」(標準文字)、指定商品「医療用腕環」など。 

 一方、10005号事件と10411号事件での引用商標(単体商標)はこちら(両事件とも同じ引用商標です)。
 
 引用商標1:
 「ΛTHLETE」、指定商品「医療用機械器具」

 引用商標2:
 「アスリート」、指定商品「医療用機械器具」

 ちなみに、今回の事件では、主として4条1項10号で争われました。
 つまり、結合商標(本件商標)は、原告さんの周知商標である単体商標に類似するか否か、という争いです。 
 原告さんは、バルーンカテーテル用のガイドワイヤの商標として「ATHLETE」「アスリート等を使用しているようです(参照:原告さんのHP)。

 さて。
 
 ○まず、原告さん使用商標が周知商標であるか否かについて。
 
 裁判所は、
 ・ガイドワイヤーが,一般に市販されている商品ではなく,特定の医療関係者に販売元から直接又は問屋を通して売買されるものであること,
 ・「ATHLETE」,「アスリート」及びこれらを冠する商標を付した原告の製造販売に係るガイドワイヤーの販売本数が,平成8年以降ほぼ毎年上位5位以内にランキングされていること,
 ・原告の「ATHLETE」,「アスリート」シリーズのガイドワイヤーが,全国の対象医療機関の大多数に販売され又は営業活動が行われ,納品実績が全国にわたること,
 ・原告のカタログや調査会社の市場分析のみならず,医療関係者が購読する雑誌等にも,たびたび原告の「ATHLETE」,「アスリート」シリーズのガイドワイヤーが掲載されていること

 等の事実を総合して、
 『「ATHLETE」,「アスリート」及びこれらを冠する商標は,平成19年2月までに,原告が製造販売するガイドワイヤーの商標として,上記医療関係者や医療用機械器具を取り扱う取引者の間に周知性を獲得し,その後も周知性を維持していると評価するのが相当である。
 としました(10005号事件判決文11~12頁、10411号事件判決文11~12頁)。
 
 ○次に、本件商標が上記使用商標に類似するか否か。

 まず、JPOの審査基準では、4条1項10号における「結合商標vs.単体商標」の「類似」についてどのように記載されているか見てみます(審査基準はこちら)。
 『4.本号でいう「需要者の間に広く認識された」他人の未登録商標と他の文字又は図形等とを結合した商標は、その外観構成がまとまりよく一体に表されているもの又は観念上の繋がりがあるものを含め、原則として、その未登録商標と類似するものとする。
 ただし、その未登録商標の部分が既成の語の一部となっているものその他著しく異なった外観、称呼又は観念を生ずることが明らかなものを除く

 
 一方、裁判所が採用した基準は次のとおり。
 『商標の類否は,対比される両商標が同一又は類似の商品に使用された場合に,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが,それには,そのような商品に使用された商標がその外観,観念,称呼等によって取引者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すべく,しかも,その商品の取引の実情を明らかにし得る限り,その具体的な取引状況に基づいて判断するのが相当である(最高裁昭和39年(行ツ)第110号同43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照)。』(10005号事件判決文8頁、10411号事件判決文8~9頁)。
 氷山事件ですね。4条1項11号の事件です。

 『しかるところ,複数の構成部分を組み合わせた結合商標については,商標の各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められる場合において,その構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは,原則として許されない。他方,商標の構成部分の一部が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などには,商標の構成部分の一部だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することも,許されるものである(最高裁昭和37年(オ)第953号同38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁,最高裁平成3年(行
ツ)第103号同5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁,最高裁平成19年(行ヒ)第223号同20年9月8日第二小法廷判決・裁判集民事228号561頁参照)。
』(10005号事件判決文9頁、10411号事件判決文9頁)
 リラ宝塚事件、セイコーアイ事件、つつみのおひなっこや事件です。これらも4条1項11号の事件です。

 なお、蛇足ですが、JPOの審査基準では、4条1項11号における「結合商標vs.単体商標」の「類似」につき、このように記載されています(審査基準はこちら)。
 『5.結合商標の類否は、その結合の強弱の程度を考慮し、例えば、次のように 判断するものとする。ただし、著しく異なった外観、称呼又は観念を生ずる ことが明らかなときは、この限りでない。
 …
 (6) 指定商品又は指定役務について需要者の間に広く認識された他人の登録商標と他の文字又は図形等と結合した商標は、その外観構成がまとまりよく一体に表されているもの又は観念上の繋がりがあるものを含め、原則として、その他人の登録商標と類似するものとする。 ただし、その他人の登録商標の部分が既成の語の一部となっているもの等を除く。

 おっと、ハナシが11号方向へずれた。
 
 それでは、4条1項10号の判断において、本件商標「アスリートレーベル」「ATHLETE LABEL」は、使用商標「ATHLETE」「アスリート」と類似すると判断されたのでしょうか。

 …については、次回にて。
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