プードル犬、上流に行く(不競法的に…)

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<平成20年(ワ)第36935号損害賠償請求事件>(判決文はこちら

 今日は最近入った新人くんのアホ話を書こうと思っておりましたが…。
 月曜の朝に冷静になって考えてみると、それを書くことによりこのブログの品位が損なわれるおそれがございますので、やめときます(シラフでは書けんことに気づいた)
 なお、「そもそもこのブログに品位なんてあったのか?」という批判は受け付けません キリッ)

 で、今日は真面目に判例のご紹介。
 
「プードル犬のぬいぐるみ型ホルダー」の形態模倣につき不競法2条1項3号で争われた事件です。

 ちなみにこの「プードル犬のぬいぐるみ型ホルダー」ですが、今回の原告さんが、小売業のS社さんを被告として、不競法2条1項3号(商品形態模倣)・著作権の事件で争ったものと同じと思われます(平成19年(ワ)第19275号損害賠償等請求事件)。←前回の事件では商品模倣性は肯定されましたが、被告S社さんの悪意・重過失が認められないという理由で、原告さんは敗訴しました(著作物性も否定。詳しくは駒沢公園行政書士事務所日記「ファンシーグッズ形態模倣事件」をご参照ください)。

 原告商品はこちら。
 
 被告商品はこちら。
 

 今回は、上記事件と同じ「プードル犬のぬいぐるみ型ホルダー」を巡り、商品の製造販売等を行うT社さんと、商品の仕入れ販売等を行うHK社さんを被告として、不競法2条1項3号(商品形態模倣)で争った事件です。つまり、上記S社さんの上流側を相手にした事件ってこと。

■事実
 被告商品は、以下のルートで、上記小売業のS社さんの店舗で販売されておりました。

 被告T社さんは、デザイナーAYさんに企画を依頼した上で、中国会社Bさんにサンプル製作を依頼(大まかな要望のみ伝え具体的なデザインや形状等についてはBさんに一任。被告T社さんは、この時点では原告さん商品の存在を知らなかった)。
 ↓
 サンプルをS社さんのバイヤーに見せて交渉、S社さん店舗で試験的に販売。
 ↓
 被告T社さんはサンプルと同じ商品の製造を中国会社Bさんに発注し336個輸入、被告HK社さんに納品(被告HK社さんは、この時点では原告商品の存在を知らなかった)。
 ↓
 被告HK社さんはS社さんに123個の被告商品を納品。
 S社さんは被告商品を店舗にて販売したが、売上状況があまり良くなかったので、それ以上に購入することはなかった。

 なお、原告さんのサイトはこちらで、被告T社さんのサイトはこちら

■争点
(1)被告商品の形態は,被告らが原告商品の形態を模倣して企画したものか
(2)原告商品の形態は,同商品の機能を確保するために不可欠なものか
(3)被告らは,被告商品が原告商品を模倣したものであることにつき善意か
つ無重過失であったか
(4)原告らの損害

■裁判所の判断
裁判所は争点(1)と(3)についてしか判断していません。

○争点(1)
 争点(1)につき、原告さんは、
 “被告商品の形態 は、デザイナーAYと被告らが原告商品の形態を模倣して共同で企画して、中国会社Bに製造させたものである”
 と主張しておりました。
 この主張を裏付ける事情として『① 仕入業者が商品を仕入れる場合には,商品の販売先である卸問屋や小売業者の意向をあらかじめ確認しておくのが当然であり,被告Tが独自の判断で商品を企画したり,中国の業者に商品のデザインを一任したりするということは,著しく不自然かつ不合理であって,およそあり得ないこと,② 原告商品の形態と被告商品の形態は,実質的に同一であること,③ 原告商品は,日本において広範囲で販売され,宣伝等もされていたこと』などを挙げていました(判決文17頁)。

 これに対し、裁判所は、以下のように判断しています(判決文17~19頁)。
 ①の点につき: 被告らが、S社の意向を確認した上で、具体的なデザインや形態等を指図して中国会社Bに製作させていたことを裏付ける客観的な証拠が存在しない。また、被告T社が製作依頼したのはサンプルなので、卸問屋や小売業者の意向をあらかじめ確認せず、サンプルの形状の大まかな要望を製造業者に伝えるだけで、具体的な形状のデザインなどについては製造業者に任せることがあったとしても、特段、不自然、不合理であるとはいえない。
 ②の点につき:  被告商品の形態は、原告商品の特徴的形状において共通するところが認められ、模倣して製作されたとうかがえなくはない。しかしながら、原告の製造する商品は日本以外の海外でも販売されているため、被告商品を製作した当時、中国会社Bが原告商品の存在を知っていた可能性も否定することはできない。したがって,上記②の事実から直ちに、被告商品の形態を企画したのが中国会社Bではなく被告らであると認めることはできない。
 ③の点につき:  原告商品の販売数は合計330個にすぎず、宣伝広告も原告ウェブページや商品カタログに原告商品の写真が他の商品とともに掲載されている程度にとどまるので、たとえ東京ギフトショーにおいて原告商品が賞を受賞し、その事実が業界誌に掲載されたことなどを考慮したとしても、原告商品は、一般に広く認知された商品とは認められない。

 以上より、『被告商品の形態は,被告らが共同で企画したものであるとは認められず,かえって,同商品の形態は,紅三角においてデザインをしたものである』とされ、争点(1)に関する原告さんの主張は認められませんでした。

○争点(3)
 争点(3)については、
 被告T社さんもHK社さんも被告商品を購入した時点では原告商品の存在を知らなかったこと、T社さんの取扱い商品数が相当な数に及ぶこと、原告商品が周知だったとは認められないこと等に照らし、『被告らは,被告商品の購入時にそれが原告商品の形態を模倣したものであることを知らず,かつ,知らなかったことにつき重大な過失はなかったものと認められる。』とされました。(判決文19~20頁)。

 以上より、原告さんの請求は認められませんでした。
 
 うーん、以前の事件では被告商品は原告商品の模倣と認められてるんですよね(今回の事件でもそれっぽいこと言われてる)。えーと、中国会社Bさん…(汗)

 本日はこの辺で…。
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この記事を読んでひろた興味を持たれた方は…

【執筆記事】
  
「知財管理」誌 VOL.60  NO.6
  (並行輸入と商標権侵害 -並行輸入の抗弁における「同一人性の要件」及び「品質管理性の要件」-)

  「知財産管理」誌 VOL.58 NO.5
  (「腸能力」審決取消請求事件(平成19年(行ケ)第10042号 審決取消請求事件)
     内容は
こちらからどうぞ

【関係事件】
 代理人になった事件です。負けたのでご紹介するのをためらっておりましたが、思い切って…。
 
平成18年(行ケ)第10367号審決取消請求事件
 なお、牛木理一先生のHPで紹介いただいているので(「特許ニュース」2007年6月29日号の記事です)、そちらも併せてご覧ください~(こちらのB-27の項です)。

【ZIP FM Z-TIME BIZ】
 ここのフォトギャラリーになぜかわたくしが。
  見付からないよ~?→2008/07/23のところ…

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