意匠新着審決No.2【3条1項3号系】

 それではNo.2、部分意匠編でございます。

■■■意匠新着審決【3条1項3号系】

●不服2010-10276
意匠に係る物品「包装用容器の注出口」

本願意匠(意願2008- 28174)と引用意匠(意匠登録第1294753号)は非類似と判断されました。
*判断主体: 看者、需要者
*公知意匠の参酌: 本願意匠ノズル本体部の各部の態様につき『本願意匠程度の突出や、やや上向き傾斜の吐出口や、横に広い吐出口など、既に公然知られていて、格別の特徴があるわけではない。』、本願意匠・引用意匠の太円筒部と軸部の態様につき『その部位だけを見れば、両意匠の態様ともありふれているものではある

本願意匠

引用意匠

 『一致点は、概略的な形状に係り、その範囲において看者に一定の共通感を印象付けている。しかしながら、平面視形状において、円形押圧部の途中を略水平方向に向けて引き延ばしたように凹曲線を描いて吐出口を延設した基本的な態様のノズル本体は、数限りなくあり、需要者の注意は、具体的な構成態様に向けられるものである。
 『ノズル本体部について検討すると、本願意匠に表された各部の態様…、各部を総合してみれば、吐出口先端までの全長や、厚み(高さ)や、吐出口先端部幅などの相違点(ア)ないし(ウ)による形状は、吐出口部の相違点(エ)、延設部の角度の相違点(オ)、上面部の周縁部の相違点(カ)による形状と相まって、本願意匠のノズル本体は、吐出口が相当長く、縁取りもなく滑らかに平べったく形成されたものであって、またその長さ故に、扁平略トラック形状の孔形状も、やや上向き傾斜状も、一層目立つところとなり、引用意匠とは別異の、本願意匠独特の特徴を表しているといえる。
 『太円筒部と軸部についての相違点(キ)及び(ク)は、その部位だけを見れば、両意匠の態様ともありふれているものではあるが、上記の相違点による形状と総合されて、本願意匠は、短い軸部の上部に長く突出する扁平なノズル本体がそのまま、かぶさるように取り付けられている様相といえるのに対し、引用意匠は、長い太円筒部によって首長に見える軸部に、突出が短いので円形で曲面的な印象が強いノズル本体が乗っているような様相といえるので、別異の意匠的効果を発揮するところとなっている。

●不服2010-14337 
意匠に係る物品「衛生用マスク」

本願意匠(意願2008- 19541)と引用意匠(意匠課公知資料番号第HH20420106号)は非類似と判断されました。
*判断主体: 看者
*公知意匠の参酌: なし

本願意匠

引用意匠

 『具体的な態様において、例えば、左右に広げた状態を表す右側面図においては、左側に膨出させた鼻口部分を覆う形状は、本願意匠が垂直状とした中間折曲げ辺を挟んで、これと略等しい長さで、上部圧着辺が右上方へ約45°傾斜し、下部圧着辺が右下方へ約40°傾斜する、上下に略対称な略倒台形状に形成したのに対し、引用意匠の中間折曲げ辺は右方へわずかに後傾した、極めて緩やかに湾曲する長辺とし、上部圧着辺が中間折曲げ辺の約1/3の長さで右上方へわずかに傾斜し、下部圧着辺が中間折曲げ辺の2/3強の長さで右後方へ回り込むように下方へ緩やかに湾曲しつつ傾斜する、上下に非対称な略倒変形台形状とした点で大きく異なり、また、上部圧着辺の頂部と耳掛け部圧着辺の上部とを結ぶ辺の斜「く」字状をなす形状も、その頂部が上部圧着辺寄りに形成されているか、耳掛け部圧着辺寄りに形成されているかの点の差異は、通常の使用状態において明確に視認される部位にあって、顔面とのフィット感にも大きな影響を及ぼすことを考慮すると、看者の一定の注意を惹くものといわざるをえず、これらの差異が相俟った視覚的効果は共通点を凌ぎ、生起する美感を異にしていると認められる。

●不服2010-13696  
意匠に係る物品「スイッチ」

本願意匠(意願2009- 17431)と引用意匠(意匠登録第1298631号)は非類似と判断されました。
*判断主体: 看者
*公知意匠の参酌: 共通点につき『この種のスイッチの分野においては、他にも回動レバースイッチのための開口部とボディ部上面の中央寄りに円形状の押しボタンスイッチを設けたものは認められ、それらを有するボディ部を設けた点のみをもって両意匠の類否判断を左右する共通点ということはできない。

本願意匠

引用意匠

 『差異点(a)乃至(c)に係る態様は、ボディ部全体の構成比と正面視の外形状、及び押しボタンスイッチの周囲の態様であって、両意匠の形態全体の骨格的な態様に係り、両意匠を斜め上方から観察した場合の印象を大きく決定付けるものといえ、看者の注意を強く惹くもので、その差異は、両意匠の部分の類否判断に重大な影響を与えるものといえる。差異点(d)及び(e)に係る態様も、差異点(a)乃至(c)のボディ部全体の差異に係る態様と相俟って、両意匠の部分の類否判断に影響を与えるものであるから、これらの差異点に係る態様が相乗して生じる意匠的な効果は、両意匠の部分の類否判断を左右するに十分のものである。
 なお、差異点はこちら。
 『(a)ボディ部上面の横幅に対する縦の長さの比が、本願意匠は、約1:1.12で縦長であるのに対して、引用意匠は、約1:0.97で横幅の方が広い点、(b)ボディ部を上面から見た形状が、本願意匠は、開口部側とは反対側に位置する側面両角部を隅切しているため、略隅丸八角形状であるのに対して、引用意匠は、当該部位は上面側のみやや円弧状に隅切し、下側は隅丸矩形状としたままであるので、略変形矩形状である点、(c)押しボタンスイッチの周囲の凹状部の形状が、本願意匠は、略X字状の深い部分と略縦長長円形状の浅い部分とが重なった形状であるのに対して、引用意匠は、略横長長円形状である点、(d)開口部の左右について、引用意匠は、つの状に突出した規制片部を有しているのに対して、本願意匠は、規制片部が開口部の左右内側に入り込んでいる点、(e)開口部の反対側側面部付近の小型矩形状係止辺の位置が、本願意匠は、両隅切部とそれに挟まれた後方側面部の3箇所であるのに対して、引用意匠は、左右の側面部のみである点

 本日は以上です!
 明日は商標の新着審決をご紹介しますので、見ていただけるのならぷちっと押してくださいね…
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※左上の画像データは名古屋市さんのご好意により提供していただきました。
この記事を読んでひろた興味を持たれた方は…

【執筆記事】
  
「知財管理」誌 VOL.60  NO.6
  (並行輸入と商標権侵害 -並行輸入の抗弁における「同一人性の要件」及び「品質管理性の要件」-)

  「知財産管理」誌 VOL.58 NO.5
  (「腸能力」審決取消請求事件(平成19年(行ケ)第10042号 審決取消請求事件)
     内容は
こちらからどうぞ

【関係事件】
 代理人になった事件です。負けたのでご紹介するのをためらっておりましたが、思い切って…。
 
平成18年(行ケ)第10367号審決取消請求事件
 なお、牛木理一先生のHPで紹介いただいているので(「特許ニュース」2007年6月29日号の記事です)、そちらも併せてご覧ください~(こちらのB-27の項です)。

【ZIP FM Z-TIME BIZ】
 ここのフォトギャラリーになぜかわたくしが。
  見付からないよ~?→2008/07/23のところ…

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