意匠新着審決【3条2項系】【7条系】

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 昨日もまた名古屋駅周辺で飲んでおりましたが、つくづく色んな人と話をするのは楽しいし、ハッとすること満載ですねー。皆さま、これかもどうぞ、わたくしを飲みに誘ってください。日本全国対応いたします。
 さて、本日は木曜日なので、意匠の新着審決をご紹介いたします。張り切っていってみよー!

■■■意匠新着審決【3条2項系】

●不服2010-4351   
意匠に係る物品「磁気活水器」

本願意匠(意願2007-18756)は、引用意匠1~4(意匠登録第0994444号の類似意匠登録第1号、意匠登録第1029288号、特開2003-340460の図5、意匠課公知資料番号第HC16021655号)に基づき容易に創作できた意匠とはいえないと判断されました。
*公知意匠の参酌: 共通点につき『本願出願前に公然知られていた』、本願意匠の態様につき『本願意匠が属する分野では…』等の言い回しが使われている。

本願意匠

 引用意匠4(メインの引用意匠)
 
 引用意匠4(メインの引用意匠)との対比
 『
…両意匠ともに切り欠き部が略扇状ではあるものの,全体形状および中心孔を含めた内部全体の空間部については具体的態様が異なるものであるというべきである。
 したがって,正面視略C字状の磁気活水器の全体を曲面で構成し,蛇口への取付のための切り欠き部を略扇状に形成したものが,本願出願前に公然知られていたとしても,全体形状および中心孔を含めた内部全体の空間部については具体的態様が異なることから,一定の創作があったというべきである。さらに,切り欠き部のみに着目した場合には,…切り欠き部は,水道管に装着するための切り欠き部であるから,本願意匠が属する分野においては,切り欠き部の形状には,一定の制約があり自由に創作できる部分ではないこともあり,中心孔を含めた内部の空間部全体を観察すべきであって,一部のみが公然と知られていることを理由に全体の創作が容易であることの根拠とすることは相当ではない。すなわち,本願意匠は,正面視略楕円形状の中心孔と略扇状開放部とが滑らかに連続し,両者が合体して略鍵穴状の空間部を形成している点に,創作行為が行われたということができるものであって,容易に創作ができたとはいえない。

 『本願意匠と意匠4とは,長手方向の長さが異なるのみならず,その具体的形状も異なるものであり,上記のとおり内部の空間部の形状が異なるのであるから,一定の創作が行われたというほかないものであり,本願意匠は,公然知られたものと認められる磁気活水器の意匠4の長手方向の長さを単に変更したに過ぎないということはできない。さらに,本願意匠の形状は,長さを変更するに当たって,商習慣上普通に行われる改変の範疇を超えた域に達しているといわざるをえない。

●不服2010-10279、不服2010-10280    
意匠に係る物品「包装用缶」

2つの本願意匠(意願2008-13297、2008- 13298)は、引用意匠1(意匠課公知資料番号第HD01008594号)に基づき容易に創作できた意匠とはいえないと判断されました。
*公知意匠の参酌: 共通点につき『この分野において、極一般的に見受けられる』、本願意匠の態様につき『出願前の公知例は無く』等の言い回しが使われている。

本願意匠1

本願意匠2

引用意匠1

 『蓋部における、水平部の位置の態様に加え、吐出孔部の小円孔の態様については、他に周知形状にも公然知られた意匠にも例はなく、本願独自の態様であり、常套的な改変に留まるということはできないうえ、また、本願意匠と意匠1とでは、肩部の態様、本体口部のカール部の態様、及び口部の大きさの態様が異なっているのである

●無効2010-880002     
意匠に係る物品「頭皮洗浄具」

本件意匠(登録第1071606号)は、引用意匠1~5(米国意匠公報第381519号、米国意匠公報第329752号、米国意匠公報第288848号、米国意匠公報第126041号 、米国意匠公報第269565号)に基づき容易に創作できた意匠とはいえないと判断されました。
*公知意匠の参酌: 共通点につき『よく見られる』、本願意匠の態様につき『他に例をみない』等の言い回しが使われている。

本願意匠

引用意匠1

引用意匠2

引用意匠3

引用意匠4

 『当該意匠が意匠法第3条第2項に規定する意匠に該当するというためには,基礎となる具体的創作態様が,それぞれ存在し,そして,それらがほとんどそのままか,あるいは,商習慣上よく見られるところの多少の改変を加えた程度で,よく見られる構成として単に組み合わせたか,あるいは,よく見られる構成の一部を置き換えたに過ぎないものであるといえることが必要である
 『本件登録意匠と引用意匠1とは,平面視略楕円形状の本体基台部と一体に繋がる把持部を有し,把持部の正面視形状を略「凸」字状とし,把持部を本体基台部の正面側の中央寄りから設けた点には,共通点が認められる。しかしながら,この共通点は,概括的なもので,本件登録意匠と引用意匠1のみを特徴付ける態様とはいうことができない。
 『本件登録意匠と引用意匠2とは,把持部の平面視形状を正面側から後方に向かって広がる態様としている点は共通するが,…引用意匠1の把持部を引用意匠2の把持部に置き換えたとしても,把持部の形状が大きく異なっており,把持部の形状を本件登録意匠の把持部のように変更するような示唆がないのは明白であるから,本件登録意匠の把持部は新たな創作というべきであり…
 『本件登録意匠の把持部の湾曲について,…引用意匠3ないし5のいずれの態様もそれぞれに異なり,本件登録意匠とも,その湾曲の度合いは異なるものである。様々な湾曲で表される把持部にあって,短い円弧状の本体基台部の上面膨出部から緩やかに把持部に繋がって湾曲している本件登録意匠の態様は,他に例をみないもので,その具体的態様に特徴があるものということができる。
 すなわち,把持部を背面側に湾曲させることが周知であったとしても,湾曲の程度,把持部と本体基台部との連続形状,大きさ,それぞれのバランスなど,多様に想定できるものであるから,引用意匠1の本体基台部と引用意匠2の把持部を組み合わせ,把持部を背面側に湾曲させた形状から,本件登録意匠の形状を導き出すことは困難であると言わざるを得ず…

 『本件登録意匠の本体基台部と把持部の形状は,その出願前からそれぞれの基礎となる具体的創作態様が引用意匠1ないし5にほとんどそのまま存在するものともいえず,あるいは,引用意匠1ないし5に商習慣上の多少の改変を加えた程度のものであるとはいうことができない。また,本件登録意匠の本体基台部と把持部の構成がよく見られる構成として単に引用意匠1ないし5を組み合わせたものともいうことができず,本件登録意匠の本体基台部と把持部は一体に繋がっているものであって,この種の物品分野において,たとえ本体基台部が公然知られたものであったとしても,一体に繋がった把持部についてまで,そもそも置換可能ということができず,よく見られる構成の一部を置き換えたに過ぎないものであるともいうことができない。

■■■意匠新着審決【7条系】

●不服2010-7634
意匠に係る物品「発光ダイオードモジュール」

本願意匠(意願2009- 8098号)は、第7条の要件を満たす一意匠と認められました。
なお、原審では『『意匠登録を受けようとする部分』:一つは、基板部分のうち、背面及び周側面の全面と、正面の外縁部分、もう一つは、正面中央付近に表れている4個の扁平四角形。』と判断し、『2つの意匠登録を受けようとする部分を含むものと認められるので、一意匠一出願の要件を満たさない』とされていました。

本願意匠

 請求人は、審判請求書において、意匠登録を受けようとしない部分を「基板上に設けられた電極とレジスト部分とを破線で描くことによって、これらの部分を意匠登録を受けようとしない部分としている。」と主張している。その主張は、「実線で表した部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」との願書の記載及び実線と破線によって表された願書添付の図面と合致し、本願意匠とは、発光ダイオードモジュールの基板正面の平面上の電極パターン、半田パッド部、及びそれらを被覆するレジスト部を除いた立体形状に即した一の形態をなす意匠と合理的に認定できる。』
 『原審は、平成20年3月特許庁発行の「意匠登録出願の願書及び図面等の記載の手引き」の「第2部 部分意匠の表し方」中の…を適用し、基板正面の外縁部分に、境界を示す線が省略されていると判断したと考えられる。しかしながら、手引きの当該項目は、【意匠の説明】に「破線で囲まれた部分を除き、実線で表した部分が意匠登録を受けようとする部分である」旨を記載すれば、境界線を図に表さなくても意匠登録を受けようとする部分が特定できることを示したものであり、境界線とみなすことを示したものではない。
 そもそも、意匠法は、物品の部分について意匠登録を受けようとする場合の図面について、施行規則第3条様式第6備考11において、「意匠に係る物品のうち、意匠登録を受けようとする部分を実線で描き、その他の部分を破線で描く等により意匠登録を受けようとする部分を特定し、かつ、意匠登録を受けようとする部分を特定する方法を願書の【意匠の説明】の欄に記載する。」としているが、本願は、これに則り図面を作成しているところであり、その意匠の内容は、前記のとおり、平面上の図柄部分を除く、立体的な形状からなる部分意匠と認定できるのであり、請求人による「破線で囲まれた部分を除き」との説明もないのであるから、あえて正面の外縁部分を意匠登録を受けようとする部分の境界線と認定すべき理由はない。

 なお、不服2010-7694でも、意願2009- 8102号が同じように、第7条の要件を満たす一意匠と認められました。

 本日は以上です!明日は余裕あったら商標の新着審決をご紹介しようと思ってます。見ていただけるのならぷちっと押してくださいね…
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※左上の画像データは名古屋市さんのご好意により提供していただきました。

この記事を読んでひろた興味を持たれた方は…

【執筆記事】
  
「知財管理」誌 VOL.60  NO.6
  (並行輸入と商標権侵害 -並行輸入の抗弁における「同一人性の要件」及び「品質管理性の要件」-)

  「知財産管理」誌 VOL.58 NO.5
  (「腸能力」審決取消請求事件(平成19年(行ケ)第10042号 審決取消請求事件)

【関係事件】
 代理人になった事件です。負けたのでご紹介するのをためらっておりましたが、思い切って…。
 
平成18年(行ケ)第10367号審決取消請求事件
 なお、牛木理一先生のHPで紹介いただいているので(「特許ニュース」2007年6月29日号の記事です)、そちらも併せてご覧ください~(こちらのB-27の項です)。

【ZIP FM Z-TIME BIZ】
 ここのフォトギャラリーになぜかわたくしが。
  見付からないよ~?→2008/07/23のところ…

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