<平成18年(行ケ)第10301号 審決取消請求事件>(判決文はこちら)
インターネットが普及して世界中の情報が手に入りやすくなったとはいえ、全ての国の事情を詳細に知ることは難しいのが現実です。特に、得られる情報が限られている国については、何が流行モノかを知る機会も少ないと思います。
今回紹介する裁判は、ブラジルで広く知れ渡っていたネーミング(「Dona Benta」)についてです。
このネーミングと類似する「DonaBenta」が他人によって(日本で)出願され、登録されました。日本では「Dona Benta」があまり知られてなかったので、登録されたものと思われます。
これを知ったブラジル本国の「Dona Benta」の商標権者が、「DonaBenta」の登録を無効にしようとして審判を請求しました。ところが、この無効審判の請求が成立しなかったので、この審決の取消しを求めて裁判を提起したわけです。
このような場合に適用されるのが商標法4条1項19号です。
この規定では『外国における需要者の間に広く認識されている商標と類似の商標であって、不正の目的をもって使用するもの』は登録できません。そして『一以上の外国において周知な商標と極めて類似するもの』は『不正の目的をもって使用するものとして推定して取り扱うものとする』という基準があります。
原告(ブラジル本国の「Dona Benta」の商標権者)は、自己の商標がブラジル本国で周知であったことの証拠をたくさん提出し、裁判所はその周知性を認めました。
また裁判所は、「DonaBenta」は「Dona Benta」と類似すると認定しました(これは当然ですよね)。
さらに、「DonaBenta」の出願当時「Dona Benta」が有名だったことや、被告商品の主な需要者が在日ブラジル人であり「Dona Benta」を知っていたことが推認されること等から、被告が「DonaBenta」を出願したのは、原告商標の名声に便乗する不正の目的があった、と認定しました。
ということで、原告の請求を認め、被告の日本の商標登録「DonaBenta」を無効にしなかった審決を取消しました。
…というように、海外出張や海外旅行で「ナイス!」と思った流行モノのネーミングでも、勝手に出願すると商標法4条1項19号で拒絶されたり登録無効となったりすることがあります。
他人の名声にフリーライドすることを考えずに、正攻法でオリジナルで勝負した方がお得、と考えた方がよいと思います。
本日はこの辺で。
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