ディープクレンジングオイルに何が -商標法4条1項10号・15号

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<平成25年(行ケ)第10011号 審決取消請求事件>(判決文はこちら

皆さま。今年に入ってからの判決ご紹介の遅れを取り戻すべく、モーレツに頑張ってブログ書くよ!(←少なくとも今日だけはそう思っとるよ!)
ってことで、今日も最近アップされたばっかしの判決をご紹介します。この事案、判決そのものよりも、背景事情が気になりました。

■本件商標・引用商標と、経緯

被告さんは、下記の本件商標の商標権さんです。

指定商品:第3類「クレンジングオイル」

パリ優先日は平成21年7月15日、出願日は平成21年11月6日、査定日は平成23年7月6日、登録日は平成23年7月23日です。
審査段階では拒絶理由通知(第4条1項各号(第4条1項11号~13号除く))が出されましたが、意見書・補正書提出によって登録されています。

一方、原告さんは、平成7年12月から、「DHC ディープクレンジングオイル」という商品の販売を開始して継続しています。特に平成13年から平成14年頃は、クレンジングオイル市場で20%近いシェアを有するトップメーカーとなっていました。しかしながら、平成15年以降は、実績の増減を繰り返しながら、本件商標の出願日である平成21年にはメーカートータルで実績を落とし、平成22年にはさらに実績を落としています。

その後の平成23年10月13日(つまり、被告さんの本件商標の登録後)に、原告さんは、下記2つの引用商標を出願しました。

引用商標1

指定商品:第3類「クレンジングオイル」

引用商標2

指定商品:第3類「クレンジングオイル」

2つとも、3条1項各号・4条1項11号で拒絶査定となり、現在、拒絶査定不服審判係属中のようです。

このような事情からだと思いますが、原告さんは、被告さんの本件商標の登録に対し、4条1項10号・15号該当性を理由として、無効審判を請求しました。
ところが、JPOが「請求は成り立たない」との審決をしたので、その審決の取り消しを求めて訴訟を提起した、というのが本事案です。

■裁判所の判断

では、裁判所の判断をごくごく簡単に。

○引用商標1,2の周知性

JPOは審決中で
商品「クレンジングオイル」の品質を表すものであって,自他商品の識別力を有しないというべき』『引用商標は,いずれも使用により自他商品の識別標識としての機能及び周知性を獲得したとは認められない
と言っていたようです(判決文3頁)。

一方、裁判所は、
他の多数のメーカーが相次いで「ディープクレンジングオイル」を製品名として市場に多数投入するまでは、「ディープクレンジングオイル」「DEEP CLEANSING OIL」が原告さんの商品名として周知だったといえる余地があるが、
その後は、同じ製品名を使用した他社商品が出回ったのに、原告さんが使用中止を求める等のアクションを起こさず、また、自ら出願もしたことなかったため、原告さんの販売実績及びシェアが漸減して本件商標の登録査定時には相当に少なくなっており、また、商品が出回ることにより「ディープクレンジングオイル」「DEEP CLEANSING OIL」の語が品質または用途を表示すると認識されるに至っていた…などとし、
本件商標登録の出願時(平成21年11月6日)及び査定時(平成22年7月6日)においては,「ディープクレンジングオイル」及び「DEEP CLEANSING OIL」の各商標は,クレンジングオイルの取引者・需要者の間において,「皮膚の深部又は深いところからきれいにするクレンジングオイル」というクレンジングオイル商品の品質ないし用途を表示するものとして認識され使用されていたものというべく,そうすると,本件商標登録の出願時及び査定時においては,もはや,「ディープクレンジングオイル」又は「DEEP CLEANSING OIL」の商標の使用された商品に接した取引者・需要者にとって,それが原告の業務に係る商品を表示するものとして周知されていたとまでいうことはできず…
と判示しています(判決文26-28頁)。

○4条1項10号・15号該当性について

上記のように、引用商標1,2の周知性が認められなかったため、本件商標の4条1項10号・15号該当性は認められませんでした(判決文29-30頁)。

○結論

以上のように、原告さんの請求は棄却されました(判決文30頁)。

■コメント

お年頃の女性であれば「DHC ディープクレンジングオイル」という商品を一度は目にしたり聞いたりしたことがあるのではないでしょうか。(化粧を殆どしない ひろた でさえ知っとるからね!いや、お年頃はとっくに過ぎとるけどね!)

原告さんはかなり頑張られましたが、「ディープクレンジングオイル」という語“だけ”では周知性が認められませんでした。

ちなみに、コーセーさんも平成13年には「ルティーナ\ディープクレンジングオイル\RUTINA\DEEP CLEANSING OIL」という商標を登録してますし、
被告さんの本件商標の出願時・査定時には、既に、「ディープクレンジングオイル」という語の識別性が弱かったとされたし、
…といったような諸々を考えると、
被告さんの本件商標は、ハングルが含まれているので、3条1項各号の拒絶理由が出されなくて、最終的に登録になったんだと思います(たぶん。違ってたらごめん)。

てことは、逆に、原告さんも、「DHC ディープクレンジングオイル」であれば、頑張れば登録できるかもしれませんね。

本事案、原告さんの こんなにまでの頑張りがどうも気になって背景を調べると、DHCのアメリカ法人?(DHC USA INCORPORATED)が、別で、「DEEP CLEANSING OIL」をマドプロ出願してるんですね(US基礎出願H23.9.15、国際登録日平26.3.19、指定通知平26.5.15)。
一方、被告さんの本件商標には、H23の9月から相次いで閲覧請求(交付請求)がされとります。
これらの絶妙な時期が、またもや気になります。

今日はこれでおしまい!

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