アパレルブランドの個性の浸透

 昨日の続きです。
 被告がJJのタイアップ広告で使用したロゴ2ロゴ5が、原告の登録商標「CLEAR」の商標権侵害となるか否か。ちなみに、ロゴ2ロゴ5は、「CLEAR」が「IMPRESSION」に比べて特に目立つとはいえない感じで表示するものでした。
 
 原告は、「CLEAR」ブランドが周知であることを理由に、ロゴ2ロゴ5を見た需要者は原告の登録商標と混同するおそれがある、と主張していました。

 それに対し、まず裁判所は、原告のブランド「CLEAR」が周知になっていることについて、このように判示しました。
 『雑誌での原告ブランドの紹介のされ方は,ほとんどの場合「関西のブランド」と しての紹介をされており,店舗展開も主として京阪神地区(一部名古屋地区も)にとどまっており,そのファッションも「神戸エレガンス」,「神戸系」に分類されている。また,原告ブランド自身が紹介されることも多いが,他ブランドの商品も扱うセレクトショップとして紹介されることも多い。このことからすると,原告ブランドは,前記認定のとおり,関西地方にある「神戸エレガンス」,「神戸系」のセレクトショップ及びそこが提供する服飾のブランドという個性をもって,広く知られるに至っていたものと認めるのが相当である。

 それで、ロゴ2ロゴ5が、原告の登録商標「CLEAR」と類似するかということについては、こんなふうに判示しました。

『(1)「CLEAR IMPRESSION」のうち、名詞と結びついた「CLEAR」の識別力はさして高くない一方、「IMPRESSION」の識別力は低いとはいえない。
  原告の「CLEAR」は単一の語で周知であるが、そのことをもってして、「CLEAR」が名詞と結びついた結合商標(「CLEAR IMPRESSION」)が、「CLEAR」だけで識別されることはない。

 (2)原告ブランドは、関西地方にある「神戸エレガンス」,「神戸系」のセレクトショップ及びそこが提供する服飾のブランドという個性をもって,広く知られるに至っていたものと認められる。一方、被告ブランドは、多数の服飾ブランドを擁し、レディスアパレル業界の売上高が8位である被告が、従来から存した「エ・ピウス・プレイス」をリニューアルする形で、当初から全国的に展開したもので、そのデザイン上の特徴も、「神戸系」に対抗して打ち出された「東京エレガンス系」に近いものである
  原告ブランドと被告ブランドに共通する需要者である20代の女性は、特にファッションやブランドに敏感であることからすると、両者のブランドにこのような性質上の差異が存するにもかかわらず、単に「clear(CLEAR)」の語が共通することから、被告ブランドを原告ブランドのサブブランドであると一般に認識するとは認め難い。

 原告は、mixiの被告商品のファンサイトや個人ブログで「クリアインプレッション」のことを省略して「クリア」と書き込んでいる人が相当数いることも主張したようです。
 だけど、『それらの個別事情があるからといって、被告標章が一般的に「クリア」と称呼されると認められない』と一蹴されました…。

 この事件における類否判断のポイントは、主たる需要者層である20代女性の“通常有する注意力”でした。“ファッションやブランドに敏感”なのが通常の注意力、と判断されたわけでしょうか。
  需要者層から完全に外れているわたくしの注意力は、この事件には役立たずです。

 ちなみにこの事件、突っ込みたくなる箇所が他にもありました。それについては、また明日をお楽しみに~

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