※昨日の事件名、誤記がありました(O先生、ご指摘ありがとうございました!)。
このブログ、朝一で寝ぼけたまま書いていることが多いので、「はて?」と思われたらご指摘いただると嬉しいです!
さて、昨日の続きです。
まずは事件の対象となったHさんの登録商標ですが、
「CROWN」、指定商品:「カフスボタン」「ボタン類」
というものです。
この商標について、Tさんは、指定商品「ファスナー」の専用使用権のライセンスを受けたのでした(「ファスナー」は「ボタン類」に含まれます)。
そして、なぜHさんが「Tさんは不正使用している!」と主張したかというと、次のような事情があったからです。
Tさんは、年代物の米軍のフライトジャケットのオリジナル品を忠実に再現して販売していました。そして、ジャケットのファスナーについて商標「CROWN」を使用していました。このファスナーのウリは、昔流行った米国CROWN社製のZIPPERを忠実に再現し、現代に蘇らせたという点。
そして、このファスナーには、各スライダーの本体部分又はプル部分の各表側に「CROWN」と刻印して、裏側に「USA」、又は「MADE IN USA」と刻印していました。
Hさんは、ここを突いたわけです。
つまり、表側の「CROWN」の刻印と裏側「USA」又は「MADE IN USA」の刻印とが相俟って、「米国CROWN社製のもの」と誤信させ、出所混同を生じさせているから商標法53条の「不正使用」に該当し、自分の登録商標が取消されかねない、というわけです。
ところで、商標法53条で取消しの根拠になる「不正使用」は、
『登録商標と“同一又は類似の商標”の使用であって、品質誤認や出所混同を生じるもの』
であることが条件ですね。
Tさんの使用は、表側に「CROWN」、裏側に「USA」又は「MADE IN USA」。
これが『登録商標と“同一又は類似の商標”の使用であって、品質誤認や出所混同を生じるもの』に該当するか?が問題となります。
これに対して裁判所は、どう判断したかというと、
『表側に「CROWN」、裏側に「USA」又は「MADE IN USA」と刻印しても、表側と裏側が連続しているとか、一体の商標と認められる程度に近接して表示されているということはできないから、商標法53条の「登録商標と“類似の商標”」に該当すると認めることは困難』とし、
『表側の「CROWN」だけからは、品質誤認や出所混同を生じるということもできないから、商標法53条に該当する事実は認められない』
ということです(前審の本訴も同じような判断)。
そうですか…
もし「CROWN」と「USA」又は「MADE IN USA」が同じ面に刻印されてたら、判断は違ったのでしょうか。
表示の仕方にもよると思いますが、例えば「CROWN」とちょっと離してやや小さめに「MADE IN USA」と表示していたりなんかしたら、なんだか怪しそう?
ちなみに、登録要件の規定である4条1項11号的には、「CROWN」に「USA」や「MADE IN USA」を併記しても、「CRWON」と類似と判断されそうですか(表示の仕方にもよりますが)。
また、4条1項16号の審査基準的には、「CROWN」と「MADE IN USA」を併記して、指定商品を単に「ファスナー」として出願したら、拒絶理由が来そうな感じですね。
このように、商標法53条的にはセーフだったんですが、それで終わりということではありません。
Tさんが「USA」又は「MADE IN USA」と刻印した行為は、不正競争防止法2条1項13号の「原産地を誤認させるような表示をする行為」に該当すると判断されています。
なので、「USA」又は「MADE IN USA」と刻印した行為が法的に許容されるというわけではないです。
最近大活躍の不正競争防止法2条1項13号です。
いずれにしろ表示には気を遣うべきだな、と思われた方、
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