おらが街の…

 酒と地名の商標バナシ第3弾の続きです。
 
 昨日の審決の内容をざっくりおさらいすると、
 “指定商品「日本酒」の本願商標「伏見の龍馬」のうち、「伏見」の部分は日本酒の産地、販売地を表示するにすぎないものと認識されるので、登録商標「竜馬」「龍馬」と類似する…”
 てな感じでした。

 それでは、審決取消訴訟ではどう判断されたのでしょう。
 結論からいうと、本願商標「伏見の竜馬」は登録商標「竜馬」「龍馬」と類似する、という判断でした。

 判決文の中からちょっとおもしろい部分をピックアップします。
 
 まず「竜馬」について。

 裁判所は、このように述べました。
 『「坂本竜馬」が幕末の時代に活躍した歴史上の人物であることは,幼児や児童を除いたほとんどの日本人が知っていることであり,このことは,当裁判所にも顕著である。また,「坂本竜馬」はしばしば「竜馬」のみで示されること,このことが,「坂本竜馬」の著名性と相まって,ただ「竜馬」といえば,通常は「坂本竜馬」を示すものと理解される状況を生じさせていることも,当裁判所に顕著である。したがって,「竜馬」の文字に接した取引者・需要者は,まず第一に,上記歴史上の人物である「坂本竜馬」を想起することは,明らかというべきである。』(判決文4頁)

 この点につき、原告(出願人)は、こんなことを述べていたようです。
 『一般の国語辞典において,「竜馬」の項目をみると,「極めてすぐれた馬」,「将棋で角のなったもの」を意味することが記述されているものの,「坂本竜馬」に関する記述はなく,「坂本竜馬」にたどりつくためには,「坂本」の項目に当たらなければならない』,『「竜馬」の文字から,直ちに「坂本竜馬」のみを想起するということはできない』(判決文4頁)
 
 裁判所は、原告の主張は失当であるとしています。
 『一方では,被告の主張によっても,「坂本竜馬」は,一般の国語辞典に掲載されているのであり,「坂本」の項目に記載されているか,「竜馬」の項目に記載されているかによって,「坂本竜馬」の著名度が左右されるものではなく,単に,国語辞典の編集方針にすぎないということができ,他方,「竜馬」の語が,「極めてすぐれた馬」あるいは「将棋で角のなったもの」として知られている度合いは,決して大きいとはいえないからである。』(判決文4頁)

 うう、原告さんの苦労がしのばれます。

 次に「伏見」について。
 
 裁判所は「伏見」が酒造の町として著名であることは事実だと述べております。なので、『「竜馬」と「伏見」との文字は,それぞれ固有の意味を有するものであり,しかも,それぞれが著名であるから,このような二つの語を格助詞「の」で結合させたとしても,「竜馬」及び「伏見」の固有の意味が失われることはないものというべき』としております(判決文4頁)。
 
 加えて、『取引者・需要者の中に,「伏見の竜馬」の文字から,「伏見にいた坂本竜馬」あるいは「伏見で活躍した坂本竜馬」を想起し,これを全体として一体不可分のものとして認識する者があり得るとしても,多くの者は,これを一体不可分のものとは認識せず,「伏見にいた坂本竜馬」あるいは「伏見で活躍した坂本竜馬」を想起すると同時に,「伏見」と「竜馬」という文字とを分離して認識し,あるいは,「伏見にいた坂本竜馬」あるいは「伏見で活躍した坂本竜馬」と想起することなく,「伏見」と「竜馬」という文字とを分離して認識するものというべきである。』ともしております(判決文4頁)。
 また、他の箇所では『しかしながら,坂本竜馬が,京都の伏見で活躍したことがあるのはもちろんであるとしても,その他,江戸,長崎などでも活躍していたこと,土佐藩出身であることが,一般によく知られていることは,当裁判所に顕著である。したがって,たとい,坂本竜馬が京都の伏見で活躍したことがあり,伏見の地区において,坂本竜馬が象徴的存在となっているとしても,そのことで,直ちに,一般の取引者・需要者の間で,「伏見の竜馬」といえば,必然的に「京都の伏見を本拠地として活躍した竜馬」を意味することになるものとはいえない。ある一部の地区において,「伏見の竜馬」といえば,必然的に「京都の伏見を本拠地として活躍した竜馬」を意味するものと理解する者が存在するに至っていたとしても,「伏見の竜馬」の一体性は,その限度で認められるにすぎない。』ともしております(判決文4頁)

 つまり、「伏見」は、一般的に、指定商品「日本酒」との関係で日本酒の産地と認められるけど、「竜馬」との関係では…??
 もやもや…

 以上が本判決中、ちょっとおもしろい部分でした(あ…おもしろくありませんでした?)

 
 ちなみに…
 

 この商標、拒絶査定不服審判まで行ったけど、登録されませんでした(指定商品は第30類「うどんめん」)。
 『同人(坂本竜馬)と何らの関係もない請求人(出願人)が、その指定商品について私的独占使用の目的をもって採択し、これを商標として登録することは、公正な競合秩序を害するおそれがあるから、これは社会公共の利益に反し、また、社会の一般的道徳観念に反するものというのが相当である。』ので、4条1項7号に該当するとのこと(不服2003-18931)。

 また、「吉田松陰」「高杉晋作」「桂小五郎」が4条1項7号該当で拒絶査定を受けたけど審決で登録になって、その後世間をにぎわせたことがありましたよね…(現在、異議申立の審理中?)

 ご存知のように、去年の秋、審査便覧に「歴史上の人物名(周知・著名な故人の人物名)からなる商標登録出願の取扱いについて」を追加する改訂がなされましたが…

 名古屋で考えると…秀吉とか信長とか家康とか?
 アナタの街はいかがですか?

 本日はこの辺で。
 次回も見ていただける方、ぷちっと押していただけると嬉しいです。
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