黒烏龍茶

<平成19年(ワ)第11899号不正競争行為差止等請求事件>(判決文はこちら

 昨年の年末に話題となった「黒烏龍茶」の事件です。「たのむ!」で有名なサントリーさんの商品です。

 ○事件の概要
 原告は、サントリー。実際の黒烏龍茶の商品は
サントリーさんのHPでご確認を。
 サントリーは、「サントリー」(商標登録第4553625号)、「Suntory」(商標登録第4539080号)の商標権を持っています。 

 一方、被告は、O社とH社。
 被告らは、以下の商品A、商品Bの製造販売をし、またサントリーとの比較広告1、比較広告2をしていました。
 
 商品A:サントリーの黒烏龍茶の商品と似た表示を付している。違うのは、「サントリー」「Suntory」の文字がないこと、特定保険用食品を示す文字・図形がないこと、「ブラックウーロン」の記載があることなど。
 
 商品B:サントリーの黒烏龍茶の商品の表示と似ているのは、包装パッケージの背景色が黒味を帯びた濃い色であること、明朝体の漢字の「黒」という文字部分が存在すること、「烏龍茶」という文字部分が存在すること、含有成分が記載されており、その記載に「ポリフェノール」という片仮名のゴシック体の文字部分が含まれていること。その余の点は、いずれも相違している。

 比較広告1:ウェブサイトにおいて、原告商品の画像5本半分(2リットル相当)と被告ら商品Bの1包の画像との間に「>」の記号を付し、その下に「1包のティーバッグで2リットルのペットボトル1本を作る事ができます!」と表示。

 比較広告2:比較広告1に加え、さらに、「烏龍茶ポリフェノール含有量2070mg 約70倍サントリーなんかまだうすい!」と表示。

 原告は、上記被告の行為について、
 ・不正競争防止法2条1項1号又は2号該当による差止め等、
 ・不正競争防止法2条1項13号又は14号該当による差止め等、商標権侵害による差止め、著作権侵害行為該当による差止め等、
 ・不正競争防止法による信用回復措置、商標法・特許法による信用回復措置、民法による名誉回復措置等
 を求めました。

 ○さて、
 まずは気になるのが、原告が「黒烏龍茶」の商標権を持ち出していないことですよね。
 ちょっと調べてみたら、ちゃんと出願しています(商願2006-102769)。ただし、発売開始(H18.5)より半年ほど後のH18.11.6に出願されています。ちなみに、被告商品Aの販売開始はH18.7下旬ころとされているので、それよりも後に出願されたことになります。
 それで、この「黒烏龍茶」の出願はどうなっているかというと…ご想像のとおり、3条1項各号適用で拒絶され、現在、審判で争っているようです(なお、4条1項11号等も適用されています)。 
 
 というわけで、「黒烏龍茶」の商標権は持ち出せず、不競法2条1項1号又は2号で勝負。

 まずは原告の商品表示の周知性・著名性ですが、
 ・被告の商品Aの販売開始時点(H18.7下旬)における、原告の商品表示の周知性は認められました。
 ・一方、原告の商品表示の著名性は、H18.7下旬時点では販売開始から2ヶ月半しか経っていなかったこと等から、認められませんでした。
 なので、不競法2条1項2号は使えず、1号だけ使えるということになります。

 それでは、不競法2条1項1号適用の妥当性について。
 
 まず、不競法2条1項1号の「類似」について。

 原告は、原告商品の表示(サントリーさんのHPで確認してね)中、「黒烏龍茶」の文字部分が要部であると主張しました(被告の商品Bを考慮して?…多分)。
 この主張に対し、裁判所は、次のように判断しました。
 『証拠及び弁論の全趣旨によれば,原告商品について,新聞社から取材を受けた原告の担当者自身が,「黒烏龍茶」という名称の由来について,茶の色が濃く黒いからである旨述べていること,原告商品を紹介した雑誌の記事が,「濃い色の烏龍茶」,「『黒』の色は,”ウーロン茶重合ポリフェノール”の色素沈着」,「ネーミングは・・・高濃度のウーロン茶重合ポリフェノール成分の色をそのまま強調し」などと紹介しており,その一部は,原告担当者自身のコメントを掲載したものであると窺われること,平成18年度のヒット商品として表彰を受けたことに関する受賞記事においても,濃い色から「黒烏龍茶」と名付けられたとの記載が存在すること,消費者と原告の「お客様センター」の担当者との電話でのやりとりにおいて同, 担当者自身が,「・・・お色の方も通常のより濃い茶色を示して,茶色になっておりますので,これで黒というふうにネーミング付けさせていただいております。」と話していること,原告のウエブサイト上における原告商品の紹介で,効能成分である”ウーロン茶重合ポリフェノール”を豊富に含むことにより,通常の「ウーロン茶」よりも濃い色をしていることから「黒烏龍茶」と名付けました。」とされていること,「黒烏龍茶」のネーミングに関与したという原告の健康飲料部長が,「『黒烏龍茶』は,通常のウーロン茶に比べて色が濃いこと,及びこの商品特性を表現するために「黒」を使って「黒烏龍茶」というネーミングに決定したものです。」などと述べていることが認められる。
 これらの事実及び「烏龍茶」が著名な茶の種類を意味する普通名詞であることに照らせば,「黒烏龍茶」自体は,原告自身の認識及びその名称の考案過程においても,茶の種類を意味する普通名詞である「烏龍茶」に,「濃くて黒っぽい」という茶の色を意味する形容詞である「黒」を付加したものであり,製品の種類及び性状を表す2つの単純な言葉を組み合わせたにすぎないから,特殊な造語として,単独で高い識別力を持つとまではいえず,それのみが原告商品表示の要部であるともいえない

 ということで、商品表示全体に含まれる各部分を総合考慮して類似性を判断すべし、とされました。

 そして、原告商品と被告商品Aについては、外観も、称呼も、観念も類似するので、不競法2条1項1号の類似性が認められると判断されました(判決文63頁~
66頁)。
 一方
、原告商品と被告商品Bについては、外観・称呼が類似せず、観念のみが類似するが、総合的には不競法2条1項1号の類似性は認められないと判断されました(判決文66頁~69頁)。

 次に、不競法2条1項1号の「混同」について。
 被告商品Aについてのみ類似性が認められたので、こちらの商品Aだけについて。
 結論からいえば、被告の商品Aに関する行為の混同性も認められました(判決文70頁~71頁)。

 以上より、被告が商品Aを製造販売する行為は、不競法2条1項1号に該当すると判断されました。

 あ~、長かったですね…。

 明日は、「不正競争防止法2条1項13号又は14号該当による差止め等、商標権侵害による差止め、著作権侵害行為該当による差止め等」について。
 明日も見ていただける方、ぷちっと押していただけると嬉しいです。
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こちらもご参照を!→駒沢公園行政書士事務所日記「サントリー黒烏龍茶比較広告事件~不正競争防止法 不正競争行為差止等請求事件判決(知的財産裁判例集)~」
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