その間に進んだ!

 前回の判例紹介からすっかり間があいてしまいました。その間、ドラゴンズはベテラン勢の活躍でCS第2ステージへの進出も決まり、世の中は日々進んでいるのだなぁと実感します(そんなことで実感するな?)

 早速、「DEEP SEA」の続きを。
 50条の取消審決に対する取消訴訟で、ELGIN INTERNATIONAL社の腕時計の文字盤に表示された「DEEP SEA」が、自他識別標識として使用されているか否かが問題となっていた事件でございました。
 
 WATER RESISTANT
 AUTOMATIC DEEPSEA
  660ft=200M
    DATE
 
 (実際の文字盤はインターネット検索でたくさん見ることができますのでご参照にしてください。)

 さて、本日は裁判所の判断をご紹介。
 裁判所は、「DEEP SEA」の部分について、登録商標と社会通念上同一のものと認められると判示した上で、このように述べました。
 『この「DEEPSEA」については,次行の「660ft=200M」の表示とあいまって,需要者において,水深200メートルの深海においても使用できる耐水性を有するとの機能を表示するものと理解し得る可能性があるが,一方,「DEEPSEA」の語は,深い水深の場所でも使用できる腕時計の品質を表示する語として一般的に使用されているものではないこと(当事者間に争いがない。)などからすると,この「DEEPSEA」の表示については,「深海」の意味を示す用語として,需要者において,テレビ番組等においても目にする機会がめったにない深海や深い海の神秘的なイメージをも与えていると理解することができ,このことは,需要者に対して,これが付された腕時計である原告商品の自他の識別標識としての機能をも果たしているものであって,「DEEPSEA」の表示は,原告商品に自他商品の識別標識としての機能を果たす態様で用いるものとして付されているということができる。』(判決文9頁~10頁)
 つまり、審決と逆の判断をしたわけです。
 
 ちなみに、被告(取消審判請求人、ロレックスの会社)は、
 『原告商品が実際に水中で使用できる「ダイバーズウォッチ」であること,原告商品と同程度の防水機能のついた腕時計は多数存在し,一般消費者であっても,腕時計の防水機能の表示等について一定の知識を有するといえ,「660ft=200M」の表示の意味合いを容易に把握することができること,原告商品における「DEEPSEA」の表示態様や「DEEPSEA」の語の意味が容易に理解できることを考慮すれば,取引者・需要者は,「660ft=200M」の表示とあいまって,「DEEPSEA」の表示を「水深200メートルの深海においても使用できる機能及び主な使用表示」と認識するということができ,同表示をもって,原告製品と他の製品を識別するための手掛かりとして認識しているということはできない
 と主張していましたが、これに対し裁判所は、
 『商品に付された1つの標章が常に1つの機能しか果たさないと解すべき理由はなく,原告商品に付された「DEEPSEA」の表示が,次行の「660ft=200M」の表示とあいまって,需要者において,水深200メートルの深海においても使用できる耐水性を有するとの機能を表示するものと理解し得るとしても,その表示が,同時に,自他商品を識別させるために付されている商標でもあると解することができるものであり,上記のとおりの「DEEPSEA」の持つイメージ等に照らすと,この表示が原告商品に自他商品を識別させる機能をも果たす態様で用いるものとして付されていると解することができるものであって,被告の主張は採用することができない。
 と判示しました(判決文10頁~11頁)。

 結果的に自他商品識別機能あり、と判示されたわけですが、結構際どい表示態様なような気がしました(実際、審決では識別機能なし、と言われてますし)。
 ちなみに…ロレックスさんの時計にも文字盤に「DEEP SEA」と表示してあるんですね…そして「ロレックス ディープシー」は結構宣伝されてるみたい…そんな事情も多少影響があったのかなかったのか…?

 本日はこの辺で。
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コメント

  1. 「DEEP SEA」
    ELGIN がロレックス社を訴えた DEEP SEA に関する判決文を読んだのですが、神経衰弱の様で非常に判り難い!
    ①ユーザーから見ても「DEEP SEA」は明らかに商品名であると思います。ELGIN が商標登録しているので、
    ロレックス社は商標権を犯しており、使用を停止せよ…。損害金は???
    ②この判決によりロレックス社は DEEP SEAの商品名を使用出来なくなった。
    こんな理解で良いのでしょうか? 裁判が長引くのは、裁判官にも責任が有りそうですね!
    MAX

  2. 随分遅くてすみません(汗
    MAXさん、コメントいただいていることに気付かなくて、返答が随分遅くなってすみません…(汗

    ①この事件でELGIN側が訴訟を提起したのは、ロレックス社が“ELGINは登録した商標を「商標として」使っていないので、使っていない商標の登録は取り消すべきだ”という審判を特許庁に請求したら、その請求が認められて商標登録を取り消すという結論(審決)が出たので、その審決を取り消すためです。
    (それとも、ELGIN側がロレックス社を商標権侵害で訴えた訴訟があったのでしょうか…存知あげなくてすみません…)

    裁判所は、“ELGINは登録した商標を「商標として」使っている”と判断して、特許庁の審決を取り消しました(ELGINの商標登録が維持されたことになります)。

    ②ELGINの商標登録は維持されたのですが、その後、ロレックス社に権利が移転しているようですね。

    返答が遅くなってしまいましたが、これに懲りずにまたお越しください

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