ANTHROPOLOGIEは間違えてまったのです。

 間が空いて間抜けになってしまいましたが、先週の続きです。
 
 本日は、登録商標「ANTHROPOLOGIE」(登録第4967769号)が4条1項19号に該当するか否かについて、裁判所の判断です。
 
 まずは、原告の米国商標についての“外国における周知性”に関して。

 裁判所は、原告が提出した証拠等から、原告の米国商標は米国において周知であると認定しました。ちなみに、審判で提出した証拠と同じようなのですが(多分)、認定は審決と異なってます。
 『上記事実,ことに本件各米国商標を使用した店舗の数,カタログ頒布部数,ウェブサイトの開設状況及びその利用状況等の事実関係によれば,本件商標の登録出願がなされた平成17年11月2日及び本件商標の登録査定がなされた平成18年6月13日の時点において,本件各米国商標は少なくとも米国において女性用被服及びハンドバッグ等の需用者の間に広く認識されていた商標であると認めることができる。よって,本件各米国商標を「他人の業務にかかる商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需用者の間に広く認識されている商標」には当たらないとした審決の判断は誤りである。』(第10210号事件判決文14~15頁、第10211号事件判決文14頁)。

 次に、本件商標が「不正の目的をもって使用するもの」に該当するか否に関して。
 
 ざっくり、「ANTHROPOLOGIE」商標を巡る原告ー被告間の事情を見てみます。
 
 被告(本件商標の商標権者)は、H15に海外ブランドの発掘を目的として米国ニューヨーク市に事務所を設立し、H19には米国でのカジュアルウェアのテストマーケティングを目的としてニューヨーク州に「Crymson USA INC.」という会社を設立したようです。

 一方、原告は、日本へ事業進出をするに当たり、日本においても「ANTHROPOLOGIE」を商標登録しようと考え調査を行ったところ、被告の別の登録商標(登録第4330840号)を発見しました。原告はこの商標登録に対してH18に不使用取消審判を請求し、その結果この商標登録は取り消されたようです。
 また、被告は、別の「ANTHROPOLOGIE」商標もH18に出願しており、この出願によって原告が出願した「ANTHROPOLOGIE」商標が4条1項11号で拒絶理由を受けたようです。被告の方の出願(先願)は登録査定を受けたようですが、登録料納付がなされず出願却下となったようです。
 そして、本件商標自体は権利放棄されたことは、前回記したとおり。

 さて、原告は米国の会社なのに、「ANTHROPOLOGIE」は仏語・独語です。これにはこんな事情があったそうです。
 『原告が米国で商標出願をする際に担当者が語尾の綴りの「gy」を「gie」と間違えたため「ANTHROPOLOGIE」が商標として登録されたが,原告においてはそれがかえってユニークであるとしてそのまま使用されるに至っている。』(第10210号事件判決文17頁、第10211号事件判決文17頁)。

 以上のような事情から、裁判所はこのように判断しました。
 『原告は,1989年(平成元年)に「ANTHROPOLOGIE」の商標の使用を始め,1992年(平成4年)10月31日には「ANTH ROPOLOGIE」の商標を使用した店舗を米国で開店していた上,1998年(平成10年)には「ANTHROPOLOGIE」の商標を使用したカタログを発行していたところ,被告は被服のブランドライセンス事業を行っており外国の服飾ブランドについても専門知識を有していたと推認されることからすれば,被告が別件商標を出願した平成10年10月7日の時点で本件各米国商標を知っていた可能性が認められる。まして,被告は平成15年1月には海外ブランドの発掘を目的として米国ニューヨーク市に事務所を設立していたのであるから,本件商標を出願した平成17年11月2日の時点で,当時米国において女性用被服及びハンドバッグ等の需用者の間に広く認識されていた本件各米国商標を知っていたと認めるのが相当である。
 そして,前記1(2)で認定した被告の応訴態度その他本件において認められる上記各事情を総合すると,被告は,本件商標が米国における周知商標である本件各米国商標と類似することを知りながら,本件商標を自ら使用することによって不当な利益を得るため本件商標の登録出願をしたものと推認するのが相当であり,被告は本件商標を使用するにつき不正の目的を有していたというべきであるから,これと異なる審決の判断には誤りがある。
』(第10210号事件判決文18頁、第10211号事件判決文17~18頁)。

 ということで、被告の本件商標は4条1項19号に該当するとされ、審決が取消されました。

   ちなみに…
 被告の会社はPIKO等の有名なブランドを扱っているようですね(クリムゾンさんのHP)。

 それでは、また次回。次回は少し軽めのハナシです(…多分)。
 次回も見ていただける方、ぷちっと押していただけると嬉しいです。
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この記事を読んでひろた興味を持たれた方は…

【執筆記事】
  「知財産管理」誌 VOL.58 NO.5
  (「腸能力」審決取消請求事件(平成19年(行ケ)第10042号 審決取消請求事件)
     内容はこちらからどうぞ

【関係事件】
 代理人になった事件です。負けたのでご紹介するのをためらっておりましたが、思い切って…。
 平成18年(行ケ)第10367号審決取消請求事件
 なお、牛木理一先生のHPで紹介いただいているので(「特許ニュース」2007年6月29日号の記事です)、そちらも併せてご覧ください~(こちらのB-27の項です)。

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