<平成22年(行ケ)第10037号審決取消請求事件>(判決文はこちら)
毎年6月第一週目の週末に、名古屋市東区出来町・筒井町で「天王祭り」というお祭りが行われます。
このお祭りを知ったのは十数年前のことで、それ以来毎年欠かさず見に行っているのですが、初めて見たときは「こんな街中で山車がひき回されてるとは!」と、まじ驚きでした。
私が行くのは夜ですが、最近は現物人の数も増えてきてなかなかにぎやかです。建中寺前の公園では屋台も出ます。お近くにお住まいの方や山車フリークの方は、是非ご覧ください。
詳細は名古屋市のHPにて⇒「天王祭り」
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さて。
本日は、
“登録商標の不使用につき「正当な理由」って何?”
なハナシです。
登録商標につき使用義務があるっていっても、責めに帰すことができない理由等で使用できないっつーんであれば、仕方がありませんね、取消さないでおきましょう。っつーのが、商50条2項のただし書でございました。
『ただし、その指定商品又は指定役務についてその登録商標の使用をしていないことについて正当な理由があることを被請求人が明らかにしたときは、この限りでない。 』
「正当な理由」というのは…
例えば、
「その商標の使用をする予定の商品の生産の準備中に天災地変等によって工場等が損壊した結果その使用ができなかったような場合」、「時限立法によって一定期間(三年以上)その商標の使用が禁止されたような場合」(工業所有権法(産業財産権法)逐条解説 第17版)
とか、
「放火、破壊等の第三者の故意または過失による事由」(注解商標法 新版)
とか。
いわゆる「地震・雷・火事・おやじ」ですね。(…え?)
最近の判例では、スマトラ沖地震で「正当な理由」を認めた平成19年(行ケ)第10227号審決取消請求事件が記憶に新しいところです。
で、今回の事件の事情は、
商品「液剤」についての登録商標「久遠水」の商標権者さんが、「身延久遠水」という販売名の薬品が既に承認されていたので、薬事法の承認を得られないだろうと見込んで承認申請を行わなずに不使用だった、というものでした。
前ステージの不使用取消審判の審決では、以下の理由で商標登録が取消されたのでありました(取消2009-300352)。
『本件商標の使用を予定する医薬品の製造販売の承認審査において,販売名に関しての審査結果についての予測が必ずしも定かでないとしても,少なくとも,承認申請を行うことが可能であったということができ,…被請求人の予見のみをもって,直ちに被請求人が本件商標の使用をすることができない客観的・法律的な障害事由として,不使用に係る「正当な理由」があったとすることはできない。』
これに対し、訴訟における商標権者(原告)さんの言い分は、以下のとおり。
『準備行為として医薬品の承認申請を行うことまで求められるべきであるとすると,原告は,承認されないことが明らかである承認申請の手数料として数十万円から数百万円を負担しなければならなくなる。加えて,パッケージや容器の作成代や最低ロット数の製造委託料など,少なくとも数百万円もの負担をも余儀なくされるのであって,このような実情を考慮すると,単に形式的に承認申請が可能であったというだけで,不使用に係る「正当な理由」が認められないとして,本件商標の登録を取り消すことは,社会通念上,商標権者である原告に酷である。』(判決文3頁)
本件ではこれが「正当な理由」に該当するかどうかが問題となりました。
でも裁判所は…
『…本件において,原告が,実際に,本件商標を販売名とする医薬品の製造販売を企図しながら,薬事法上の製造販売の承認との関係で,その製造販売やその準備手続を見合わせざるを得なかったとの事実を認めるに足りる証拠はなく,そうである以上,本件商標の使用を予定する医薬品の製造販売の承認審査を申請しても前記指針によって承認がされないとの原告の見込みも,要は,原告の憶測にとどまるものであったといわざるを得ないのであって,そのような憶測を理由に,本件商標の不使用について原告の責に帰すことができない事由があったとまでいうことはできない。
さらに,原告は,そのような見込みの下において,承認審査を申請するとすれば,その手数料として数十万円から数百万円を負担しなければならなくなることに加えて,パッケージや容器の作成代や最低ロット数の製造委託料など,少なくとも数百万円もの負担をも余儀なくされるのであって,単に形式的に承認申請が可能であったというだけで,その承認申請がない以上,本件商標の不使用について正当な理由が認められないというのは,原告に酷であるとも主張するが,原告の見込みが前記説示のとおり憶測の域を出るものではない本件において,以上の認定判断が覆されるものではない。』(判決文6頁)
残念ながら、原告たる商標権者さんの主張は認められませんでした。
そして、原告さんの請求は棄却され、商標登録を取消す旨の審決は取消されなかったのでありました。
ちなみに…
以前、商標権存続期間の更新登録出願制度があったとき、審査基準(改訂第5版)に、「正当な理由」として、
「法令による全面的禁止、許認可手続の遅延その他の公権力の発動によるもの
(例) 医薬品、医薬部外品、化粧品、医療用具等の厚生省に対する製造(輸入)承認(許可)申請手続」
と記載されていたそうです。
本日はこの辺で。
次回も見ていただける方、ぷちっと押していただけると嬉しいです。
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この記事をご覧になって、商標などに興味を持たれた方は…
■本店「商標登録出願サイ
ト」にも是非お立ち寄り下さい。
■商標亭テイクアウトコーナー
どこが知財と関係あるの?なんて聞かないでください。趣味の世界を独走中…
※注意!弁理士さんや知財部門のご担当など、クロートの方へ!
このブログでは、わかりやすくするために、正確でない表現を使ったり、はしょったり、大雑把にしてたり、…等々してますが、目くじら立てずに見逃して下さい<( )>
また、判例は、“ホットなうちに”スピード重視でご紹介しておりますので、読み間違い・勘間違い・理解間違いがあるかもしれません。疑問を感じられたらご一報いただけるとありがたく存じます<( )>
コメント
天王祭り
「天王祭り」に惹かれてつい書き込んでしまいました。判例解説は見てません、済みません(笑)。
実は、1996~2002まで東区新出来に住んでました。ということで毎年お祭りには行ってました。
現在は守山区に住んでますが、そこのマンションの理事長をやったときの副理事長が、筒井町出身で、小さい頃から山車をかつぐ方に参加しています。最近は、宰領(さいりょう)というポストまで勤めてます。伝統的行事のまとめ役は、若い子に厳しい言葉をかけながらも優しく導いています。格好いいです。
今年は行けませんでしたが、来年からまた見に行かなくては…とこの記事を読んで実感しました。
Unknown
あれ?okamotoさん、そうだったんですね!
そっかー、ひょっとしたら会ってたのかな?
ダンナと仲良く歩いているところを見られなくてよかった、90年代後半は新婚時代なので(笑)
来年から是非行ってみてください!
私は酔っ払って歩いているところを見られないよう気をつけます(え?)
天王祭り
愛知万博の際、百の山車が会場に揃いましたね。
夫々、微妙に違いがあって、且つ、壮観でした。
皆さんの意気込みが伝わってきました。
私が住んでいるところでも山車が繰り出す祭りがあって、秋に行われますね。
「天王祭り」と呼ばれるのは、7月の第四土曜日の宵と、明くる日曜の朝に行われるのがありますよ。
いつも、歩いて見に行きます。
ここは「尾張津島」です。
ご覧くださいね。
Unknown
hisashi49さん、こんばんは!
津島の「天王祭り」は有名ですよね!
ぼんぼりの船が出るやつ(…すみません、名前を忘れた)
大学時代の友人が津島の近くに住んでいてしょっちゅう家に遊びに行ってましたが、なぜか「天王祭り」には行ったことないなー
愛知県に住む者として一度は見に行かなければなりませんね!
今年は行けるかなぁ…