<平成22年(行ケ)第10102号審決取消請求事件>(判決文はこちら)
本日ご紹介する判決はかなり前にアップされたものなので「なんだ、もう知ってるよー」という方も多いかと…。
新鮮味ないですねー、グズグズしてたら遅れをとってしまいました…orz まぁ、気が向いたら読んでください。
ん?原告の代理人さん、知り合いの弁理士さんだー(「○子ちゃん」って呼ばれてたり…)。
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誰もが知っているようなシンプル英単語が商標登録されていることがありますね。
「STAR」とか「ONE」とか「FACE」とか「LOVE」とか「BALL」とか「AIGI」とか…(←いや、最後のは違うだろ)。
古い商標登録によく見られると思いますが、結構最近になってそんな商標を登録しようとしたケースが今回の事件です。
で、その商標(本願商標)はこちら。指定商品は第14類「身飾品,時計,貴金属,キーホルダー,宝石箱,宝玉及びその模造品」。
この本願商標は、下記の引用商標2、引用商標4と類似するとして、拒絶審決を受けました。それを不服とした出願人さんが原告となって、審決の取消しを求めて提訴したのが、この事件です。
引用商標2はこちら。指定商品は第14類「身飾り品(カフスボタンを除く)」、第26類「頭飾品」。
引用商標4はこちら。指定商品は第20類「家具」等。
さて、「WORLD」の語は、誰でも知っているおなじみの英単語で、それだけでは捻りを入れた感じはありませんね。判決でもそんなことを言われています。
『「WORLD」の単語は「世界」を意味する日本人にとってなじみが深く,それだけでは商標の印象が薄いのであり…』(判決文23頁)
『「WORLD」の語…日本人にとってなじみの深い英単語であって,個々の語それ自体では自他商品識別力は強くなく…』(判決文27頁)
「WORLD」の商標としての地位、危うし(笑)。
そうすると、
1)おなじみ語は、結合商標中では他の語と合わさって全体として一まとまりと見られがち、
2)おなじみ語が単独で商標としての印象が強まるのは、取引実情から識別力が強まっていると考えられるとき(セカンダリーミーニング的に)
てな感じになりますか。
少なくとも1)については、本判決でもそう言われとります(と思います with 独断)。
それでは、結合商標である引用商標2と引用商標4について、本判決ではどう判断されたのでしょう。
結合商標と言っても、引用商標2も、引用商標4も、「WORLD」が結構目立っていて、しかも他の結合語と上下段にはっきり分かれた構成になってたりしますよね。そこんところはどうだったんでしょうか。
まず、引用商標2についての判断です(判決文23~24頁、26頁)。
『「WORLD」の単語は「世界」を意味する日本人にとってなじみが深く,それだけでは商標の印象が薄いのであり,指定商品分野においてイタリア語を使用する頻度が低くないと一般に認められることも合わせると,取引者,需要者は,引用商標2の構成中の「WORLD」の文字と「collezione」の文字を一体のものとして把握することが多いと認めることができる。』
『本願商標及び引用商標の指定商品の分野に関係する者にとって,その語から「コレツィオーネ」との称呼を連想させ,全体として「ワールドコレツィオーネ」と称呼し,しゃれた語感を持つ商標との印象を与えるものということができる。この全体の称呼は短いものではないが,商標として長すぎるものでもなく,「コレツィオーネ」を切り離して引用商標2を把握することは,「WORLD」の語の前記位置づけからすれば,引用商標2それ自体の態様でみる限り,むしろ引用商標2の自他商品識別力を弱めるものといわなければならない。
そうすると,引用商標2の少なくとも下部の「WORLD」と「collezione」の文字部分は,一体として把握するのが自然であり,引用商標2の一部である「WORLD」の文字部分だけを抽出しこれを他人の商標と比較して商標の類否を判断するのは相当でない。』
『…引用商標2は片仮名の「ワールドコレツィオーネ」の表記と共に表示されるなど一連一体の商標として使用されていることが認められ,「WORLD」の部分のみが分離されて取引上使用されている事実は見当たらない。』
次に、引用商標4についての判断です(判決文27~28頁)。
『…「WORLD」の語も「ONE」の語も,それぞれ日本人にとってなじみの深い英単語であって,個々の語それ自体では自他商品識別力は強くなく,両者が合わさって「ワールドワン」との語感に加え後記のとおり「世界一」などの観念を与えるものとして,印象が強くなるものであることからすると,引用商標4は全体として1つのまとまりとして看取するものと見るのが自然である。』
『引用商標4は…商標権者…の通信販売用ウェブサイトにおいて,化粧品「ワールドワンシリーズ」の表記とともに使用されていることが認められる。』
かくのごとく、引用商標2も引用商標4も、全体として1つのまとまりとして把握するべき、と判断されたのでした。
それでは、一方の、シンプル英単語のみの本願商標について(判決文26頁)。
『本願商標と同様に「WORLD」の表記から成る表示が,アパレルメーカー(被服製造会社)である原告の営業表示として遅くとも昭和57年には全国的に広く認識されていたと認められている…』
「WORLD」、確かに広く知られてますよね~。あの「ワールド・オブ・エレガンス」の歌と共に(若い方にはわからんですね…。(「ラブ・ワールド」という題名らしいです)。
で、結論として、本願商標は、引用商標2とも引用商標4とも類似しない、と判断されたのでした。
自分的にはなかなかおもしろい事案でございました。
本日はこの辺で。
次回も見ていただけるなら、ぷちっと押していただけると嬉しいです…それだけが支えなの…
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この記事を読んでひろた興味を持たれた方は…
【執筆記事】
「知財管理」誌 VOL.60 NO.6
(並行輸入と商標権侵害 -並行輸入の抗弁における「同一人性の要件」及び「品質管理性の要件」-)
「知財産管理」誌 VOL.58 NO.5
(「腸能力」審決取消請求事件(平成19年(行ケ)第10042号 審決取消請求事件)
内容はこちらからどうぞ
【関係事件】
代理人になった事件です。負けたのでご紹介するのをためらっておりましたが、思い切って…。
平成18年(行ケ)第10367号審決取消請求事件
なお、牛木理一先生のHPで紹介いただいているので(「特許ニュース」2007年6月29日号の記事です)、そちらも併せてご覧ください~(こちらのB-27の項です)。
【ZIP FM Z-TIME BIZ】
ここのフォトギャラリーになぜかわたくしが。
見付からないよ~?→2008/07/23のところ…
※注意!弁理士さんや知財部門のご担当など、クロートの方へ!
このブログでは、わかりやすくするために、正確でない表現を使ったり、はしょったり、大雑把にしてたり、…等々してますが、目くじら立てずに見逃して下さい<( )>
また、判例・新着審決・最近の話題は、“ホットなうちに”スピード重視でご紹介しておりますので、読み間違い・勘間違い・理解間違いがあるかもしれません。疑問を感じられたらご一報いただけるとありがたく存じます<( )>
コメント
あいぎ特許事務所の弁理士、廣田さんをお招きして
https://zip-fm.co.jp/program/z_time_biz/Photo.asp?ProgramCode=z_time_biz&page=26
ありましたよ!
Unknown
おお、ありがとうございます!
固定リンクをうまく張れなくてごまかしておりました。
大変ありがたいです~ <(_ _)>