<平成22年(行ケ)第10215号 審決取消請求事件>(←勝手に第1事件、判決文はこちら)
<平成22年(行ケ)第10226号 審決取消請求事件>(←勝手に第2事件、判決文はこちら)
あいぎの引越し作業が優秀なスタッフのおかげで順調に進み、事務所側の作業が昨日一旦終わりました。順調に進んでないのは自分の机の周りだけ(汗)。一二を争うくらいアレ…な状態だったので、片付け作業が果てしない感じ。激すみません(汗)。
なお、階下の内装工事はまだ終わっていませんが、完成した後は色んなイベントを目論んだりしているのでお楽しみに!
この週末から昨日にかけては、そんなこんなで新しい知財情報にいまいちcatch upできとりません。でも「切り餅」の判決がアップされたような(平成21年(ワ)第7718号)。この「切り餅」事件については、既に色んな方が色んなブログ等で書いてらっしゃいますので、そちらをご参考に(←なんと横着い…(汗))。
自分はこのブログでひっそりと商標の無効審決取消訴訟をご紹介いたします。
■概要(かなりてきとーです)
今日ご紹介する訴訟は、下記2つの本件商標が無効審決で無効にすべきと判断されたので、その商標権者さんが原告となって提起したものです。引用商標は「ヨーグルトン」で、その商標権者である朝霧ヨールグ豚販売協同組合さんが被告となっています。
第1事件の本件商標
「ハーブヨーグルトン」(標準文字)
第2事件の本件商標
なお、実は第1事件の本件商標「ハーブヨーグルトン」に対しては異議が申立てられておりましたが、そのときは登録維持決定が出ておりました(異議2006-90139)。その後、無効審判が請求され、無効にすべきとの審決が出たわけです(。
第1事件・第2事件に関する無効審判で、原告さん(被請求人さん)は“「ハーブヨーグルトン」は一連一体で不可分である”との旨主張しておりましたが、審決では、
『商標は、その構成全体によって他人の商標と識別すべく考案されているものであるから、みだりに構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して類否判断をすることは許されないが、簡易、迅速を尊ぶ取引の実際において、各構成部分がそれらを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められない商標は、常にその構成全体の名称によって称呼、観念されず、しばしば、その一部だけによって簡略に称呼、観念され、1個の商標から2個以上の称呼及び観念が生じることがあると解されるところ、本件商標は、前述のとおり、各構成部分がそれらを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められないから、その主張は採用できない。』
とされております(無効2009-890126、無効2009-890127 )。
■裁判所の判断
そんな「ハーブヨーグルトン」vs.「ヨーグルトン」の本件訴訟ですが、裁判所が出した結論としては、第1事件も第2事件も無効審決をサポートしました。すなわち、本件商標の指定商品中、引用商標の指定商品と重複する商品についての登録を無効にすべきとする、と判断したわけです。
第1事件における裁判所の判断の理由を判決文から抜粋します(判決文11~12頁)。
『本件商標と引用商標とは,いずれも,それぞれも文字を同一の大きさ,同一の間隔で,標準文字(片仮名)により,一連に表記した商標である。
本件商標からは,「ハーブヨーグルトン」の称呼を生じるが,特定の観念を生じるとまではいえず,また,外観における特徴もない。また,引用商標から「ヨーグルトン」との称呼を生じるが,特定の観念を生じるとまではいえず,また,外観における特徴もない。
本件商標と引用商標を対比すると,本件商標を構成する9文字中の6文字からなる「ヨーグルトン」部分において共通する。そして,引用商標「ヨーグルトン」は,前記のとおり造語であることから,指定商品の取引にあたっては,強く認識され,記憶される称呼というべきである。したがって,引用商標は,称呼の観点からも,出所識別力は強い。これに対し,本件商標中の「ハーブ」は,9文字中3文字であり,ヨーグルトンと称される商品の中で,ハーブに関係する特徴を備えたものという付加的な表示と理解され,さほど重視されることはないというべきであるから,両商標は,称呼及び外観において類似するということができ,両商標とも特定の観念を生じることはないから,観念における相違はなく,両商標は,全体として類似すると解すべきである。
この点,原告は,我が国で,養豚業者や飼料会社のような一般取引業者の間において,リキッドフィーディング,発酵リキッドフィーディングによる豚の飼育方法があることは周知であったことに照らすと,「ヨーグルトン」の語は,「ヨーグルト,或いは,ヨーグルト状の発酵飼料を用いて育成した豚」という観念を生じさせ,「ヨーグルトン」部分の識別力は弱いと主張する。
しかし,本件全証拠によるも,出願時及び査定時において,本件商標又は引用商標に接する食肉,肉製品の需要者の間において,発酵リキッドフィーディングに関する知識を有していたこと,及び「ヨーグルトン」の語について,発酵リキッドフィーディングを用いて飼育した豚であると広く理解されていたことを認めることはできない。したがって,本件商標の「ヨーグルトン」部分は,発酵リキッドフィーディングを用いて飼育した豚を指す普通名詞であるから,特徴的な部分ではなく,本件商標の「ハーブ」部分のみが特徴的な部分であるとする原告の主張は,採用できない。』
第2事件の図形商標の方も、称呼類似を理由に、引用商標と類似と判断されました(判決文14~16頁)
■コメント
朝霧ヨールグ豚販売協同組合さんの「ヨーグルトン」は、“ヨーグルト状に加工した特別な飼料を食べて育った豚さん”のことだそうです(詳しくは朝霧ヨールグ豚販売協同組合さんのHPにて)。
一方、「ハーブヨーグルトン」の方の豚さんも、同じように発酵リキッド飼料を食べて育つようです。ただ、その飼料にはハーブが入っているとのこと(詳しくは原告さんのHPにて)。
ネット検索してみると、2006~2007年頃の記事で“「ヨーグルトン」(by朝霧ヨールグ豚販売協同組合)を真似した「ハーブヨーグルトン」なる他県出願人の商標の登録を特許庁が認めてしまった”との論調のものがヒットしますね…。ううむ。
引用商標と本件商標の出願日には約4年の開きがあるわけですか…。
本日は以上です!
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この記事を読んでひろた興味を持たれた方は…
【執筆記事】
「知財管理」誌 VOL.60 NO.6
(並行輸入と商標権侵害 -並行輸入の抗弁における「同一人性の要件」及び「品質管理性の要件」-)
「知財産管理」誌 VOL.58 NO.5
(「腸能力」審決取消請求事件(平成19年(行ケ)第10042号 審決取消請求事件)
内容はこちらからどうぞ
【関係事件】
代理人になった事件です。負けたのでご紹介するのをためらっておりましたが、思い切って…。
平成18年(行ケ)第10367号審決取消請求事件
なお、牛木理一先生のHPで紹介いただいているので(「特許ニュース」2007年6月29日号の記事です)、そちらも併せてご覧ください~(こちらのB-27の項です)。
※注意!弁理士さんや知財部門のご担当など、クロートの方へ!
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