ジュンコウ vs. ジュンコウ が非類似なわけ

<平成22年(行ケ)第10339号 審決取消請求事件(商標)>(判決文はこちら

 昨日、東京のある中国料理屋さんで紹興酒を頼んだ際に「氷砂糖をください」と店長さんに言ったら、「おいしい紹興酒だから氷砂糖は入れずに飲んでください」と怒られたひろたです。すんません、いつも安酒ばかりでと、なぜか謝るひろたです。
 
 さて、今日は、審決取消訴訟のご紹介をいたします。

 本件は、下記の本願商標が、4(1)11で拒絶審決を受けたので、出願人さん(審判請求人さん)が原告となって審決の取り消しを求めて提起した訴訟です。
 
■本願商標はこちら(指定商品:第29類「コラーゲンを主原料とする錠剤状・カプセル状・顆粒状・粉末状・液状・ゼリー状・ブロック状・飴状・軟カプセル状・粒状・スティック状又はペースト状の加工食品」等の健康食品)
 

 訴訟の争点は、上記本願商標が、下記引用商標1~3と類似するか否かでした。

 引用商標1(指定商品:第32類「「コンドロイチン・グルコサミン・コラーゲンを含有する清涼飲料,清涼飲料,果実飲料,ビール製造用ホップエキス,乳清飲料,飲料用野菜ジュース」
 

 引用商標2(指定商品:第5類「乳幼児用粉乳」等)
 うるおう(標準文字)

 引用商標3(指定商品:第29類「コラーゲンを主材料とする粒状・粉状・顆粒状・カプセル状・スティック状・液状・クリーム状・ペースト状・錠剤状とした加工食品」等)
 

■裁判所の判断

 裁判所の判断を結論からいうと、本願商標は、引用商標1~3のいずれにも類似しないとして、審決を取り消すべき旨の結論を出しました。
 ほぇー

 では、裁判所はどのようにして、本願商標と引用商標1~3を非類似と判断したのでしょうか。
 
○まずは引用商標1との対比から。
 
 裁判所は、引用商標1の外観について、『1文字分の大きさがほぼ同一なため,文字数の多い下段の「JUNKOU」が横に大きく広がっており,全体として台形状に見える結合商標である。』とした上で、
 『両商標の外観が共通するのは,その構成部分に漢字2文字の部分を有し,そのうちの一文字が「潤」であることのみであって,全体的に観察すると,両商標の外観は著しく異なる。』と判示しています(判決文20~21頁)。
 
 そして、特筆すべき?は称呼についてです。
 本願商標の称呼についてはこのように判示しております。
 『本願商標は,「本草製薬の」「うるおう」「潤煌」という複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるところ,そのうち「潤煌」の文字の部分は,他の構成部分と比較してひときわ大きく表示され,しかも「潤煌」という文字自体が成語ではなく一種の造語と解されることから,この部分が取引者・需要者に対し強い印象を与えるようにもみえるが,一方で「本草製薬の」の部分は,一見して出願者の商号若しくは屋号であることが明らかであるから,この部分は極めて顕著な出所識別力を有する部分であり,さらに「うるおう」の部分は,文字こそ小さいが全体の構成の中央部分に赤地に白抜きで表示されているため極めて目立つ部分といえる。したがって,本願商標においては,「潤煌」の部分が他の構成部分に比して取引者・需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるとまではいえず,また,本願商標はそれ以外の部分から出所識別標識としての称呼が生じないと認められる場合ともいえないから,商標の類否判断において,ことさら「潤煌」の部分のみを抽出しこの部分だけを他人の商標と比較してその類否を判断することは許されないというべきである
 以上によれば,本願商標からは,「ホンゾウセイヤクノウルオウ」若しくは「ホンゾウセイヤクノジュンコウ」の称呼が生じるというべきである。
』(判決文22~23頁、下線は私が付しました)
 結合商標の“原則、一部を抜き出しちゃいかん”基準なわけですが…。そういうわけで、本願商標と引用商標1の称呼は非類似と判断されました。

 また、本願商標と引用商標1・3に関する取引実情についても触れています。
 『原告は,平成20年1月より,本願商標を使用したヒアルロン酸及びコラーゲン配合の健康食品(原告商品)の販売を開始したこと,その商品名は「本草製薬の潤煌」であり,実際の取引において原告は「潤煌」の部分につき「ウルオウ」と称呼して原告商品を販売していること(したがって,電話による取引においても「ホンゾウセイヤクノウルオウ」若しくは「ウルオウ」という称呼で取引されているものと推認される。),原告商品は1包2グラムの粉末であり,20包入りと60包入り等の箱で販売されているが,その箱の表面中央及びスティック状の各包の表面に本願商標が使用されており,また,インターネット上の広告においても,本願商標が中央に大きく表示された原告商品の箱の写真を掲載し,商品名を「本草製薬の潤煌」と明記して販売している
 『引用商標1のうち「潤甦」の文字が付された商品は,その商標権者が販売する「コンドロビー濃縮液」と称する720ミリリットル瓶(甲21の1,2)に詰められた清涼飲料水(コンドロイチン硫酸含有食品)であり,瓶のラベル及びその瓶を収納する箱に,黒い縁取りのある金色の文字で「潤甦」と大きく表示され,その上段に小さく平仮名で「じゅんこう」と表示されており,その全体的な表記はほぼ引用商標3と同一であることが認められる。
 『そうすると,本願商標が使用されている原告商品と引用商標1及び3が使用されている商品とは双方とも健康食品であるという点では共通性があるものの,商品の構成及びその販売形態は著しく異なるものと認められるから,実際の取引においては,商品の出所の誤認混同をきたすおそれがあるとはいえない。』(判決文23~24頁)
 “実際の取引においては”ね…
 
 以上より、本願商標と引用商標1は、< br /> 『外観が著しく異なり,両者とも特定の観念を生じないから観念において比較することができず,称呼も類似するとはいえない上,上記取引の実情をも考慮して取引者・需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して判断すると,両者は類似の商標ということはできないというべきである
 と判断されました(判決文24頁)。

○次に引用商標2との対比です。

 本願商標と引用商標2は、観念について一部共通する部分があり、称呼についても一部重なる部分があるものの、全体的には類似するとはいえず、特に外観が著しく異なるから、取引者・需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して判断すると、両者は類似の商標ということはできない、と判断されました(判決文24~26頁)。

○最後に引用商標3との対比です。

 裁判所は、本願商標と引用商標3の外観について、
 『本願商標と引用商標3の外観は,その構成の中で大きな部分を占めるのが漢字2文字であり,そのうちの1文字がいずれも「潤」である点で共通するが,もう1文字につき前者が「煌」であり,後者が「甦」であって全く共通性のない文字であるばかりか,前記(2)ア(ア) のとおり,本願商標には識別力のある「本草製薬の」及び赤地の四角形内に白抜きの「うるおう」の文字が統一的にバランスよく配されているから,全体的に観察すると,両商標の外観は異なるというべきである。』と判示しています(判決文26頁)。

 そして称呼については、上記のように本願商標が「ホンゾウセイヤクノウルオウ」又は「ホンゾウセイヤクノジュンコウ」の称呼が生じると判断していることから、引用商標の称呼「ジュンコウ」又は「ジュンソ」と類似しているとまではいえない、と判断しています。

 以上より、本願商標と引用商標3は、
 『本願商標と引用商標3とは,外観が異なり,両者とも特定の観念を生じないから観念において比較することができず,称呼も類似するとはいえない上,前記(2)エで述べた実際の取引の実情をも考慮して取引者・需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して判断すると,類似の商標ということはできないというべきである
 と判断されました(判決文28頁)。

 本日は以上です!次回も見ていただけるならぷちっと押してくださいな(。-_-。)/
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【執筆記事】
  
「知財管理」誌 VOL.60  NO.6
  (並行輸入と商標権侵害 -並行輸入の抗弁における「同一人性の要件」及び「品質管理性の要件」-)

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   (部分意匠に関する判例研究 -類否判断を中心に- 包装用容器事件)
  字数制限が厳しかったので尻切れトンボ気味ですが…

 【関係事件】
 代理人になった事件です。負けたのでご紹介するのをためらっておりましたが、思い切って…。
 
平成18年(行ケ)第10367号審決取消請求事件
 なお、牛木理一先生のHPで紹介いただいているので(「特許ニュース」2007年6月29日号の記事です)、そちらも併せてご覧ください~(こちらのB-27の項です)。

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 ここのフォトギャラリーになぜかわたくしが。
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