称呼は共通してるけど非類似、だって取消されたとかあったし

<平成22年(行ケ)第10171号審決取消請求事件(商標)>(判決文はこちら

 本日は、本願商標につき4条1項11号で拒絶審決が出されたので、その審決の取消しを求めて提起された事件を取り上げます。
 
 本願商標は国際登録された商標です。
 指定役務は、第39類「旅行代理店による役務の提供」等、第43類「ホテルの予約の取次ぎ」等。
  
 一方、引用商標はこちら(登録第4558717号)。
 指定商品・役務のうち、関連があるのは第42類「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ」等。ただし、「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ」は、不使用取消審判で取消審決が確定しています(取消2010-300494号、H22.8.31審決確定)。
 

 うーん、一見すると、拒絶されたのもわかる…という感じですか?不服審判の審決での判断を引用します(不服2009-650090 )。
 『本願商標と引用商標とは、外観において相違することを考慮してもなお、両商標の要部と認識される「BOOKING」及び「Book-ing」の文字より生ずる「ブッキング」の称呼及び「予約」の観念を共通にする類似の商標といわなければならず、かつ、本願商標の指定役務は、引用商標の指定役務と同一又は類似の役務を包含するものである。
 両商標は類似するとの判断ですね。
 ちなみに、不服審判のこの審決が出た後に、引用商標に対する上記取消審判が請求されたのでした。

 それでは、裁判所は、両商標の類否につき、どのように判断したのでしょうか。判決文を抜粋します(36頁)。
 『以上の(1)ないし(4)からすれば,本願商標と引用商標とは,外観は相当異なり,観念は「予約」との部分で一部共通し,称呼は原則として「ブッキング」との共通部分があり,これらの諸要素に,前述した取引の実情,とりわけ不使用取消審判により認められた平成19年5月21日からの引用商標不使用の実情を総合考慮すると,本件審決時(平成22年4月19日)において本願商標と引用商標とが類似するとはいえないと認めるのが相当であり,本願商標は商標法4条1項11号には該当しないというべきである。
 おわ、両商標は非類似との判断ですね。
 どうやら取引実情が効いているようで。それに関して述べている箇所を抜粋します(判決文35~36頁)。
 本願商標について。
 『以上の事実を総合すれば,確かに,原告による東京支社の設立時期や日本国内向けのウェブサイト上での営業開始時点等が必ずしも明らかではないものの,遅くとも本願商標にかかる審決時(平成22年4月19日)には,本願商標には一定の信用が形成されていたものと推測される。
 引用商標について。
 『一方,前記1のとおり,引用商標に係る商標登録(登録第4558717号)は,所定の指定役務のうち第42類「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ」につき,その登録を取り消す旨の平成22年8月31日付け審決がなされ,確定したのであるから,引用商標の商標権者たる株式会社ほるぷ出版ないし株式会社ブッキングは,予告登録の3年前たる平成19年5月21日から,上記指定役務に関し,引用商標を使用していなかったものと認められる。

 本日は以上です!
 名古屋開府400年祭もあと少し!師走でお忙しい中、また見ていただけるのであれば
ぷちっと押してね…
 ↓↓↓
 
**************************
名古屋開府400年クロージングセレモニー迫る!
公式サイトはこちら

名古屋のゆるキャラをよろしくね!
はち丸くん&かなえっち      だなも                 エビザベス
     
※名古屋市さんのご好意により画像データを提供していただきました。
**********************************
この記事を読んでひろた興味を持たれた方は…

【執筆記事】
  
「知財管理」誌 VOL.60  NO.6
  (並行輸入と商標権侵害 -並行輸入の抗弁における「同一人性の要件」及び「品質管理性の要件」-)

  「知財産管理」誌 VOL.58 NO.5
  (「腸能力」審決取消請求事件(平成19年(行ケ)第10042号 審決取消請求事件)
     内容は
こちらからどうぞ

【関係事件】
 代理人になった事件です。負けたのでご紹介するのをためらっておりましたが、思い切って…。
 
平成18年(行ケ)第10367号審決取消請求事件
 なお、牛木理一先生のHPで紹介いただいているので(「特許ニュース」2007年6月29日号の記事です)、そちらも併せてご覧ください~(こちらのB-27の項です)。

【ZIP FM Z-TIME BIZ】
 ここのフォトギャラリーになぜかわたくしが。
  見付からないよ~?→2008/07/23のところ…


※注意!弁理士さんや知財部門のご担当など、クロートの方へ!
  このブログでは、わかりやすくするために、正確でない表現を使ったり、はしょったり、大雑把にしてたり、…等々してますが、目くじら立てずに見逃して下さい<(   )>
  また、判例・新着審決・最近の話題は、“ホットなうちに”スピード重視でご紹介しておりますので、読み間違い・勘間違い・理解間違いがあるかもしれません。疑問を感じられたらご一報いただけるとありがたく存じます<(   )>

コメント

  1. 【商標権:審決取消請求事件(行政訴訟)/知財高裁/平22・12・14/平22(行ケ)10171】原告:ブッキング.コム リミテッド(Booking.com Lim…
    事案の概要(by Bot): 本件は,原告が,英国において,下記本願商標につき国際登録出願をし,同商標につき国際登録がなされたところ,締約国官庁たる日本国特許庁から拒絶査定を受けたので,これに対する不服の審判請求をしたが,請求不成立の審決を受けたことから,その…

  2. 【商標権:審決取消請求事件(行政訴訟)/知財高裁/平22・12・14/平22(行ケ)10171】原告:ブッキング.コム リミテッド(Booking.com Lim…
    事案の概要(by Bot): 本件は,原告が,英国において,下記本願商標につき国際登録出願をし,同商標につき国際登録がなされたところ,締約国官庁たる日本国特許庁から拒絶査定を受けたので,これに対する不服の審判請求をしたが,請求不成立の審決を受けたことから,その…

  3. Unknown
    審決後に引用商標に不使用取消審判を請求することも意義があるということでしょうか?審決時をもって判断するのではないのでしょうか?なぜ審決後に取消審判を請求するのか理解できません。

  4. Unknown
    拒絶査定不服審決の謄本送達がなされたのがH22.4.28のようですので、取消審判請求日(H22.5.10)では審決は確定していなかったのではないでしょうか(出訴期間中、だからこそ本件審決取消訴訟を提起することができたのでは…)。なお、この辺りのことは判決文P.29-30の被告(JPO)の反論中でも触れられています。

    ご質問の趣旨に沿わない回答になっていましたら申し訳ございません。おかしいようでしたら再度ご質問くださいませ。

  5. Unknown
    コメントいただきありがとうございました。

    拒絶査定不服審決の謄本送達がなされたのがH22.4.28のようですので、取消審判請求日(H22.5.10)では審決は確定していなかったのではないでしょうか(出訴期間中、だからこそ本件審決取消訴訟を提起することができたのでは…)。なお、この辺りのことは判決文P.29-30の被告(JPO)の反論中でも触れられています。

    ご質問の趣旨に沿わない回答になっていましたら申し訳ございません。おかしいようでしたら再度ご質問くださいませ。

  6. Unknown
    コメントありがとうございました。
    4条1項11号の判断は審決時を基準とされると思っていました。
    本件では、取消審判請求がされたのは審決(H22.4.19)よりあとのH22.5.10です。
    ですので、取消審決が確定して請求登録時まで遡及して消滅したとしても(54条2項)、審決時(H22.4.19)には引用商標は存在していたので、4条1項11号は解消しないのでしょうか?
    E-Access事件は、「審決取消訴訟時の分割にともなう準特施30条の補正は遡及効がないから4条1項11号は解消しない」と理解していますが、ブッキング事件もこれと同様に考えられないのでしょうか?

  7. Unknown
    おはようございます!やはりコメントいただいておりました、ありがとうございます。

    はい、そうですよね、後からご質問の意図を取り違えてえていたことに気付き、自分に「アホー」と激しく突っ込みを入れておりました。
    再度コメントいただくのをお待ちしておりました!申し訳ございません(汗)。

    今回の判決中で述べられているように(判決文p.36辺り)、不服審判審決時の取引実情(具体的には、引用商標が取消審判予告登録3年前から使用されてなかったという事実)を客観的に証明するのに、取消審決が有効に働きました。この点について言えば、取消審決確定効発生時期(54条2項)は二の次になると思います。
    ただし、原告さんは、それを意図して取消審判を請求したわけではないようですね…。この辺りの経緯は判決文p.13~辺りに記載されています。

    こんな回答で、ご質問の趣旨に沿っているでしょうか?
    まだ「アホか」と思われたら、再度ご質問ください、申し訳ございません(汗)。

  8. Unknown
    ご回答ありがとうございます。
    確かに判決文P36を読むと、引用商標が取消審判予告登録3年前から使用されてなかったという事実を客観的に証明するのに、取消審決が有効に働いたようですね。
    でもおっしゃるとおり、P16にもあるように原告は「取消審判により引用商標から類似するすべての指定商品/役務は取り消されているので引用商標との指定商品/役務は非類似となっている。」と述べていることから、類否判断の基準時を誤っているとしか思えないのですが。(審決時を基準に判断することで正しいですよね??)

    この判決は裁判所の審理範囲を超えたものとはならないのでしょうか?

  9. Unknown
    おはようございます!
    コメントありがとうございました。

    補正と異なり、不使用で取消された場合の効果は審判請求登録日から発生すると思いますので(54(2)、本件では不服審判の審決時より後)、判決文p.30上半分のJPOの反論通りではないでしょうか。

    …というコメントでご質問の趣旨に沿っているでしょうか?

  10. Unknown
    おはようございます!
    コメントありがとうございました。

    補正と異なり、不使用で取消された場合の効果は審判請求登録日から発生すると思いますので(54(2)、本件では不服審判の審決時より後)、判決文p.30上半分のJPOの反論通りではないでしょうか。

    …というコメントでご質問の趣旨に沿っているでしょうか?

    (なお、自分の最初のコメント(12/22分)があまりに恥ずかしいので、削除させていただきました。申し訳ございません)

タイトルとURLをコピーしました