昨日いただいたコメントのご質問の意図を完全に取り間違えていたことに気付き、自分に激しく突っ込みー(汗)。早朝の寝ぼけた頭で慌てて回答したのがいかんですね、すみませんでした。
さて、あっという間に木曜日。毎週こんな調子を重ねていたら、あっという間に年末です。信じられん…
では、意匠の新着審決のご紹介、張り切っていってみましょう…。
■■■意匠新着審決【3条1項柱書系】
●不服2006-16010
意匠に係る物品「遊技機の液晶表示器」
本願意匠
(変化前)
(変化後)
本願意匠(意願2003-30727)は3条1項柱書の工業上利用することができる意匠に該当すると判断されました。
『「意匠に係る物品の説明」の記載、すなわち、「本物品は、パチンコ機などの遊技機の遊技盤に組み込まれる液晶表示器であり、・・・図柄変動動作が終了する以前に、別の遊技球が図柄始動口に入賞する・・・場合には、図柄変動動作が保留されることになり、この変動保留数は、遊技者に認識できるよう表示される必要がある。・・・本意匠に係る液晶表示器では、その右側位置に、変動動作とは無関係に変動保留数を特定する複数の部分を設けており、該当部分が着色又は点滅等されることで、変動保留数が特定される。」との記載によれば、本願意匠の意匠登録を受けようとする部分の用途及び機能は、変動保留数を遊技者に認識できるようにするための表示の区域部分を特定するものと認められる。』
『本願意匠の意匠登録を受けようとする部分の形態は、表示の区域部分の形態であって、ゲーム開始前に現れる形態、いわゆる初期画面である。そして、その形態は、(1)変動保留数が特定表示される前の表示の区域部分であるから、遊技機の液晶表示器という物品にとって本来の用途及び機能の一つを構成する要素であり、(2)物品自体の機能により表示されるものであり、(3) 「変化前」及び「変化後」の形態的関連性を有する特定した形態である。
なお、意匠に係る物品の説明にある「着色又は点滅等される」との記載は、本願意匠の変化の態様を表したものではなく、本願物品の使用状態の説明に過ぎない。』
『したがって、本願意匠は、具体的に特定したものであり、原審の「意匠登録を受けようとする部分内の数字(通称:変動保留数)が1から4までの変動する数字で不明確であり、また当該部分が「着色又は点滅等される」ということで、意匠を特定することができず、未だ具体的でない」との認定は妥当ではない。
また、本願意匠の形態は、物品自体の機能により表示されるものであり、原審の「物品の外からの信号等の支配を受けるものであり、その物品自体の有する表示機能によって表示されるものではない」との認定は妥当ではない。』
■■■意匠新着審決【3条1項3号系】
●無効2010-880003
意匠に係る物品「飲料容器用栓体」
本件意匠(登録第1369917号)と引用意匠(サーモス(株)の商品,「スポーツジャグFPC-1900」の栓体部分)は非類似と判断されました。
*判断主体: 言及なし
*公知意匠の参酌: 共通点につき『甲第5号証…から看取されるように,この種の意匠の属する分野においては普通にみられるありふれた形態であるので,本件登録意匠および甲第1号証意匠のみにみられる特徴ではない』
本願意匠
引用意匠
『相違点(a)(本体部の直径:高さの比率)については,意匠全体の比率に関することであるから,類否判断する上で軽視できない点であり,
(b)(本体部の上面の形状)については,この種の意匠はやや斜め上方から観察されることが多いことから,…,類否判断に大きな影響を及ぼすものであり,
(c)(本体部の側周面部の縦長の卵形の凸部の有無)については,…,一定の視覚的効果があるものであるということができるので,類否判断にある程度の影響を及ぼすものというべきであり,
(d)(キャップのヒンジ部の位置)については,…,取付け位置の相違によって,本件登録意匠のキャップ部が 長い印象を与えるものとなり,相対的に周囲のキャップ部以外の占める部分のとの割合に変化が生じ,キャップ部の視覚的効果に一定の影響を及ぼしており,また,キャップ部は長い方が掴み易く,開いて飲料を飲む際にはキャップ部が邪魔にならないことから利便性が向上するなど,甲第1号証意匠とは異なる一定の影響を及ぼしていることから,類否判断上軽視できるものではなく,
(e)(キャップ部の形状)については,この種の意匠においては,飲料を飲む際にはキャップ部を見て,これを手で開けて飲むものであり,また,キャップ部が円盤状本体部から突出して形成されていることから,注目され易い部位における相違であって,キャップの全体形状は甲第5号証?甲第9号証とも異なる態様であり,ありふれた態様であるとは言えず,その上面における小楕円形状の凹部および小円形状の凹陥部の有無は,注目される部位における相違であるから,類否判断に大きな影響を与えるものであり,
(f)(キャップ部の厚み)については,わずかな相違ではあるが,…,無視することは出来ない相違であり,
(g)(開閉ボタン部)については,開閉ボタン自体の形状はそれほど大きな相違はないが,それをロックする態様には大きな相違があり,使用状態時には必ず注目する部分であるから,類否判断に与える影響は大きいというべきである。
(h)(円盤状本体部上面に形成された飲み口部,ねじ切り部および栓部)については,…,この種の意匠においては,飲料を飲む状態と,キャップ部を閉めた状態のいずれも意匠の創作ではあるものの,両意匠における,飲み口部,ねじ切り部および栓部の具体的態様が意匠全体に占める創作的価値を考慮すると,甲第1号証意匠の同部が不明であったとしても,類否判断に大きな影響を与えるものではないということができる。なお,被請求人が提出した乙第9号証を参照する限り,「スポーツジャグFPC-1900」の栓体の飲み口部,ねじ切り部および栓部が格別顕著な特徴があるものであるとは認められないことからも類否判断に大きな影響を与えるものではないことが理解される。』
●不服2010-8710
意匠に係る物品「はさみ」
本願意匠(意願2008- 18417)と引用意匠(意匠登録第1049926号)は非類似と判断されました。
*判断主体: 言及なし
*公知意匠の参酌: なし
本願意匠
引用意匠
『上記一致点(両はさみ片の柄部の軸部分について連結軸を超えてからは放物線の輪郭を形成するように半島状に突き出すような形態とした点)は,はさみ全体からみれば、両はさみ片の柄部を覆う樹脂製カバー部における先端部のみにみられる部分的な一致点であって,その部分的な点が一致することのみを以て,両意匠が類似するとするほど格別な特徴とはいえない。
一方,相違点のうち,とりわけ,直線状はさみ片の細長形指入れ穴を取り囲む細長指入れ壁を斜め筒状に形成し,S字状はさみ片の丸形指入れ穴を取り囲む円形指入れ壁を細長指入れ壁と同方向に斜めに傾斜させた筒状に形成し,さらにこの斜め筒状円形指入れ壁を細長形指入れ壁に近接して寄り添わすようにしている点,そして,この点を強調するように,S字状はさみ片の円形指入れ壁の壁面湾曲形状を連結軸の近くにまで長く延ばすように形成している点は,引用意匠とは異なる本願意匠の独特な特徴をよく表しているものであり,また,意匠全体の略半分を占める把持部における相違であることから,僅かな相違とはいえないものであり,これらの類否判断に及ぼす影響は大きいということができる。』
■■■意匠新着審決【3条2項系】
●不服2010-5021
意匠に係る物品「エレベータの乗り場用操作盤」
本願意匠(意願2009-7215)は、引用意匠1~5(意匠登録第0884739、意匠登録第1297829号、意匠登録第1304251号、意匠登録第1308937号、意匠登録第1196484号)に基づき容易に創作できた意匠とはいえないと判断されました。
*公知意匠の参酌: なし
本願意匠
引用意匠1
引用意匠2
引用意匠3
引用意匠4
引用意匠5
『上記各意匠のどれにも本願意匠の前面操作パネルの鍔状や,同等の表示部と操作部の区画割り態様,裏面の四周に印刷を施した透明材よりなる表示部の具体的構成態様などが表されておらず,それらの態様が異なる。
そうすると,操作ボタン部と表示部の態様に,部分的に共通する点があったとしても,全体として本願意匠の形状にまとめ上げることは,一定の創作行為があったと言わざるを得ず,これら5つの意匠を基に容易に想到することができたとは言えない。』
本日は以上です!
表示器、ほぇーでした…
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【執筆記事】
「知財管理」誌 VOL.60 NO.6
(並行輸入と商標権侵害 -並行輸入の抗弁における「同一人性の要件」及び「品質管理性の要件」-)
「知財産管理」誌 VOL.58 NO.5
(「腸能力」審決取消請求事件(平成19年(行ケ)第10042号 審決取消請求事件)
内容はこちらからどうぞ
【関係事件】
代理人になった事件です。負けたのでご紹介するのをためらっておりましたが、思い切って…。
平成18年(行ケ)第10367号審決取消請求事件
なお、牛木理一先生のHPで紹介いただいているので(「特許ニュース」2007年6月29日号の記事です)、そちらも併せてご覧ください~(こちらのB-27の項です)。
※注意!弁理士さんや知財部門のご担当など、クロートの方へ!
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