意匠新着審決【3条1項3号系】【判定系】【10条系】【3条2項系】

 昨日のうなぎ商標の件に絡んで所長がアホな(?ww)質問をしてきたので、またネタにしてアップいたします。お楽しみに~
 
 さて、今日は金曜日、意匠の新着審決をご紹介いたします。張り切っていってみよー!

■■■意匠新着審決【3条1項3号系】【判定系】【10条系】

●不服2009-19262  
意匠に係る物品「ブレードヒューズ」

本願意匠(意願2008-18136)と引用意匠(意匠登録第1139245号、ヒューズ)は非類似と判断されました。
*判断主体: 需要者
*公知意匠の参酌: 『共通点の態様のうち、略横長直方体状の本体部の上部に薄い板状の蓋部を設けて構成され、正面側と背面側の端子が突出していない中央部分を矩形状の膨出部としたハウジング部で端子部を覆い、本体部下方の左右に2本の板状端子をそれぞれ露出して設けた態様は、…この種のヒューズの分野においては、他にも同様の本体部と蓋部を設けたものは多数認められ…

本願意匠

引用意匠

 『差異点(a)及び(b)に係る態様は、端子部の構成比と外形状であって、需要者の注意を強く惹くもので、その差異は、両意匠の部分の類否判断に重大な影響を与えるものといえる。差異点(c)ないし(e)に係る態様も、差異点(a)及び(b)の端子部の差異に係る態様と相俟って、両意匠の部分の類否判断に影響を与えるものであるから、これらの差異点に係る態様が相乗して生じる意匠的な効果は、両意匠の部分の類否判断を左右するに十分のものであり…
 なお、差異点はこちら。
 『(a)各端子の中央部分の横幅に対する本体部の横幅の比が、本願意匠は、約1:3.19で太いのに対して、引用意匠は、約1:3.83でやや細い点、(b)端子部について、本願意匠は、正面視左右辺の上方が外側に拡がり、倒台形状部分を有し、その下側が直線状であるため、全体がやや内側寄りで、中央の間隔が狭いのに対して、引用意匠は、左右の辺は上下が直線状であり、左右端部寄りに設けられているため、中央の間隔が広い点、(c)本体部の底面形状が、本願意匠は、隅丸状であるのに対して、引用意匠は、角張っている点、(d)本体部の底面寄り付近について、引用意匠は、背面側に浅い切欠部を設け、正面側に底面の嵌合部がわずかに横長長方形状に見えているのに対して、本願意匠は、そのような部位が見られない点、(e)各端子の下端部の形状が、本願意匠は、傾斜部が短く下端部近くまで太いのに対して、引用意匠は、傾斜部が長く、下端部が先細状である点
 ※ちなみに本願は、当初、ブレードヒューズとブレードヒューズ用端子の2つの意匠が表されているとして7条違反とされていましたが、補正によりブレードヒューズ用端子の図面が削除され、7条違反が解消しています。
 ※また、不服2009-19263でも、同出願人が、上記引用意匠1を引用されて拒絶査定を受けたブレードヒューズの類否につき争っています。

●判定2010-600056   
意匠に係る物品「包装用容器」

イ号意匠は、本件意匠(登録第1287490号)及びこれに類似する意匠の範囲に属すると判断されました。
*判断主体: 需要者・看者
*公知意匠の参酌: 本件登録意匠の特徴の認定において、公知意匠を参酌

本件意匠

イ号意匠

 『本件意匠は…商品収納部分が形成されない非収納部分については…上縁部から下縁部まで山形状に突出させた態様も、その山形状を平面視略略逆への字状の山形状とした態様も存せず、新規な創作部分というほかなく、本件登録意匠の特徴というべきである。そしてこの態様では、正面側容器体の商品収納部ではない前面部分を山形状に立体感を持たせるとともに、その頂部部分を突条ラインとしているので、帯状面状部と幅広面状部が明確に区分されることとなり、それぞれ弧状凸面と弧状凹面という面の違いも相まって、商品収納部の背景部として埋没することなく独自の視覚効果を発揮している。
 すなわち、帯状面状部は突条ラインまで急角度で立ち上がるので面積は小さくても視覚を惹き付ける効果があり、幅広面状部は面積は大きくても弧状凹面なので突条ラインから後退していく印象を与えるが、需要者の注意を惹かねばならない商品収納部を目立たせる効果がうかがわれる態様となっており、本件登録意匠は、帯状面状部も幅広面状部も共に需要者の注意を惹く態様にまとめているといえ、「需要者が商品の全体形状を把握し易く、かつ、台紙に記載された商品名や商品情報、商標等が瞬時に把握できるようにブック型の容器形状とすることをコンセプトとした」と主張する請求人の創作意図がよく表れている。

 『一致点は、基本的構成態様をなすものであり、その態様自体が、この種意匠分野では今までにない本件登録意匠の独自の特徴であるのだから、イ号意匠は本件登録意匠の特徴をそのまま表しているとの印象を見る者に与え、看者に共通の美感を起こさせるから、類否判断に支配的な影響を及ぼすものといえる。
 なお、一致点はこちら。
 『(A)基本的構成態様について、正面視の全体形状が縦長長方形状であり、上縁部から下縁部まで一定の高さで正面側(前面側)に山形に突出させたもので、山形頂部をなす突条ラインは正面視左辺寄りに設けられ、平面視形状は略への字状をなし、突条ラインの左側は、正面視、細長帯状の縦長長方形状(以下、「帯状面状部」という。)で、外側に湾曲した弧状凸面として形成され、突条ラインの右側は、正面視、幅広面状の縦長長方形状(以下、「幅広面状部」という。)で、内側に湾曲した弧状凹面として形成されているので、突条ラインは弧状凸面と弧状凹面の境界でもあり、全体を透明とした態様である。
 (B)具体的構成態様について、帯状面状部の左側端縁からの立ち上がりはやや急角度であり、幅広面状部の右側端縁からの立ち上がりはごく緩い角度であって、幅広面状部は富士山の裾のような緩斜面状に形成されており、突条ラインをなす帯状面状部と幅広面状部との連結部が鈍角に形成された態様である。

●不服2010-14042   
意匠に係る物品「宝石」

本願意匠(意願2009- 7494)と引用意匠(意匠課公知資料番号第HH18340133号)は非類似と判断されました。
*判断主体: 看者
*公知意匠の参酌: 『共通点の態様のうち、クラウン部の中央のテーブル面に円形に近い正多角形を設け、その外周に多数の菱形と三角形を配した態様は、両意匠に共通する特徴ではあるが、この種の宝石のカットの分野においては、従来からラウンドブリリアントカットは広く知られた態様…』

本願意匠

引用意匠

 『差異点(b)及び(c)に係る態様は、パビリオン部の星形部や底面中央頂部の逆六角錘形状の面取りの有無であって、パビリオン部全体の視覚的印象を相違させ、看者の注意を強く惹くもので、その差異は、両意匠の類否判断に重大な影響を与えるものといえる。差異点(a)に係る態様も、パビリオン部の差異に係る態様と相俟って、両意匠の類否判断に影響を与えるものである。差異点(d)及び(e)に係る態様については、それらのみではいずれも両意匠の類否判断に与える影響は小さいが、差異点(a)ないし(c)に係る態様と相俟って、両意匠の類否判断に影響を与えるものであるから、これらの差異点に係る態様が相乗して生じる意匠的な効果は、両意匠の類否判断を左右するに十分のものである。
 ちなみに差異点はこちら。
 『(a)クラウン部のカット面について、本願意匠は、中央が12角形で、その周囲に12個の菱形状と36個の三角形状の面を設けているのに対して、引用意匠は、中央が10角形で、その周囲に10個の菱形状と30個の三角形状の面を設けている点、(b)パビリオン部の星形部について、本願意匠は、6本の矢による6角星形で、各矢の間が4つの略三角形状の面に分割されているのに対して、引用意匠は、10本の矢による10角星形で、各矢の間は2つの面に分割されている点、(c)パビリオン部の底面中央頂部(キューレット部)について、本願意匠は、6角星形の矢が分かれる部分に放射方向に直交する稜線を設けて逆六角錘形状の面取りを設けているのに対して、引用意匠は、10角星形の矢が分かれるまでの面積が広いうえに、面取りを設けていない点、(d)ガードル部について、本願意匠は、全体が略等幅状で抑揚のない帯状であるのに対して、引用意匠は、クラウン部の菱形状とパビリオン部の星形部の矢の間がやや太幅の抑揚のある帯状である点、(e)全体の高さに対する横幅の比が、本願意匠は、約1:1.65であるのに対して、引用意匠は、約1:1.44である点に差異が認められる。

■■■意匠新着審決【3条2項系】

●不服2010-16029    
意匠に係る物品「包装用容器」

本願意匠(意願2009-13137)は、引用意匠1,2(意匠登録第1322969号,意匠課公知資料番号第HH07020790号)に基づき容易に創作できた意匠とはいえないと判断されました。
*公知意匠の参酌: なし

本願意匠

引用意匠1

引用意匠2

 『本願意匠の胴部は,縮径部の上下に完全な垂直周面の余地を設けた態様としているのに対し,「意匠1」は,下側の余地のみが垂直周面として構成されており,また,「意匠2」は,上下の余地共に垂直面ではなく,上記引用意匠のどちらにも本願意匠の胴部の具体的構成態様が表されておらず,その態様が異なる。
 そうすると,本願意匠は上記引用意匠と,基本的構成態様及び足の態様などに,部分的に共通する点があったとしても,本願意匠の胴部形状は公然知られた形状であったとは言えず,全体として本願意匠の形状にまとめ上げることは困難と認められ,一定の創作行為があったと言わざるを得ず…

●不服2010-13200     
意匠に係る物品「コンロ付き流し台」

本願意匠(意願2008- 6514)は、参考意匠1,2(意匠課公知資料番号第HJ18036185号、意匠課公知資料番号第HJ18036187号)に基づき容易に創作できた意匠とはいえないと判断されました。
*公知意匠の参酌: なし

本願意匠

参考意匠1

参考意匠2

 『本願意匠のグリル付き電磁調理器を除く収納部及び天板部の形状について、公然知られた参考意匠1と対比してみると、本願意匠の収納部の中段及び上段の引き出しの前板上部の形状が、側面視略「J」字状にして、その前面側の短片部分を溝状に抉る引き手部としたものであるのに対して、参考意匠1は、側面視略「C」字状の金具を設けて、その上端が略鉤状の引き手部としたものであり、両意匠の引き手部の構成態様は異なり…
 『本願意匠のグリル付き電磁調理器の形状についても、公然知られた参考意匠2と対比して、本願意匠の正面側の操作部の形状が、グリル部の右側に設けられて、下部を軸として上部が回転して引き出されてくるものであるのに対して、参考意匠2は、操作部の形状が不明である。
 『本願意匠の「J」字状の引き手部を伴った収納部と回転する操作部を備えたグリル付き電磁調理器との組み合わせた形状は、本願意匠出願前にこの種コンロ付き流し台等の分野において従来見られない特徴的な形状である。

●不服2010-15816     
意匠に係る物品「包装用容器の蓋」

本願意匠(意願2009-15374)は、引用意匠1,2(意匠課公知資料番号第HH18266416号,意匠登録第1024027号)に基づき容易に創作できた意匠とはいえないと判断されました。
*公知意匠の参酌: なし

本願意匠

引用意匠1

引用意匠2

 『本願意匠の本体部は,十二角柱を基本としたものであって,6面の台形の垂直面の間に逆台形の斜面を交互に6面配列し,台形の上底と逆台形の下底の長さを同じにして,上面は正十二角形で,本体部下端は長辺と短辺が交互に並ぶ十二角形にした態様としているのに対し,「意匠1」は,角丸五角形の上面から真円の下端へと徐々に形状が変わるもので,台形部分は円柱面であって,逆台形部分は平面で構成しており,また,「意匠2」のつば部は,上面縁が角丸になっており,上記引用意匠のどちらにも本願意匠の本体部及びつば部の具体的構成態様が表されておらず,その態様が異なる。
 そうすると,本願意匠は上記引用意匠と,本体部下端につば部が設けてある,本体部を側面視すると略台形と略逆台形が交互に表れているように見えるというように,部分的に,概念的に共通する点があったとしても,本願意匠の形状は公然知られた形状を組み合わせてできたものとは言えず,…

 本日は以上です!明日は商標審決をご紹介するので見ていただけるのならぷちっと押してくださいね…
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※左上の画像データは名古屋市さんのご好意により提供していただきました。

この記事を読んでひろた興味を持たれた方は…

【執筆記事】
  
「知財管理」誌 VOL.60  NO.6
  (並行輸入と商標権侵害 -並行輸入の抗弁における「同一人性の要件」及び「品質管理性の要件」-)

  「知財産管理」誌 VOL.58 NO.5
  (「腸能力」審決取消請求事件(平成19年(行ケ)第10042号 審決取消請求事件)
 
 
  「パテント」誌  2011.2 Vol.64
   (部分意匠に関する判例研究 -類否判断を中心に- 包装用容器事件)
  
字数制限が厳しかったので尻切れトンボ気味ですが…

【関係事件】
 代理人になった事件です。負けたのでご紹介するのをためらっておりましたが、思い切って…。
 
平成18年(行ケ)第10367号審決取消請求事件
 なお、牛木理一先生のHPで紹介いただいているので(「特許ニュース」2007年6月29日号の記事です)、そちらも併せてご覧ください~(こちらのB-27の項です)。

【ZIP FM Z-TIME BIZ】
 ここのフォトギャラリーになぜかわたくしが。
  見付からないよ~?→2008/07/23のところ…

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  このブログでは、わかりやすくするために、正確でない表現を使ったり、はしょったり、大雑把にしてたり、…等々してますが、目くじら立てずに見逃して下さい<(   )>
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