<平成23年(行ケ)第10040号 審決取消請求事件>(判決文はこちら)
だーいぶ前にご紹介したShoop vs. CHOOP事件の原告さんと被告さんが、逆の立場で被告さんと原告さんとなった事件の判決が少し前にアップされとりましたので、本日ご紹介いたします。うう、自分の昔のエントリを見ると、かなり恥ずかしい…と後から思わないような記事を書かねば(汗)
ちなみに、Shoopは20代~30代のB系の女子に人気があり、CHOOPはティーン世代の女子に人気があるブランドだった…って覚えてますか?自分はどちらの需要者層にも属さないので、思わず復習してしまいました(汗)
それでは、まず、以前にご紹介したShoop vs. CHOOP事件(平成19年(行ケ)第10172号)の概要と、今回の事件(平成23年(行ケ)第10040号)の概要とを簡単にご紹介したいと思います。
●平成19年(行ケ)第10172号 審決取消請求事件
原告:L・Fさん(本件商標権者)
本件商標↓(登録第4832063号)
H16.7.12 出願
H17.1.14 登録
被告:C・Cさん(無効審判請求人)
H18.4.10 自己の商標「CHOOP」を引用して無効審判請求(4条1項10号)
H19.4.3 一部無効審決
H19.11.28 平成19年(行ケ)第10172号 判決言渡 “本件商標は4条1項10号に該当せず、審決を取消す”
上告不受理により判決確定
●平成23年(行ケ)第10040号 審決取消請求事件
原告:C・Cさん(本件商標権者)
本件商標↓(登録第5230903号)
H17.9.30 出願
H21.5.15 登録
被告:L・Fさん(無効審判請求人)
H22.6.16 Shoop(登録第4832063号)を引用して無効審判請求(4条1項11号)
H22.12.28 全部無効審決
■今回の事件(平成23年(行ケ)第10040号)にいたるまで
以前の平成19年(行ケ)第10172号の判決では、4条1項10号の判断であるものの、登録商標Shoop(登録第4832063号)とCHOOPとは、商品の出所混同を生じるおそれはなく類似しない、と判断されていたのでした。
この判断のキーとなったのは取引実情でございました。ごく簡単にまとめます。
“CHOOPから「シュープ」の称呼が生じると理解・認識する需要者層は、主として『ティーン世代の少女層向けの可愛いカジュアルファッション』に関心を抱く需要者層だけであり、一方、Shoopの需要者層は『セクシーなアフリカ系アメリカ系のファッション(B系ファッション)』を好む20代から30代の女性層であるが、両需要者層は、被服の趣向(好み、テイスト)や動機(着用目的、着用場所等)が相違するので、取引の実情等を総合すれば、称呼を共通にすることによる混同は生じない。”
で、その判決が出された後に、今度はL・Fさんが、自己の登録商標Shoop(登録第4832063号)を引用して、C・Cさんの登録商標CHOOP(登録第5230903号)が4条1項11号に該当するとして無効審判を請求したのですね。
この無効審判の審決では、ShoopとCHOOPは類似するとして、CHOOPの登録が無効とされました。
平成19年(行ケ)第10172号の判決と異なる的な審決となったのですが、その理由が以下のように述べられています。
『本件商標は、その構成中に「シュープ」の文字を有する点において、上記判決とは事案を異にするものであり、加えて、本件商標に係わる需要者は、「ティーン世代の少女層向けの可愛いカジュアルファッション」に関心を抱く需要者層の消費者に限られることでもなく、また、引用商標に係わる指定商品の需要者は、「セクシーなB系ファッションブランド」を好む需要者層に限定されることでもないから、本件商標及び引用商標に係る需要者は、その指定商品全般にわたる一般の需要者層を共通にするものである。』
■今回の判決
上記無効審決を不服として、C・Cさんが提訴したのが、今回の審決取消請求事件です。
結論から言えば、今回の判決でも、Shoop(登録第4832063号)とCHOOP(登録第5230903号)とは、商品の出所混同を生じるおそれはなく類似しない、と判断されました。
取引の実情等については、以前の判決で認定されてから特段変化がないとして、以下のような判断がなされました。
『本件商標と引用商標とは,外観が明らかに相違し,取引の実情等において,原告による「CHOOP」商標が広く周知されていること,需要者層の被服の趣向(好み,テイスト)や動機(着用目的,着用場所等)が相違することに照らすならば,本件商標が指定商品に使用された場合に取引者,需要者に与える印象,記憶,連想は,引用商標のそれとは大きく異なるものと認められ,称呼を共通にすることによる商品の出所の誤認混同を生じるおそれはないというべきである。
したがって,本件商標と引用商標は類似しないと判断すべきである。』(判決文11頁)
このように、結論としては、CHOOP(登録第5230903号)の登録を無効とした審決の判断に誤りがあるとされたのでした。
おお、ちなみに、以前の平成19年(行ケ)第10172号の判決も、今回の判決も、by第3部でございました…
本日は以上です!次回も見ていただけるならぷちっと押してくださいな(。-_-。)/
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この記事を読んでひろた興味を持たれた方は…
【執筆記事】
「知財管理」誌 VOL.60 NO.6
(並行輸入と商標権侵害 -並行輸入の抗弁における「同一人性の要件」及び「品質管理性の要件」-)
「知財産管理」誌 VOL.58 NO.5
(「腸能力」審決取消請求事件(平成19年(行ケ)第10042号 審決取消請求事件)
「パテント」誌 2011.2 Vol.64
(部分意匠に関する判例研究 -類否判断を中心に- 包装用容器事件)
字数制限が厳しかったので尻切れトンボ気味ですが…
【関係事件】
代理人になった事件です。負けたのでご紹介するのをためらっておりましたが、思い切って…。
平成18年(行ケ)第10367号審決取消請求事件
なお、牛木理一先生のHPで紹介いただいているので(「特許ニュース」2007年6月29日号の記事です)、そちらも併せてご覧ください~(こちらのB-27の項です)。
【ZIP FM Z-TIME BIZ】
ここのフォトギャラリーになぜかわたくしが。
見付からないよ~?→2008/07/23のところ…
※注意!弁理士さんや知財部門のご担当など、クロートの方へ!
このブログでは、わかりやすくするために、正確でない表現を使ったり、はしょったり、大雑把にしてたり、…等々してますが、目くじら立てずに見逃して下さい<( )>
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コメント
取引の実情・・・
裁判所にいけば必ずこういうことになるのにも関わらず、庁内ではとにかく称呼だけで形式的に判断しようとする特許庁審査官は思考停止のアホですわね。
しかし、取引の実情があれば何でもありってのも怖い気がしますね。
私なんか『ティーン世代の少女層向けの可愛いカジュアルファッション』とに関心を抱く需要者層と、『セクシーなアフリカ系アメリカ系のファッション(B系ファッション)』を好む20代から30代の女性層とがどう違うのか、皆目見当が付かないほどのオシャレ弁理士ですが。
それだったら、
チョイ悪オヤジ風ファッションの需要者層とか
デブ専ファッション(サカゼン)の需要者層とか
女装愛好男子用ファッションの需要者層とか
みんなそれぞれ「シュープ」で登録できるんでしょうか?
まあ俺的にはどうでもいいんですけどね。
Unknown
講学的には類似だけど実際混同しないから非類似という感じですかね?
裁判所らしい判断ですね。
Unknown
シェンムーさん、コメントありがとうございます。
うーん、審査の初期段階で形式的判断になりがちなのは、ある意味仕方ないかもしれませんね…。
審判まで行ったら、最近は結構“取引実情”が重視されてるように思います。
でも“取引実情”って、さじ加減的な面があるから、何でもありっていうのは確かにちょっと…ですね。
Unknown
クニヒロさん、コメントありがとうございます。
そうですね、裁判所らしい判断だと思います。
取引実情が参酌できなければこの判断は難しいでしょうね…。
こんにちわ
ひろたさん
こんにちわ。
ブログのほうにコメントいただきありがとうございます。秋葉原、大歓迎です。
mkitmk@yahoo.co.jp
にメールいただけますでしょうか?
よろしくお願いします。
虎山