意匠新着審決【3条1項3号,3条の2項系】【3条2項系】【その他】

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こないだのコンバースの件は、調べる時間ができたら改めて触れますので、しばらくお待ちください~ 

 自分的に「意匠の新着審決の紹介コーナーいまいちだなー」と感じておりまして、しばらく休んでおりました。
  ・なんかテーマに統一性がないよなー、てきとー感満載だ、
  ・だいたい類似とか創作容易とかいっても、周辺公知意匠がわからんかったら、なんでそーゆー論理構成になったのかよく伝わらんのじゃね?、
  ・つか、そもそも意匠の審決知りたいつーニーズってそんなに無いような気がするに~、
 など、モヤモヤと…
 
 ところが、自分で意匠の新着審決紹介コーナーを久しぶりに見返してみましたところ、
 「おお、新鮮ですね、結構勉強になるなー」
 と意外な気がしまして。(←おいおい、手前みそかい~ アホか &自分で紹介した審決なのに、内容をすっかり忘れとったってことだに。)

 そこで、自分の備忘録的に、このコーナーを再開することにいたしました。
 そーゆーわけで、相変わらず、ヒロタが好き勝手に独断と偏見で選択した審決を掲載しているので、「なんじゃ、このてきとーな感じは」と感じられるかもしれませんが、悪しからずご了承ください(汗)。

 …前置きが長くなってしまった。それでは、張り切っていってみよー!(張り切っとんのはアンタだけ)

■■■意匠新着審決【3条1項系】

不服2010-18977      
意匠に係る物品「デジタルスチルカメラ」

本願意匠(意願2008- 33210)は工業上利用することができる意匠と判断されました。

本願意匠

 『本願意匠は、願書の「意匠に係る物品の説明」による、「本願意匠に係る物品は、動画像データの録画再生機能、音声データの録音再生機能、画像データ等の各種データのストレージ機能を備えるデジタルスチルカメラ」とし、「タッチパネル式のGUIを介して各種の機能を実行するもの」との記載から、各種機能の操作にアイコン等のグラフィックをGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)として用いた意匠法第2条第2項に規定する物品の操作の用に供される画像を含む意匠を念頭としたものと考えられる。
  実際、願書添付の図面によれば、本願意匠は、本願物品が有する各種機能を発揮するため、各種機能を示す8つのアイコンが縦4列横2行に整然と表された意匠である。

 『本願意匠は、「意匠に係る物品の説明」中の…との記載、「意匠の説明」の中の…の記載、…によれば、ユーザがカーソルを移動した際のカーソルの色彩の変化を伴うものである。
 『本願意匠は、動画像データの録画再生機能、音声データの録音再生機能、画像データ等の各種データのストレージ機能を備えるデジタルスチルカメラの各種機能を実行するタッチパネル式のアイコンに、選択した際に表れるカーソルを伴う意匠であるが、そのアイコン上にあらわれるカーソルが操作の際に明暗を伴って軌跡を示すことが、その物品の機能を発揮した後のコンテンツ等を表示した状態の画像でないことは明らかである。そして、意匠を全体としてみた場合、本願意匠は、当該物品が有する各種機能を実行するための、操作の用に供する画像であることも明らかで、また、アイコン上のカーソルの明暗は、願書の記載及び願書添付の図面から、変化の前後が特定されている。そして、この変化により視覚効果上、アイコン上を移動するように見えたとしても、本願意匠が表すのは、明暗の変化だけであることは、いうまでもない。
  そうすると、本願意匠を意匠法第2条第2項に規定する操作の用に供される画像とは認められないものとする理由はなく、また、明暗を伴う変化についても、意匠は具体的に表されており、特定できないとする理由もない。

■■■意匠新着審決【3条1項3号,3条の2項系】

無効2010-880006     
意匠に係る物品「空気圧機器用消音器」

本件意匠(登録第1380545号)と公知意匠1~3は非類似と判断されました。
*判断主体: 取引者・需要者
*公知意匠の参酌: 請求人が提出した証拠方法等

本件意匠

請求人が提出した先行意匠1~3

公知意匠1~3

 この種意匠においては、取引者・需要者の最も注意を惹きやすい部分とは、使用目的上、圧力流体の排出部にある吸音部が最も需要者の注意を惹くところといえるが、使用方法を左右する圧力流体の導入口である接続部も、注意を惹くといえる。
 『…この意匠分野にあっては、小径円柱部と大径円柱部が同軸上に配置された段付円柱形状は、一つの類型を示すと認められるが、需要者は、吸音部や接続部に注意を向けて意匠を観察するから、意匠全体の段付円柱形状が、直ちに意匠の類否を左右する要素となるとはいえない。そして、需要者が着目する吸音部や接続部については、以下のことが認められる。
 本件登録意匠の吸音部の態様は、公知意匠3に見られ、接続部の態様は、略円筒状であるから、公知意匠1及び公知意匠2に見られるといえる。なお、本件登録意匠の接続部は、フランジ側に小幅な拡径部を設け、中間部分に僅かな段差を設けたものであり、厳密には公知意匠1及び公知意匠2のものとは相違する。しかしながら、一般に、接続管に小幅な拡径部や段差を設けたものはありふれている。よって、本件登録意匠の吸音部と接続部に独自の特徴はない。
 しかしながら、本件登録意匠は、意匠全体の外観形態を作り出すに当たって、それら公知意匠1ないし公知意匠3の吸音部や接続部を単に組み合わせたとはいえず、公知意匠3の吸音部を短くし、公知意匠1や公知意匠2の円管による接続部を小幅な拡径部や段差を設けて改変しつつ、その長さも径も変更し、吸音部が目立った段付円柱形状を呈する吸音器の分野で、接続部の構成比率を増すことで、視覚的に訴求する効果を持たせた点に、新規な創作が認められるものである。その視覚効果は、意匠全体にわたるものであるから看者の注意を惹くので、要部をなすといえる。』
 『消音器における吸音部は、吸音効果の点で需要者の注意を強く惹くところであるから、まず吸音部について比較すると、…需要者は、吸音部について注意深く観察するから、境界線を視認できる以上、吸音材とフランジの境界線、あるいは頂部部材と吸音材の境界線を無視して、外郭形状のみで意匠を捉えることはなく、本件登録意匠と各先行意匠に対し、相当な形状差を見て取るものといえる。

不服2010-18322     
意匠に係る物品「歩行補助器」

本願意匠(意願2007- 36165)と引用意匠は非類似と判断されました。
*判断主体: (使用者、)需要者、看者
*公知意匠の参酌: 物品の使用目的につき『この種物品の…』

本願意匠

引用意匠

 『…形態についてみてみると、前記共通点は、両者の大枠をとらえたまでに過ぎないものであり、両意匠は、この種物品の使用目的から考慮すると、使用者が特に注意を払う部分の1つに該当するため、需要者の注目する部分であるということができ、形態における具体的な差異についても注視する必要がある。
 そこで、差異点についてみると、とりわけ(b-1)における、カバー部の構成をスリッパ状とするか靴状とするかの差異は、両意匠の基本構成に関わる差異であり、両意匠の類否判断に大きな影響を与える顕著な差異ということができる。
 そして、両者の共通点としてあげられる後方部分の帯状部の態様も、具体的にみると、(b-2)のとおり、固着の態様が相違しており、着脱自在なカバー部であってみれば、固着の態様についても、需要者の注意を惹く部分であるということができる。

不服2010-21972
意匠に係る物品「包装用缶」

本願意匠(意願2009- 6250)は3条の2の規定に該当しないと判断されました。
*判断主体: 看者
*公知意匠の参酌: 類否判断において『この種包装用缶の分野において…』

本願意匠

引用意匠

 『…共通点の態様は、この種包装用缶の分野において、胴部周壁面に三角形を用いた立体形状を整然と配置することは従来から見られる態様であり、両意匠に独自の構成ということはできず、三角形の頂点から重心へ向けて窪んだ略三角錐状の凹部の配列によって麻の葉模様状とした点については、引用意匠の出願前には無かったものの、麻の葉模様は周知模様であることから、その配列は、独自の構成ということもできず、これらの共通点のみをもって両意匠の類否判断を左右するものとすることはできない。
 『…(d)における、周壁面の模様部上下端部の態様の差異は、本願意匠が麻の葉模様が崩れ、上下の水平線状稜線も目立たない、変化のある態様であるのに対し、引用意匠は、全て同じ略三角錐状の凹部によって構成され、麻の葉模様に崩れはなく、明確にあらわれる上下の水平線状稜線に囲まれた、単調な印象を与えるもので、両意匠の類否判断に大きな影響を与える顕著な差異ということができる。

■■■意匠新着審決【3条2項系】

不服2010-14507      
意匠に係る物品「包装用箱」

本願意匠(意願2009-23498)は引用意匠1~3に基づき容易に創作できた意匠とはいえないと判断されました。
*公知意匠の参酌: なし

本願意匠

引用意匠1

引用意匠2

引用意匠3

 『本願意匠の基本的及び具体的な態様の内,上面の破断用ミシン目と四隅の角丸部の模様以外は意匠1に示されているので,これらの部分について,意匠2と意匠3に基づけば本願意匠を構成することができるのかを検討する。
 上面の破断用ミシン目については,等脚台形の下底の長さと後方に伸びるミシン目の長さに若干の違いは認められるが,ほぼ同様の態様,すなわち,台形状とその頂辺の両端から後方に伸びるミシン目の態様が意匠2に示されているが,角丸部分の表面態様については,本願意匠と引用の意匠3を比較検討するに,斜め格子の具体的な表し方が違い,その結果,上記引用意匠のどれにも本願意匠の角丸部分の具体的な表面態様が表されていないと言える。
 そうすると,本願意匠は上記引用意匠1と2から容易に想到できる意匠と大部分において共通する点があったとしても,本願意匠の角丸部分のみは,公然知られた形状であったとは言えず,全体として本願意匠の形状にまとめ上げることは困難と認められ,一定の創作行為があったと言わざるを得ず,これらの意匠を基に容易に想到することができたとは言えない。

■■■意匠新着審決【その他】

不服2010-14569       
意匠に係る物品「コップ」

本願(意願2009- 13586)は一意匠に係る出願と認められました。

本願意匠


 
 『本願意匠の意匠に係る物品については、…【意匠に係る物品の説明】の欄の記載によれば、本願物品は、上から順に、シャンパングラス、白ワイングラス、赤ワイングラス、ウォーターグラスを重ねたものであって、これら4つのグラスは積み重ねた状態でコース料理のテーブル上に配置され、飲食の用に同時に供されるものと認められる。
 そして、その形態は、願書及び願書に添付した図面の記載によれば、形状の異なる4つのグラスで構成され、このうちの1つは下面を上方に凹陥させた脚台つきで、開口部をわずかに外側に反らせた細身のグラスとし、他の3つはいずれも脚台を設けず、それぞれのグラスの下面を細身のグラスの脚台の下面と同様に上方に凹陥させるとともに、その反対側(グラス内面側)を上方に突出させ、開口部をわずかに外側に反らせた、太径、中径、細径の3種の大きさのグラスとしたものである。そして、これらのグラスに形成された突出部と凹陥部は、上から、脚台つきのグラス、細径グラス、中径グラス、太径グラスの順で、各側面同士が接することなく安定的に納置できるよう、互いに嵌り合う形状に形成されており、これらのグラスを順次積み重ねた態様は、全体として花のつぼみを連想させ、形態的な強い一体感をもたらすものとなっている。
 したがって、これら4つのグラスは、1つのまとまりのある形態を表すための必要な構成単位をなし、特定の順番で安定的に積み重ねることができるよう形成されたものであって、互いに密接な関連性を持って創作されたということができ、また、願書の【意匠に係る物品の説明】に記載されているとおり、これら4つのグラスは積み重ねた状態でコース料理のテーブル上に配置され、飲食の用に同時に供されることも明らかであるから、本願意匠は独立した4つのグラス(コップ)を単に積み重ねただけとはいいきれず、全体として一の意匠を構成しているというべきである。

本日は以上です!次回も見ていただけるならぷちっと押してくださいな(。-_-。)/
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※左上の画像データは名古屋市さんのご好意により提供していただきました。

この記事を読んでひろた興味を持たれた方は…

【執筆記事】
  
「知財管理」誌 VOL.60  NO.6
  (並行輸入と商標権侵害 -並行輸入の抗弁における「同一人性の要件」及び「品質管理性の要件」-)

  「知財産管理」誌 VOL.58 NO.5
  (「腸能力」審決取消請求事件(平成19年(行ケ)第10042号 審決取消請求事件)
 
  「パテント」誌  2011.2 Vol.64
   (部分意匠に関する判例研究 -類否判断を中心に- 包装用容器事件)
  字数制限が厳しかったので尻切れトンボ気味ですが…

 【関係事件】
 代理人になった事件です。負けたのでご紹介するのをためらっておりましたが、思い切って…。
 
平成18年(行ケ)第10367号審決取消請求事件
 なお、牛木理一先生のHPで紹介いただいているので(「特許ニュース」2007年6月29日号の記事です)、そちらも併せてご覧ください~(こちらのB-27の項です)。

【ZIP FM Z-TIME BIZ】
 ここのフォトギャラリーになぜかわたくしが。
  見付からないよ~?→2008/07/23のところ…

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