輸入業者さんが確かめていなかったばかりに

<平成25年(ネ)第10062号,同第10083号 不正競争行為差止等請求控訴事件,同附帯控訴事件>(判決文はこちら

今日ご相談にいらしたお客さまに、弊所に「あいぎ法律事務所」が併設され、知財サポートをワンストップサービスでできるようになったことをめちゃんこ喜ばれて、めちゃんこ気をよくしとるひろたです、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
そんなこと言われちゃうと、がぜん「これまで以上に頑張るぞー!!」という気になりますね、ぐふふ。

さて。
昨日はなぜだか不競法2条1項3号の保護主体のハナシをしたのですが、それは今日の伏線だったのだ。
と恰好よく言いたいところですが、本当にたまたまです…

今日は、最近(といっても去年の12/26判決言渡ですが(汗))の不競法2条1項3号で争われた事件の知財高裁判決をご紹介いたします。
この事件も“輸入業者さんが不競法2条1項3号の保護主体を確かめなかったばっかりに”争いになったと言ってもよいかもしれません…

事件の概要をさらにざっくり要約すると、日本の輸入業者さん(一審被告)が中国のメーカーから輸入販売していた商品(被告商品1~6)が、実は、日本の作家さん(一審原告)のオリジナル商品の模倣品だったため、作家さんが輸入業者さんを訴えた、という事件です。

作家さん(一審原告)の楽天市場のサイトはこちら

原審では、被告商品1~4、6の製造販売等の中止・廃棄の請求、損害賠償請求が認められています(平成24年(ワ)第4229号 不正競争行為差止等請求事件)。それに対し、一審被告さんが控訴等したのが、今回の事件です。

今回の判決で認定事実として挙げられているように、中国のメーカー(ティファニー社)は『インターネットで見た原告各商品に依拠してデザインのサンプルを作成し,そのサンプル画像を添付したメールを一審被告に送信し,これを受けた一審被告は,自ら運営するウェブサイト上のネットショップ等において被告各商品の宣伝等をした上で,ティファニー社に被告各商品を注文し,ティファニー社がその受注を受けて製造した被告各商品を購入してこれを輸入し,前記イのとおり,日本国内で業者向けに販売した。』そうです(判決文18頁)。

それで、作家さん(一審原告)側から輸入業者さん(一審被告)側に警告書が送られたため、輸入業者さんは中国メーカー(上記ティファニー社)に被告商品1~5の製造中止を求め、既に発注していた分をキャンセルしました。

しかしながら、『他方で,一審被告は,上記製造の中止を求めるまで,被告商品1ないし5が他人の商品の形態を模倣した商品であるかどうかについてティファニー社に問合せをするなどの調査確認をすることはなかった。また,一審被告は,本件警告を受けた後も,一審原告に連絡を取ることも,楽天市場の原告ショップを調査することもなく,…それぞれの販売を継続した。』とのことです(判決文19頁)。

また、被告商品6についても、『一審被告は,被告商品6をティファニー社から輸入するに当たり,ティファニー社に対し,被告商品6が他の商品の形態を模倣した商品であるかどうかについて問合せをしたことはなく,また,楽天市場の原告ショップを調査することもなかった。』とのことです(判決文19頁)。

一方、輸入業者さん(一審被告)は、輸入時における注意義務について、『一審原告から本件警告を受けて初めて原告商品1ないし5の形態と類似していることを認識し,また,被告商品6は本件警告の対象となっていなかったこと,インテリア用品のように一つ一つの形態が異なる膨大な品数の商品について類似品かどうかの調査を行うことは容易ではなく,一審原告が楽天市場に原告各商品を出品していたからといって,インターネットショッピングモールや通販サイトが無数に存在する中で,楽天市場はその一つにすぎず,特に楽天市場を調査すべき義務があるということはできないことなどからすれば,一審被告が被告各商品を輸入,販売するに際し,原告各商品と類似している商品を輸入しないように注意すべき義務などない』等の主張をしておられました(判決文26頁)。

しかしながら、裁判所は、『一審被告は,インテリア用品の輸入販売業者として,他人の商品の形態を模倣した商品を輸入し,これを販売することにより他人の営業上の利益を侵害してはならない義務を負うというべきであるから,一審被告がティファニー社から被告各商品を輸入するに当たり,ティファニー社に対し,被告各商品のデザイン完成に至る開発経緯等を問い合わせるなどして被告各商品が他人の商品の形態を模倣した商品ではないことを調査確認すべき注意義務を負っていたものと解するのが相当である。』等として、輸入業者さん(一審被告)の主張を退けています。

そして、結論としては、輸入業者さん(一審被告)の不正競争行為(不競法2条1項3号)が認められてしまい、控訴等が棄却されました。

この事例からも、輸入業者さんは「よくよく探る」ことが重要だとわかりますね…

そして、何だか不安に思ったら、法律事務所も併設されている「AIGIグループ」にご相談ください(とさり気にアピール)。

(※なお、本判決では、5条1項の損害額の推定につき、被告商品の販売数量について、但書の「販売することができないとする事情」が認められています(判決文32-34頁)。)

今日はこれでおしまい!

次回も見ていただけるならぽちっと押してくださいな(。-_-。)/
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