2019年4月26日に意匠審査基準の一部改訂が行われまして、5月1日以降に出願される意匠登録出願に適用されることになりました!
(※ただし、分割出願、特許又は実用新案からの変更出願、補正却下決定後の新出願であって、遡及出願日が2019年5月1日より前の出願については、改訂前の審査基準が適用されます。)
ユーザーブレンドリーな改訂内容となっておりますので、ご案内いたします。
(1)【部分意匠】の欄が不要に
これまで部分意匠を出願する場合は、願書に【部分意匠】の欄を設ける必要があったのですが、5月1日以降の出願については、部分意匠の出願であっても、願書に【部分意匠】の欄を設ける必要がなくなりました。
これにより、改訂前と大きく変わったのは、以下の点です。
・先後願の判断: 全体意匠と部分意匠の相互の間でも先後願(類否)が判断されることになりました。
・関連意匠の判断: 全体意匠と部分意匠の間でも先後願(類否)が判断されることになったので、相互に類似と判断されれば、全体意匠と部分意匠との間でも、本意匠と関連意匠として登録が可能となりました。
いわば、「全体意匠さん」と「部分意匠くん」とを隔てていた壁が崩れて、
「これからは「全体」「部分」って区別はない。ぼくらはみんな「意匠」ってだけさ!」
となったイメージです。
先願対象が増えることになるわけですが、一方で、例えば、破線部分の占める割合が小さくて ”ほぼ全体意匠” みたいな部分意匠について、全体意匠と類似と認められば、関連意匠として登録ができる、ということになりますね。こういったケース、いままでは、「意匠登録を受けようとする方法・対象が異なる」という「出願形式説」の理由で、関連意匠として認められてなかったので、今後はこのことも考慮しながら出願戦略を立てることができそうです。
(2)「一組の図面」の要件廃止
いままでは、原則的には、6面図の提出が必要でしたが、今後は、意匠を明確に表す十分な図の提出があれば、図面の数は問われません。
ただし、提出しない図については、意匠登録を受けようとする部分以外の部分の図として扱われます(他の図と同一又は対称であるため省略する旨が願書に記載されている場合を除く)。
例えば、部分意匠が、物品の正面図・左右側面図にしか表されていない場合でも、いままでは背面図も必要とされましたが、今後は、背面図がなくてもOKとされるケースが出てくることになります。
(3)必要な図面に、意匠登録を受けようとする物品以外のもの を表すことを許容
いままでは、意匠登録を受けようとする物品以外のものは、参考図を除いて、図面(必要な図面)に表すことができませんでした。
今後は、必要な図面においても、意匠登録を受けようとする物品以外のものを表すことができるようになります(例えば、物品「首飾り」に係る意匠出願において、必要な図面にトルソー等を表すことが可能となります)。
(4)中間省略の記載方法の緩和
いままでは、形状又は模様が連続し又は繰り返し連続するものや、ラジオ受信機のコード等の図の中間部分の省略を行う際、省略箇所に2本の平行な1点鎖線で切断したように示して、その旨と省略個所の図面上の寸法を願書に記載する必要がありました。
今後は、意匠の明確性に支障がなければ、様々な省略の表現方法が許容され、願書に中間省略の寸法記載も不要となります
ちなみに、J Plat Pat( https://www.j-platpat.inpit.go.jp )では、Dターム検索で、以下のような意匠検索が可能となりました。
(1)に関する意匠(図の中で意匠登録を受けようとする部分とその他の部分とを描き分けたもの)
→ Dターム記号「VZA」
(2)に関する意匠(外観の一部の面が開示されていないもの)
→ Dターム記号「VZB」
上記(1)及び(2)を同時に検索したい場合
→ 「VZ?」
今度の意匠基準の改訂で、意匠制度が少し使いやすくなりました。
来年以降は、法改正で、もっと使いやすくなると思います。期待したいですね!
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