「他人の氏名を含む商標の登録要件の緩和…に関する商標法改正の解説」を読みました

1行でいい、3分で書くブログ、「3分ブログ」。

 

年始に購入した「年報 知的財産法 2023-2024」を読みましたシリーズの第二弾です(第一弾はこちら)。

今日は商標法4(1)8の改正についての解説を読みました。

 

ところで、この解説の本文とは別に、注釈のところで取り上げられている審決で「ほぇ!?」と思うものがあったので、思わずご紹介しちゃう。

南実のかぼちゃ

この商標、どういう意味と捉えました?

 

わたしの感想「”南国とかで実ったかぼちゃ”かな~」

 

審査官「いや、南実(みなみ みのる)さん が作ったかぼちゃやろ」
審判官「いや、南実(みなみ みのる)さん が作ったかぼちゃやろ」

拒絶2013-005362(商願2021-31579)
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1800/TR/JP-2012-031579/C1C3B2B1F4A427B3774186822348B279647746213D3C501B46365CF779D7792D/40/ja

3 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第8号の該当性について
 商標法第4条第1項第8号は、他人の氏名を含む商標については、その他人の承諾を得ているものを除き、商標登録を受けることができない旨を定めており、その趣旨は、人(法人等の団体を含む。)の肖像、氏名、名称等に対する人格的利益を保護することにあると解される(最高裁平成16年(行ヒ)第343号 平成17年7月22日判決・集民第217号595頁)。
 これを本件についてみると、本願商標は、前記1のとおり、「南実のかぼちゃ」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中の「南実」の文字部分は、別掲で例示したとおり、他人の氏名である「南実」と同一であるから、他人の氏名に該当するというべきである。
 そして、本願商標「南実のかぼちゃ」が「南実」の文字を含んでなることは、その構成上明らかであるから、本願商標は他人の氏名を含むものであるといわざるを得ない。
 また、請求人が本願商標を商標登録することについて、当該他人である「南実」氏の承諾を得ているといえる事実は認められない。
 したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第8号に該当する。
(2)請求人の主張について
ア 請求人は、判決例(知財高裁平成21年(行ケ)第10074号 平成21年10月20日判決)を挙げ、商標法第4条第1項第8号の他人の氏名や略称等を「含む」商標に該当するかどうかを判断するに当たっては、単に物理的に「含む」状態をもって足りるとするのは誤りで、その部分が他人の氏名等として客観的に把握され、かつ、当該他人を想起・連想させるものであることを要する旨、主張する。
 しかしながら、当該判決例は、他人の名称の著名な略称に係る事案であって、「著名」が要件とされず、また、「略称」でもない本件とは事例を異にするものであり、本件の適切な前例とはいえないから、その判断に影響を与えるものではない。
イ 請求人は、本願商標の採択の意図や経緯等を述べ、本願商標は一連不可分の造語商標であるから、みだりに「南実」の文字部分のみを抽出し他人の氏名と即断すべきではなく、また、本願商標の指定商品に係る実情や、「南実」をインターネットで検索すると、女性の名前として多数ヒットすることからすれば、本願商標に接した需要者が、これより特定の「南実」氏を認識、想起させるものと評価することは経験則に反し許されない等、主張する。
 しかしながら、上記(1)で述べたとおり、本願商標は、他人の氏名「南実」を含むこと明らかであり、また、本件において、請求人が主張するような事情が考慮されるべき理由は見いだせない。
 したがって、請求人の主張は、いずれも採用することができない。
(3)まとめ
 以上のとおり、本願商標が商標法第4条第1項第8号に該当するものとした原査定は、妥当であって、取り消すことはできない。
 よって、結論のとおり審決する。

なんだか気の毒な審決(;´Д`)

 

なのですが…

今回の改正の政令要件の1つ目では、出願された氏名につき、
『他人の氏名と出願人との間に相当の関連性があること』
が必要とされています。

この点につき、本稿の解説では、

これまで使用しておらず、自己の氏名等とも関連性のないペンネーム・ビジネスネームや、これから使用する予定の芸名やキャラクター名などを出願する場合には、当該氏名の使用の準備状況やその必要性についての説明がなければ、出願が拒絶される可能性もあるため、出願に当たっては注意が必要である。

とのことです。

とすると、南実(みなみみのる)さんが現実に存在するとされる状況下で、
南実のかぼちゃ」(カルビー(株)が出願人)
は、『自己の氏名等とも関連性のない…』氏名に該当するってことになって、すんなり登録できないことにならんかしらん?
あれれ?

 

氏名とも取れるような造語につき、改正後も、思わぬところに落とし穴がなければいいのですが汗

 

審査基準ワーキンググループの動向はこちら。
https://www.jpo.go.jp/resources/shingikai/sangyo-kouzou/shousai/shohyo_wg/index.html

 

 

ことば・かたち・ずがら・しくみ の 知的財産に関するあれこれ、お任せください!
お問い合わせは こちらからどうぞ( 
https://aigipat.com/contact/index.html )

コメント

タイトルとURLをコピーしました