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<平成24年(行ケ)第10187号 審決取消請求事件>(判決文はこちら)
皆さま、あいぎ特許事務所は、商標亭より一歩遅れて、本日より営業開始です。遅ればせながら今年も宜しくお願いいたします。
今日は早速年末に出た商標判決のご紹介をいたします。
51条の取消審判で取消審決が出たので、その審決を取り消すべく、商標権者さんが原告となって提訴した審決取消訴訟です。
■原告の本件商標と使用商標
○本件商標
JPOの取消審判で取消審決がなされのは、下記本件商標の商標登録です。
指定商品:第30類「小麦,大麦,オート麦,スピルリナ,クロレラ,花粉,緑茶,海草,種子類,ほうれん草,朝鮮人参,アルファルファ等を主成分とした粉末状の加工食料品」
○使用商標
一方、商標権者(原告)さんが使用していた商標はこちら。
使用商品:大豆レシチン,スピルリナ,リンゴペクチンと繊維,亜麻仁粉,オリゴ糖,大麦ジュース粉末,オート麦ジュース粉末,小麦ジュース粉末,小麦の芽の粉末,アルファルファジュース粉末,クロレラ等を原料とするもの
■引用商標
被告(取消審判請求人)さんの下記登録商標2件が、引用商標とされました。
○引用商標1
指定商品:第29類「麦類若葉を主原料とする粉末状・錠剤状・粒状・液状・顆粒状加工食品,加工野菜及び加工果実,冷凍野菜及び冷凍果実」
○引用商標2
指定商品:第29類「麦類若葉を主原料とする粉末状・錠剤状・粒状・液状・顆粒状加工食品,加工野菜及び加工果実,冷凍野菜及び冷凍果実」
■経緯
一連の経緯を簡単にご紹介いたします。
H7.12 原告が、本件商標を出願
H8.5 原告が、米国企業製造の健康補助食品「PROGREENS」について、使用商標に類似する商標(「ProGreens」の欧文字を横書にし,その左上に「Multi」との欧文字を横書にして配置した構成)を使用して日本国内での販売を開始
H9.12 本件商標登録
H11-H18.2 原告が、健康補助食品「PROGREENS」について、「ProGreens」の欧文字から構成される商標を使用
H17.6 被告が、引用商標を出願
H18.2 引用商標登録。被告が、原告に対し、引用商標に係る商標権侵害を理由とし、ネットでの宣伝広告等の停止を求める旨を記載した書面を送付。これに対し原告は、被告に対し、被告に指摘された業務の停止等を記載した回答書を送付。
H19.4 原告が、使用商標を付した商品の写真をネットに掲載。被告が、原告に対し、引用商標の商標権を侵害する行為である旨記載した書面を送付。これに対し原告は、被告に対し、対応策を検討する旨記載した回答書を送付。
H20.11 原告が、使用商標を付した商品の写真をネットに掲載し、当該商品の宣伝広告をした。
H23.6 被告が、51条の規定による取消審判を請求。
H24.4 本件商標の商標登録を取り消す旨の審決。
■裁判所の判断
それでは裁判所の判断を、判決文を一部抜粋しながらご紹介いたします。
1.本件商標と使用商標の類似性について
まず、本件商標と使用商標の類似性について判断がなされています。結論の一部を抜粋します。
『…,1個の商標から2個以上の称呼,観念を生じる場合には,その1つの称呼,観念が登録商標と類似するときは,それぞれの商標は類似すると解すべきであるところ(最高裁昭和37年(オ)第953号同38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁参照),使用商標からは,「プログリーンズ」との称呼が生ずるほか,構成文字全体に応じた「マルチプログリーンズ」との称呼も生じ,本件商標から生じる称呼の1つである「マルチプログリーンズ」と称呼が同一である以上,使用商標は,本件商標と類似するものというべきである。』(判決文12頁)
以上のように、本件商標と使用商標の類似性は肯定されました。
2.使用商標と被告業務に係る商品等との混同のおそれについて
(1) 使用商標と引用商標との類似性の程度について
使用商標と引用商標との類似性を程度を判断するに際し、使用商標の認定が行われていますので、一部抜粋します。
『…「ProGreens」の文字は,「multi」の文字に比べて,構成文字が多く,その文字の幅も約5倍程度になっていること,「multi」の文字は白抜きで表記されているのに対し,「ProGreens」の文字は,白抜きでない通常の文字で表記されていることなどからすると,外観上,「ProGreens」の文字は,「multi」の文字に比して,見る者の注意をより強く引くものであるということができる。また,前記のとおり,「multi」との語は,「多くの」,「種々の」等の意味を有するものであり,「multi」との語自体が自他商品の識別のために格別の意義を有するものではない。
そうすると,使用商標のうち「ProGreens」との文字部分は,これを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分に結合しているものということはできず,当該文字部分だけを引用商標と比較して商標の類否を判断することも許されるというべきである。
したがって,使用商標からは,その構成全体である「multi ProGreens」だけでなく,「ProGreens」との文字部分からも,称呼,観念を生じ得るものというべきである。』(判決文13頁)
上記の使用商標の認定に基づいて、使用商標と引用商標1とは外観及び称呼が類似するため、両者は類似の商標であると判断されています(詳細は判決文13-14頁)。
また、使用商標と引用商標2とは称呼が類似するため、両者は類似の商標であると判断されています(詳細は判決文14頁)。
(2) その他、使用商標と被告業務に係る商品等との混同のおそれに関連して、以下の認定がなされました(詳細は判決文14-19)。
・使用商標が付された商品と被告業務に係る商品等は共通性を有する、
・引用商標は,原告さんがその商品に使用商標を使用したH20年頃には、いわゆる健康食品の需要者・取引者の間で、著名ないし周知であったとまではいえないものの、一定の認知を得ていたものということができる、
・使用商標を付した原告さん商品は一般需要者に対しネット販売されるものであり、引用商標の存在については認識しているが、被告製品が薬局等において対面販売される実情に通じていない一般需要者にあっては、使用商標と引用商標との類似性に照らして、ネットで接した原告商品について、被告業務に係る商品であるとの誤認・混同を生ずる具体的なおそれがある。
以上のように、使用商標と被告業務に係る商品等との混同のおそれは認められました。
3.原告の故意について
上記の経緯に照らして、裁判所は以下のように認定しました(判決文20頁)。
『原告は,平成19年4月17日,被告から,「multiProgreens」との商標が引用商標に係る被告の商標権を侵害するとの通知を受けていながら,その後である平成20年11月頃に,使用商標を用いた商品の宣伝を行っているのであるから,少なくとも,その宣伝行為に当たっては,使用商標を使用した結果,被告の業務に係る商品との誤認,混同を生じさせるおそれのあることを認識し,かつこれを認容していたものと認めるのが相当である。』
以上のように、原告さんの故意は認められました。
4.結論としては、原告さんの請求は棄却され、JPOの審決は取消されませんでした。
■コメント
原告さんは、最初、なぜ、米国企業製造の健康補助食品「PROGREENS」の商標をそのまま使わずに、左上に「Multi」との欧文字を横書にして配置したのか?
その辺りの事情が以下のように述べらています(判決文6頁)。
『…原告は,平成7年10月,米国のニュートリコロジー社から「ProGreens」なる健康補助食品をサンプルで輸入を開始したが,間もなく当該商品には日本では食品として認可されない物質(VitaminE サクシネイト)が含まれていることが判明した。そこで,原告は,同社に対して,当該物質を除いて製造するよう要請するとともに,成分の異なる商品を同一の商品名で輸入することはできないため,平成8年1月,「Multi」の文字を付加した使用商標を付することで輸入を再開することができた。平成11年頃,含有物質の食品許可の問題が解消したため,原告は,「ProGreens」のラベルに戻して平成18年2月頃まで販売していた。』
おっと…。H11に「ProGreens」のラベルに戻した時点で「ProGreens」で出願していれば、引用商標も登録されなかったかも…???
本日は以上です!今年もよろしくぽちっとにゃー(。-_-。)/
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