<平成24年(行ケ)第10417号 審決取消請求事件>(判決文はこちら)
「○カと煙は高いところに登りたがる」の言葉通り、高いところに登るのが大好きなアホのひろたです、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
天気の回りがよくて週末に梅雨の中休みが続いておりますね。明日の土曜日は、東海地方の知財業界に棲息する山ガール3人で鈴鹿の山に登りにいく予定ですので楽しみです!(老猾かつおこがましく自分を「山ガール」に含めてカウント)
そして今日は山にちょっと関連した商標のお話を。
本願商標「ASCEND」が引用商標「ASCENT」と類似とされて拒絶審決を受けたので、出願人さんが審取訴訟を提起した事案をご紹介いたします。
だって「登る」だがね?「アッセンダー」という山道具もあるがね?(かなり強引)
■本願商標・引用商標
○本願商標
「ASCEND」
第10類「医療用機械器具,バルーン拡張カテーテル」(類似群コード:10D01 10D02)
○引用商標
「ASCENT」
第10類「医療用及び外科用機械器具」(類似群コード:10D01 10D02)
動詞と名詞の違いだがね?
■原告(出願人)さんの主張
原告さんの主張のうち、ビビッときた部分を抜粋いたします。
『(1) 観念について
審決は,「ASCEND」及び「ASCENT」は「基本的な語として一般的な英語学習用の辞書にも掲載されている」として,一般的な日本人にとって「登る,上ること」といった観念を生ずる英単語であると認定する。
しかし,英語学習用の辞書に掲載されているからといって,一般的な日本人がそれらの単語の意味を把握しているとするのは誤りである。「登る」「上がる」を意味する英単語としては,平均的日本人としてすぐに思いつくものは「up(アップ)」であること,インターネット検索によっても,「ASCEND(アセンド)」及び「ASCENT(アセント)」は固有名詞としての用例がほとんどであることからも,「ASCEND」及び「ASCENT」は,一般的日本人には,何らの意味を持たない造語として認識される。本願商標及び引用商標はともに何らの観念を生じない。』(判決文3頁)
山屋は一般的日本人じゃない (^○^)/
『(4) 取引の事情等について
本願商標「ASCEND」と引用商標「ASCENT」とは,米国,欧州共同体及びスイス連邦共和国において,併存して登録されている。これらの国と地域において両者が医療機械器具関連商品について併存して登録されていることに照らすならば,市場での混同はないと推認される。』(判決文3頁)
■裁判所の判断
では裁判所はどう判断したのでしょうか。
結論からいうと、裁判所も、本願商標と引用商標とは類似する、と判断しました。
以下、その理由を一部抜粋いたします。
『本願商標「ASCEND」と引用商標「ASCENT」は,「ASCEN」の綴りを共通にし,語尾の「D」と「T」の文字において相違するにすぎないから,外観において類似する。本願商標からは,「登る,上る,上昇する」との観念が生じ,引用商標からは,「登ること,上昇」との観念が生じ,観念において類似する。
本願商標からは「アセンド」の称呼が生じ,引用商標からは「アセント」の称呼が生じ,両者は,いずれも4音であり,語頭からの3音「アセン」において共通し,語尾の「ド」と「ト」の音において相違するにすぎないから,称呼において類似する。また,本願商標について,取引者,需要者において,引用商標との間で,その出所を区別することができると解されるような格別の取引の実情が存在したと認めるに足りる証拠はない。』(判決文5頁)
■コメント
裁判所の判断は割とオーソドックスだったと思いますが、ちょっと調べてみたら、出願人さんは分割出願しとるんですね。ちょっとその経緯を見てみると…
H24.12.1 本件出訴
H24.12.19 分割出願(商願2012-102902)「第10類 バルーン拡張カテーテル,その他の医療用カテーテル」 & 本願補正
出訴後に分割出願・補正しとります。とくると、H16(行ヒ)4(最高裁判決)に思いを馳せるのが知財人として正しいあり方でしょうか。
ちなみに、分割出願の方も類似群コード的に原出願と同じなので4-1-11の拒絶理由通知が出されているようです。
本日は以上です!次回も見ていただけるならぽちっと押してくださいな(。-_-。)/
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