10月に入ったことだし、真面目に更新しようとした矢先、昨日は朝一番に当日返答希望のFAXがアメリカから来ておりました(泣)。あーだこーだと対応してるうちに、あっという間に他の所員が来る時間になってしまいました…。
そして、今日もいい天気なのに一人で事務所に篭ってコマゴマとした仕事を片付けております。
人生、思うように進まんです。
さて、間のびしてしまいましたが、前回の続きです。
「東京牛乳」の事件でございます。
これ、地産地消の牛乳なのでございますね。どうりで見たことなかったですが、HPが何だかいい感じです(→東京牛乳さんのHPをご覧ください)。
それで、前回は最後に「独占適応性がない商標」云々について触れておりました。
これ、3条1項1号~6号が設けられた趣旨の捉え方の説のハナシに関わります。
弁理士試験を受験されている方(合格されてから3年以内の方?)はご存知の方も多いと思いますが、
1号は「理念形としての独占適応性欠如完結型」、
3号~5号は「独占適応性欠如ゆえの登録主義修正型」、
2号と6号は「出所識別力欠如型」、
の3つのタイプに分類する考え方がございます(田村善之先生著、『商標法概説』(弘文堂)の受け売り)。
3条2項が適用されるのは、「独占適用性欠如ゆえの登録主義修正型」の3号~5号ですが、これらは、言語構成上、一般に使用を認めるべきものであり、特定人に独占させるべきではないもの、とされています。そして、使用により現実の出所識別力を獲得した場合にのみ、3条2項が適用されるわけです(『商標法概説』160頁)。
じゃあ、「出所識別力欠如型」の2号と6号は?これらは、言語構成としては独占に馴染むんだけど、査定時点で出所識別力を有してないため、登録が認められないものである、とされています(『商標法概説』160頁)。3条2項は適用されませんね。
それで…
ビミョーなのは、3号クリアかもしれない?だけど6号該当かもしれない?そんなボーダーな商標…
3条1項3号クリアでないという判断に対し3条2項適用を主張するのと、6号該当という判断に対し6号非該当を主張するのって、主張のし易さは同等なんでしょうか?違うケースがあるような気がする…
もし3条2項適用の主張の方がし易そうで、3条2項での救済を目論むなら、むしろ3号のハードル上げて「3号クリアしてない」としてくれた方がいいのか…
仮にそんな件が訴訟まで行ったりして、そのハードルがスタンダードになったりすると、とばっちり(?)を受ける商標が出てくる…?
悩ましい…
けど、多くのお客さんは3条2項適用できない側なので、ハードル上げてまわんでちょ、というのが本音でしょうか。
あ、前置き部分、「東京牛乳」からどんどん離れてしまいました。
すみません、「東京牛乳」に戻りましょう。
「東京牛乳」の出願人(原告)は、3条2項適用を求めておりました。
証拠として新聞・雑誌の紹介記事等、色々出したようですが、裁判所はこのように判示しました。
『①本願商標を付した商品に対する使用期間は,その使用開始時である平成18年9月から審決時までのわずか2年余であること,②本願商標を付した商品は,地産池消,すなわち地域の消費者ニーズに即応した農業生産と,生産された農作物を地域で消費しようとする活動を通じて,農業者と消費者を結びつける取り組みを目的としており,その流通領域もほぼ東京都及びその近県にとどまっていること,③本願商標を付した牛乳の生産量は全国の生産量に対してわずかであると認められること,④新聞,雑誌等の媒体による紹介記事等も,上記の期間中で,大半が1回に限られ,反復継続して紹介されたものではないこと,⑤甲5のサイトについても,閲覧の頻度等は明らかでないこと,⑥前記「証明書」についても,あらかじめ印字した同一の証明書書式に,各団体の代表者が押印するという態様により作成されたものであって,各団体の代表者が,本願商標の周知性の有無を確認した上で押印したとは考えられないこと等に照らすならば,審決がされた時点において,本願商標が,東京都及びその近県の取引者,需要者の間で,ある程度その存在が知られるようになったといえるとしても,取引者,需要者の間で,本願商標が,原告らの業務に係る商品であると,広く知られていたということはできない。』(判決文10~11頁)。
現実には、3条2項の適用が認められるのは簡単でないですね…。
ということで、残念ながら、拒絶審決は取消されなかったのでございました。
ちなみに…
東海地方で有名な牛乳は、やはり「下呂牛乳」でしょうか。
皆さんの地域でも地産地消を謳った有名なブランドございますか?
それでは、本日はこの辺で。
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