「商標・意匠・不正競争判例百選」読み合わせ勉強会No.3

毎週1回『商標・意匠・不正競争判例百選(第2版) 別冊ジュリスト』の読み合わせ勉強会に参加しています。勉強会の内容を自分的に整理した覚書メモです。

 

5.コカ・コーラ・ボトル事件(H19(行ケ)10215)

【テーマ】

商品・容器の立体的形状からなる商標

【1周目メモ】

『ところで,商標法は,3条1項3号で「その商品の産地,販売地,品質,原材料,効能,用途,数量,形状(包装の形状を含む。),価格若しくは生産若しくは使用の方法若しくは時期又はその役務の提供の場所,質,提供の用に供する物,効能,用途,数量,態様,価格若しくは提供の方法若しくは時期を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」は,商標登録を受けることができない旨を,同条2項で「前項3号から5ままでに該当する商標であっても,使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又役務であることを認識することができるものについては,同項の規定にかかわらず,商標登録を受けることができる」旨を,4条1項18号で「商品又は商品の包装の形状であって,その商品又は商品の包装の機能を確保するために不可欠な立体的形状のみからなる商標」は,同法3条の規定にかかわらず商標登録を受けることができない旨を,26条1項5号で「商品又は商品の包装の形状であって,その商品又は商品の包装の機能を確保するために不可欠な立体的形状のみからなる商標」に対しては,商標権の効力は及ばない旨,それぞれ規定している。
 このように,商標法は,商品等の立体的形状の登録の適格性について,平面的に表示される標章における一般的な原則を変更するものではないが,同法4条1項18号において,商品及び商品の包装の機能を確保するために不可欠な立体的形状のみからなる商標については,登録を受けられないものとし,同法3条2項の適用を排除していること等に照らすと,商品等の立体的形状のうち,その機能を確保するために不可欠な立体的形状については,特定の者に独占させることを許さないとしているものと理解される。
そうすると、商品等の機能を確保するために不可欠とまでは評価されない形状については,商品等の機能を効果的に発揮させ,商品等の美感を追求する目的により選択される形状であっても,商品・役務の出所を表示し,自他商品・役務を識別する標識として用いられるものであれば,立体商標として登録される可能性が一律的に否定されると解すべきではなく(もっとも,以下のイで述べるように,識別機能が肯定されるためには厳格な基準を充たす必要があることはいうまでもない。),また,出願に係る立体商標を使用した結果,その形状が自他商品識別力を 獲得することになれば,商標登録の対象とされ得ることに格別の支障はないというべきである。』

 

○文字等なしの形状だけで登録が認められた場合の権利範囲は?

・商品の立体的形状なら、文字等なしの形状だけで使われる可能性もあり、権利範囲は通常の商標と同じように考えやすい(ex. エルメスバーキン事件、ランプシェード事件

・容器の立体的形状は、通常は、商品名等の文字や模様等が付されて使われる。もし、権利者が使っている商品名等と全く異なる商品名等を、第三者がプリントして使ってたりしたら、権利行使できるのか?全く異なる商品名等が付されていたら、出所混同しなかったりして?とかよくわからん…

 

○周知性獲得と他法域での取得権利との関係(勉強会後に提示いただいた話題)

特許権・意匠権等で一定期間独占できていたような形状につき、3(2)の適用が認められるか?
そもそも法目的も保護対象が違うので、認められてもいいと思うが。

裁判例は?

H27(ワ)24688(実用新案権存続期間はかなり前に満了)
『実用新案権による独占状態に由来する周知性か否かについて
ア また,被告は,本件における原告の周知性の主張は,実用新案権1ないし3の存在による独占状態に基づく周知性を主張しているにすぎないこと,本件において「第三者の同種競合製品が市場に投入されて相当期間が経過した」わけでもないこと,日進化成が,遅くとも平成20年2月5日には原告商品と同一の形態を有するプラスチック製充填物を販売しており(乙20 6,乙7),少なくとも実用新案権3の存続期間が満了した後は,独占的な販売状態にあったとは認められないことを主張しているため,この点について判断をする。
特許権や実用新案権等の知的財産権の存在により独占状態が生じ,これに伴って周知性ないし著名性が生じるのはある意味では当然のことであり,これに基づき生じた周知性だけを根拠に不競法の適用を認めることは,結局,知的財産権の存続期間経過後も,第三者によるその利用を妨げてしまうことに等しく,そのような事態が,価値ある情報の提供に対する対価として,その利用の一定期間の独占を認め,期間経過後は万人にその利用を認めることにより,産業の発達に寄与するという,特許法等の目的に反することは明らかである。もっとも,このように,周知性ないし著名性が知5的財産権に基づく独占により生じた場合でも,知的財産権の存続期間が経過した後相当期間が経過して,第三者が同種競合製品をもって市場に参入する機会があったと評価し得る場合など,知的財産権を有していたことに基づく独占状態の影響が払拭された後で,なお原告製品の形状が出所を表示するものとして周知ないし著名であるとの事情が認められる場合であれば,何ら上記特許法等の目的に反することにはならないから,不競法2条1項1号の適用があるものと解するのが相当である。』

H15(ネ)366(特許権存続期間満了からそれほど経ってない)
『しかし,控訴人らが,プレストレストコンクリート製の斜面受圧板を独占的に販売してきたことは,控訴人らがPCフレーム工法に関して特許権等を有しており(甲第88号証等,弁論の全趣旨),他者が同種の斜面受圧板を製造・販売することが制限されていたためと認められる。特許権等の知的財産権の存在により独占状態が生じ,これに伴って周知性ないし著名性が生じるのはある意味では当然のことであり,これに基づき生じた周知性だけを根拠に,不正競争防止法の適用を認めることは,結局,知的財産権の存続期間経過後も,第三者によるその利用を妨げてしまうことに等しい。そのような事態が,価値ある情報の提供に対する対価として,その利用の一定期間の独占を認め,期間経過後は万人にその利用を認めることにより,産業の発達に寄与するという,特許法等の目的に反することは明らかである。
 もっとも,このように,周知性ないし著名性が知的財産権に基づく独占により生じた場合でも,例えば,知的財産権の存続期間が経過し,第三者の同種競合製品が市場に投入されて相当期間経過するなどして,知的財産権を有していたことに基づく独占状態の影響が払拭された後で,なお控訴人製品の形状が出所を表示するものとして周知ないし著名であるとの事情が認められるなどのことがあれば,不正競争防止法2条1項1号,2号を適用する余地はあろう。しかし,本件では,そのような事情は一切認められない。
 機能と必然的に結び付いた形状であっても,その出所表示としての周知著名性があるときは,不正競争防止法2条1項1号ないし2号の周知著名性の要件を充足するという観点に立ったとしても,本件における上記状況の下では,これを認めることはできないというべきである。』

【2周目メモ】
コカ・コーラ瓶みたいに包装容器が立体商標として登録された場合の権利範囲は?
もし全面花柄模様を付されたとかしたらどうなるか。
→アンケート調査では、文字付きでない状態でも「コカ・コーラ瓶」との回答が多かったので、形状だけでコカ・コーラ瓶と認識されるなら、全面花柄模様であっても権利侵害となる可能性もあるのではないか。裁判でもそういうアンケート調査結果を提出することになろう

 

6.あずきバー事件(H24(行ケ)10285)

【テーマ】

3(2)における同一性

【1周目メモ】

○指定商品と使用商品の同一性

使用商品は「アイス菓子」だったが、本願では「あずきを加味してなる菓子」を指定しており、3(2)適用が認められた。

*上位概念化された商品の限界は…?

・仮に50条不使用取消審判で「アイス菓子」以外を取消したとしても、「アイス菓子」と類似すると認められるものには権利が及ぶ可能性あり?

・禁反言の法理は…?
 ランプシェード事件では、出願時「照明器具」を「ランプシェード」に補正して3(2)適用が認められた。それでも「取引実情等を総合考慮して、出所混同のおそれの有無により判断すべき」として、「照明器具」についての使用行為につき侵害を認めている。

*なぜ3(2)が認められやすい「アイス菓子」でなく「あずきを加味してなる菓子」で頑張ったか?

 食品メーカーとしては、できるだけ広い権利範囲を得たいという絶対的な要望がある。
 リバイバル品等への活用/他社への牽制…

【2周目メモ】

◆商標の同一性について
ポイント:標準文字の出願商標が使用商標と認められた。

『原告は,本件商品の発売以来,本件商品の包装に原告の会社名とともに,本件ロゴ書体,これを横書きにしたもの又はこれと社会通念上同一と見られる標章を付しており,上記の宣伝広告等においても当該包装が映った写真又は映像を使用することが少なくなく,当該宣伝広告等においては,ほぼ常に原告の会社名を重ねて紹介している。
このような本件商品の販売実績及び宣伝広告実績により,本件審決の時点までには,「あずきバー」との語でインターネット上の検索を行うと,表示される多数のウェブページではいずれも本願商標が原告の製造・販売に係る本件商品を意味するものとして使用されているほか,原告とは直接の関係が認められない著者により,「あずきバーはなぜ堅い?」との表題の書籍(平成22年7月16日刊行)が執筆・出版されるに至っている。
 以上のような本件商品の販売実績及び宣伝広告実績並びにこれらを通じて得られた知名度によれば,本件商品の商品名を標準文字で表す『あずきバー』との商標(本願商標)は,本件商品の販売開始当時以来,原告の製造・販売に係る本件商品を意味するものとして取引者,需要者の間で用いられる取引書類等で全国的に使用されてきたことが容易に推認され,本件審決当時でも,本件商品を意味するものとして価格表や取引書類等で現に広く使用されている。』

○面白いと思った点

出願人の主張
『例えば,原告の「和風アイス」の商品一覧や,インターネットの楽天市場,ヤフーショッピング及びアマゾンの画面その他において使用されている」「近年の情報デジタル化やソフト産業の隆盛に伴って,商品を購入する取引者,需要者は,映像,音声又は文字データによって商品を取捨選択することが一般的となっているという取引の実情があるから,本願商標は,現に使用されている商標と同一又は同一の範囲の商標であるというべきである。』

特許庁の反論
『「テレビコマーシャルやラジオコマーシャルによる「あずきバー」という音声の放送は,商標法2条3項8号所定の「使用」には該当しない』
音商標が入る前の判決。
いまでは、音商標で登録しておけば、文字商標の音声的使用が商標権侵害になり得る(37条1号)。
もし音声広告を大々的に行っているなら、3(2)や50条を考えると、音商標で登録するのも一案か。

◆商品の同一性について
ポイント:「あずきを原材料とする棒状のアイス菓子」ではなく、「あずきを加味してなる菓子」(あずき菓子全般)について識別力が認められた。

『本件商品は,アイス菓子ではあるものの,『あずきを加味してなる菓子』であることに変わりはなく,かつ,本願商標は,前記(1)に認定のとおり,使用をされた結果需要者が原告の業務に係る商品であることを認識することができるに至ったものと認められるから,商標法3条2項の要件を満たすといって妨げはないのであって,上記のように特定された本願商標の指定商品を更にアイス菓子とそれ以外に区分して判断すべき理由はない。』

 

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