「商標・意匠・不正競争判例百選」読み合わせ勉強会No.9

毎週1回『商標・意匠・不正競争判例百選(第2版) 別冊ジュリスト』の読み合わせ勉強会に参加しています。勉強会の内容を自分的に整理した覚書メモです。

17.JOURNAL STANDARD事件(H21(行ケ)10189)

【テーマ】

64(1) 防護標章登録に必要な「需要者の間に広く認識されている程度」の意義

【メモ】

1.防護標章の登録要件
(1) 原登録商標が、その指定商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されていること
(2) 原登録商標が、その指定商品又は役務と非類似の商品又は役務に使用されたときに出所の混同を生じるおそれがあること

2.上記(1)「需要者の間に広く認識されている」

『商標法64条1項所定の「登録商標が・・・需要者の間に広く認識されていること」との要件は,当該登録商標が広く認識されているだけでは十分ではなく,商品や役務が類似していない場合であっても,なお商品役務の出所の混同を来す程の強い識別力を備えていること,すなわち,そのような程度に至るまでの著名性を有していることを指すものと解すべきである。』

・レベル
①周知商標よりも強いものでなければならない説
↑本判決はこちら派。審査基準も実質的にはこちら派。

②周知でも足り、あとは混同のおそれのところで登録の可否を決すべき説

・地域的範囲
①全国的に知られている必要がある説
↑審査基準はこちら派。

②全国的に知られている必要がない説

*防護標章登録第一号は厳しめに見られるけど、第一号がいったん登録されるとその後の第2号以降は緩めになる傾向があるとのご意見ありました。

〇「需要者の間に広く認識されている」規定の趣旨によって意味を解釈しよう♪
– 相対的登録要件 4(1)10, 19
– 地域団体商標の登録要件 7の2(1)
– 先使用権 32

 

18.氷山印事件(S39(行ツ)110)

【テーマ】

商標の類否判断基準
(みんな大好き氷山印事件だよ(≧▽≦))

【メモ】

言わずと知れた、登録要件(4(1)11)における商標の類否判断基準を示した判例。
その後の侵害事件(大森林事件)でも同様の判断基準が採用されている。

1.商標の類否判断

『商標の類否は、対比される両商標が同一または類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによつて決すべきである』
商品等の出所混同の防止の観点

2.類否判断の要素

『そのような商品に使用された商標がその外観、観念、称呼等によつて取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべく、しかもその商品の取引の実情を明らかにしうるかぎり、その具体的な取引状況に基づいて判断するのを相当とする。』
3点観察は出所誤認混同を生ずるおそれを推測させる一応の基準にすぎず、1点類似でも他の2点が著しく相違したりその他取引の実情等によって出所混同生じるおそれがない場合は、類似と判断すべきでない。

3.取引の実情

本件では、3点の重み付けについて、取引の実情を考慮。

・登録可否判断の場面では、局所的あるいは浮動的な取引の実情ではなく、指定商品全般についての一般的、恒常的な取引実情(保土ヶ谷化学事件)。
↑↓
・侵害有無判断の場面では、個別具体的な状況も含まれる。

※裁判例の傾向としては、3点観察より、具体的な取引実情を重視する傾向が指摘されている。

 

〇そもそも商品非類似で争えた?

指定商品について争われなかったようだけど、「糸類」と「硝子繊維(グラスファイバー)」は、そもそも非類似な気がするじゃんね?(ただし今でも類似群コードは同じ)

※参考(いまの審査基準より抜粋)
『商品又は役務の類否は、商品又は役務が通常同一営業主により製造・販売又は提供されている等の事情により、出願商標及び引用商標に係る指定商品又は指定役務に同一又は類似の商標を使用するときは、同一営業主の製造・販売又は提供に係る商品又は役務と誤認されるおそれがあると認められる関係にあるかにより判断する。
(1) 商品の類否について
商品の類否を判断するに際しては、例えば、次の基準を総合的に考慮するものとす
る。この場合には、原則として、類似商品・役務審査基準によるものとする。
① 生産部門が一致するかどうか
② 販売部門が一致するかどうか
③ 原材料及び品質が一致するかどうか
④ 用途が一致するかどうか
⑤ 需要者の範囲が一致するかどうか
⑥ 完成品と部品との関係にあるかどうか』

〇商品の価格帯について
4(1)11の類否判断で、同じ指定商品だけど需要者層が異なるという取引実情で争われた事例
例えば Shoop vs. CHOOP事件(H19(行ケ)10172)B系 vs 可愛い系
↑これなんか、局所的な取引の実情な気がするけど~

 

◆その他

Lady Gagga事件に関して、JPOの見解を情報提供していただきました。

”3(1)3が適用されるのは、あくまで判例が出た「歌手名」×「CD等」に限られる。
落語家・デザイナー等の名前や、class 41のパフォーマンス系役務等、判例では言及されていないものには適用しないという運用。”

 

 

前半は耳参加でしたが、今週も大変ためになりました!

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