潜伏から

<平成21年(行ケ)第10171号審決取消請求事件>(判決文はこちら

 おはようございます。っていうか、あけおめです!
 本日よりあいぎ特許事務所は営業開始いたします。今年も宜しくお願いいたします。

 私は休業中もちょこまか事務所に来ておりましたが、あまりの寒さに心身とも凍えてコア用件以外のことができず、このブログも潜伏しておりました。

 今年最初のブログは、昨年末に出た判決のご紹介です。
 (…なんか牛くさくて旧いですけど…すっかり寅気分になっているところ、申し訳ございません。)

 不使用取消審決の取消請求事件です。
 注目したいのは、下記の使用標章を、取り消し対象となった指定商品「鋼」について使用していたのか、という点です。

 まずは、取消し対象となった商標を。どんな登録商標だったかというと、こちら(登録第4107315)。指定商品は第6類「鋼」等です。
 

 一方、使用していた標章はこちら。この使用標章は、取消審決では登録商標と社会通念上同一と認めらませんでしたが、今回の判決では認められています。
 
 
 商標権者(今回の原告)は、この標章について、例えば下記のような使い方をしていました(判決文9~10頁から抜粋)。
 
 a K社とのライセンス供与契約に基づき,工事名「(仮称)原町パーキング新築工事建築躯体組み上げ工事(Mチャンネル)」とされる工事について,「御見積書」を作成しているが,その書面の右側中央には使用標章が表示されている。
 b プレスリリース用の用紙には,原告商品の特徴を挙げ,具体的に,原告商品は,オーストラリアのCDS-Nu-Steel社が製造し,同社から輸入販売する,建築に用いるM型形鋼であること,M型形鋼(Mチャンネル)の優位性として,①板厚を薄くできること,②軽量化できること,③施工性が改善すること等を挙げていることが記載され,原告商品であるM形鋼をを使用した骨組みの写真とともに使用標章が表示されている。
 c 原告に作成に係る「WORK’s ニュースチールパーソナルヒストリー作品集」と題するパンフレットには,原告商品であるM形鋼を使用した建物の写真とともに使用標章が表示されている。
 d 原告作成に係る住宅の宣伝用パンフレットには,「当社のスチールハウスは,独自の特許工法・M型鋼材・Mチャンネルを採用。その技術は,平成12年に改定された建築基準法の第一号物件として国土交通大臣の認定を取得し,高い評価を得ています。」(2頁)などの記載があり,原告製品のM形鋼を使用した建物の構造に関する図面又は写真及びこれを使用した建物の外観及び内部の写真が掲載され,2頁と10頁に,使用標章が表示されている。
 e 原告作成に係る「納入実績」と題するパンフレットには,平成13年から平成19年まで(例えば,平成17年8棟,平成18年11棟,平成19年14棟)の原告商品を住宅,店舗等の材料として使用した実績が示され,表紙には使用標章が表示されている。
 f 原告作成に係るパンフレットには,工場や工事現場で発生した廃棄物収納用の大型ごみ収集箱,テーブル・下駄箱・多目的棚の組立てキット商品として,鋼板の写真が掲載され,使用商標が表示されている。
 
 (なお、「形鋼」とは,断面形状が円形でない鋼材の総称であり,H形鋼,I形鋼等がこれに含まれる。原告商品は,断面形状について,片仮名の3個のコの字を連続させて,M字用に成形させた鋼材である。)

 a~eのような使用の仕方について、取消審決では、こんな風に判断されていました。
 『被請求人の取扱い係るスチールハウスに、被請求人独自のM型鋼材を採用していることは認められるとしても、当該M型鋼材が建築材料や建設部材としての用途以外の商品として、建築材料や建設部材に限定せず単独・個別的に取引きされている具体的な事実をみいだすことができない
 ところで、「商品及び役務区分解説〔改訂第2版〕」(1992年(平成4年)3月25日、発明協会発行)の第6類の【解釈】によれば、「4 建築用又は構築用の金属製専用材料」についての項には、「・・・“専用材料”という意味は、専ら建築又は構築に用途を限定されたものとして取引される材料のことである。したがって、鉄板等が後に建築に使用されることがあっても、用途を限定しないで、単に“鉄板”として取引される場合は本類1鉄及び鋼に属し、それが“天井板”として取引される場合は、この概念に属する。また、物それ自体として建築又は構築以外の用途に使われないようなもの(例えば、「金属製とびら」「金属製はり」等)がこの概念に属することは当然である。」と示されている。
 そうすると、乙第2号証ないし乙第10号証に係る当該取引は、被請求人及びその関連グループに係るスチールハウスの総合的な住宅建築に係るものであって、これに上記「建築用又は構築用の金属製専用材料」についての前記の商品解説とを照らしみると、当該「M型鋼材」の取引が建築用又は構築用の金属製専用材料に関する取引ということができても、建築材料や建設部材としての用途以外の取引と認定するのは困難である。 
 したがって、被請求人が主張する当該M型鋼材とする使用商品が取消請求に係る商品「鋼」の範疇に属する商品と認めることはできない。むしろ「建築用又は構築用のスチール製専用材料」の範疇にあるというのが相当である。
』(下線は私が付しました)

 ちなみに、ご参考までに、「鋼」の類似群コードは06A01で、「建築用の金属製の専用材料」の類似群コードは07A01です。類似商品・役務審査基準に従う限りにおいても、指定商品「鋼」と、使用していた「建築用の金属製の専用材料」とは、類似でないと推定される、ということになります。

 さて、それでは裁判所は、指定商品と使用していた商品との関係を、どのように判断したのでしょうか。
 
 …続きは次回のココロなのだ~
 次回も見ていただける方、ぷちっと押していただけると嬉しいです。
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