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<平成22年(ワ)第9684号 不正競争行為差止等請求事件>(判決文はこちら)
本日ご紹介する大阪地裁の不競法の事件、原告代理人はお友だち(←勝手に)弁護士さんのM先生じゃないですか!やっほー、M先生、読んでいただいてますかぁー?(←カジュアル過ぎ)
調子に乗り過ぎる前に、さっさと中身をご紹介いたします。商品の形態について不競法2条1項1号・3号で争われた事件でございます。
■原告さんの商品
原告さんの商品は、商品名が「くしゃっと水切りざる」といい(商標出願されてなさそう?)、こんな感じの商品です。
楽天市場「発明屋」>キッチングッズ>「くしゃっと水切りざる」
ほう、なかなか弁理ぐっず… もとい、便利グッズですね~ ダンナに教えとこうかな(はい、我が家ではダンナが夕飯当番です)
■被告ら(5社)さんの商品
被告らさんの商品は、商品名が「なんでもござる」といい(ベタやな~w これも商標出願されてなさそう?)、ネットで検索するとまだ結構ヒットしますので、そちらをご参照ください。
■争点
不競法2条1項1号・3号に係る争点と、損害額等の争点と、差止め等の争点がありました。
■裁判所の判断
上記争点のうち、独断と偏見でおもしろいと思ったものだけ、以下にピックアップさせていただきます。
1.不競法2条1項1号に係る争点:
○争点1(原告商品の形態は,法2条1項1号の商品表示に当たるか)
原告さんの商品は、基本形態(普通のざる形)→使用時形態(布巾絞り、巾着絞り、折り畳み)に変形し、その名のとおり“くしゃ”となるところがなかなか斬新ぽいと思うのですが、これが“商品の実質的機能を達成するための構成に由来する形態”に該当するか否かが判断されました。
裁判所の判断は以下のとおり。
『…,原告商品は,ざるとしての機能に加え,柔軟性があり,変形させることができるという機能もあり,これにより従来のざるにはない用途に用いることができるというものである。
そうすると,柔軟性があり,変形させることができるという形態的特徴は,原告商品の機能そのもの又は機能を達成するための構成に由来する形態であり,上記(1)のとおり,商品の実質的機能を達成するための構成に由来する形態として,法2条1項1号の商品等表示には当たらないというべきである。
具体的にみると,基本的形態として原告が主張する構成は,いずれも,柔軟性を持たせるための構成若しくは柔軟性があるという機能それ自体又はざるとしての機能を発揮させるための構成であり,商品の実質的機能を達成するための構成に由来する形態であるというほかない。
また,使用時形態も,柔軟性があり,変形させることができるという機能の結果生じる形態であり,これも商品の実質的機能を達成するための構成に由来する形態,結果である。』(判決文25頁)
したがって、原告さんの商品の形態をもって、2条1項1号の商品等表示には該当しない、と判断されたのでした。
なお、念のためとして、争点2(原告商品の形態は,商品表示として需要者の間に広く認識されているか)についても判断されましたが、結論としては『原告商品が特定の出所を表示するものとして周知性を得たとは認めがたいというべきである。』とされています(詳細は判決文25~26頁をご覧ください)。
2.不競法2条1項3号に係る争点:
○争点6(被告ら商品は,原告商品の形態を模倣したものであるか)
裁判所は、結論として、原告商品と被告ら商品とは実質的に同一の形態と認められる、と判断しています。
一方、被告らさんは、いくつか相違点(突起の有無、貫通孔の配置パターンなど)を挙げていましたが、裁判所は、『いずれも需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識することができる形状の差違であるとはにわかにいいがたい』として、被告らさんの主張を退けました。
また、被告GさんがH21.5以降原告さんから原告商品を購入していたことや、その後被告Aさんが被告ら商品を輸入して他の被告らさんに譲渡するなどした経過からして、『被告らが原告商品に依拠して被告ら商品を作り出したことは容易に認めることができる(被告らも原告商品に依拠して被告ら商品を作り出したことは積極的に争っていない。)』としています。
詳細は判決文28~30頁をご覧ください。
○争点7(原告商品の形態は,商品の機能を確保するために不可欠な形態などに当たるか)
(1)ざるとしてのありふれた形態
裁判所は、原告商品の使用時形態(“くしゃ”)のように変形自在であるという特性が、2条1項3号により保護されるべき商品の形態として十分考慮される、としました。
『法2条4項によれば,「商品の形態」とは,需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識することができる商品の外部及び内部の形状並びにその形状に結合した模様,色彩,光沢及び質感をいう
被告は,原告商品の使用時形態は需要者が通常の用法に従った使用に際して認識することができる形状には当たらないとして,その他のざるとしての形態的特徴は,いずれも乙2ないし8に記載された原告商品に先行するざる又は水切りざるが備えている構成であるか又は周知の形態若しくはざる一般にみられるありふれた形態であると主張する。
しかしながら,原告商品の使用時形態それ自体が,法2条4項により保護される商品の形態(形状)であるかはおいても,使用時形態のように変形自在であるという原告商品の特性は,少なくとも需要者が通常の用法に従った使用に際して知覚によって認識することができる質感等に反映されることは明らかであり,法2条1項3号により保護されるべき商品の形態として十分に考慮されるべきものである。』(判決文30~31頁)
(2)技術的構成に由来する必然的な形態
被告らさんは、原告商品の形態が、シリコン素材を使用したという技術的構成から必然的に由来するもので、商品の機能を発揮するために不可欠な形態であると主張していましたが、裁判所はこれを退けました。
『ざるの素材を変形自在なものにしたとしても,ざるとしての基本的形態だけを取っても,材質の選択,肉厚幅,底面突起の数,底面突起の有無及び数,表面上の穴の大きさ及び数など,その形態選択には無数の選択肢があることからすれば,原告商品の形態を全体として評価したときに,それが商品の機能を発揮するために不可欠な形態のものであるということはできない。』(判決文32頁)
3.損害額等
損害額については5条1項により算定されていますが、ただし書に該当する事情(譲渡数量の全部/一部に相当する数量を被侵害者が販売することができないとする事情)が認められました。
『…近接した期間における譲渡数量において約8倍もの差があることや,小
売単価をみても約3倍の価格差があることなどからすると,譲渡数量のうち少なくとも2分の1に相当する数量を被侵害者である原告が販売することができないとする事情があったと認めるのが相当である。
原告は,原告商品が,従来の固定型の「ざる」には全く存在しなかった,いわば「ワン・アンド・オンリー」の商品であったことや,被告ら商品が原告商品のデッドコピーであることから,法5条1項ただし書の適用を否定すべきであると主張するところ,確かに,前記4,5で検討したところによると,原告の上記主張に係る各事実を認めることができる。
しかし,法5条1項が原告の逸失利益の推定規定であることを考えると,上記各事実をもって,前記結論を左右するには至らないというべきである。』(判決文34~35頁)
ピックアップ争点は以上です!
■コメント
ちなみに、差止め及び廃棄請求については、原告商品が最初に販売された日から3年を経過した後ということで、認められませんでした。
仮に意匠権が取れていたとしたら、認められていたですね…。
本日は以上です!次回も見ていただけるならぷちっと押してくださいな(。-_-。)/
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※左上の画像データは名古屋市さんのご好意により提供していただきました。
この記事を読んでひろた興味を持たれた方は…
【紹介記事】
知らないうちに、紹介記事を書いてくださっていました(1年近く前の講座ですが、たまたま発見しました)。
2010年9月 岐阜県立城北高等学校での講座
【執筆記事】
「知財管理」誌 VOL.60 NO.6
(並行輸入と商標権侵害 -並行輸入の抗弁における「同一人性の要件」及び「品質管理性の要件」-)
「知財産管理」誌 VOL.58 NO.5
(「腸能力」審決取消請求事件(平成19年(行ケ)第10042号 審決取消請求事件)
「パテント」誌 2011.2 Vol.64
(部分意匠に関する判例研究 -類否判断を中心に- 包装用容器事件)
字数制限が厳しかったので尻切れトンボ気味ですが…
【関係事件】
代理人になった事件です。負けたのでご紹介するのをためらっておりましたが、思い切って…。
平成18年(行ケ)第10367号審決取消請求事件
なお、牛木理一先生のHPで紹介いただいているので(「特許ニュース」2007年6月29日号の記事です)、そちらも併せてご覧ください~(こちらのB-27の項です)。
【ZIP FM Z-TIME BIZ】
2008/07/23 商標の話題で出演
※注意!弁理士さんや知財部門のご担当など、クロートの方へ!
このブログでは、わかりやすくするために、正確でない表現を使ったり、はしょったり、大雑把にしてたり、…等々してますが、目くじら立てずに見逃して下さい<( )>
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