IPレポート

【中国商標】商標法 第3次改正の概要

中国の改正商標法が2014年5月1日から施行されています。以下に、改正の主なポイントをご紹介いたします。

■出願制度に関する改正
 1.音声商標の導入
  ※単一色商標の導入は見送られました。

 2.一出願多区分制の導入
  待ちに待った多区分制が導入されることになりました。
  それと共に、分割ができるようになります(部分拒絶理由通知を受けた場合)。

 3.審査意見書制度の導入 
  出願内容に不備がある場合、審査官が出願人に対し説明又は修正を要求できることが可能になりました。

■悪意による商標の登録及び使用行為に関する改正
 1.抜け駆け登録の抑止
  「同一又は類似の商品について出願する商標が、先に使用された他人の商標と同一又は類似であり、出願者が当該他人との契約、取引関係又はその他の関係により当該他人の商標の存在を明らかに知っている状況において、当該他人に異議を申し立てられた場合、登録してはならない。」

 2.未登録商標の先使用権
  「登録商標権者が商標出願前に、他人が既に同一又は類似の商品に登録商標と同一又は類似である一定の影響力のある商標を使用している場合、登録商標専用権者は当該他人が従来の使用範囲内において継続して当該商標を使用することを禁止することができない。ただし、適切な区別標識を加えることを要求することができる。」

 3.他者の商標を自己の商号として使用する不正競争行為の禁止
  「他人の登録商標又は未登録の馳名商標を企業名称中の語句として使用し、一般公衆を誤認させ、不正競争行為を構成した場合、「反不正当競争法」に基づいて処理する。」

■馳名商標の認定制限・使用制限に関する改正
 1.特定機関による馳名商標の個別的認定、需要に基づく認定及び受動認定
 「馳名商標は、商標の登録、評審、管理などの行政処理手続き及び商標民事紛争訴訟手続きで、当事者の請求により、商標案件に関連する認定する必要がある事実の処理として認定する。」

 2.馳名商標の名を用いる宣伝の禁止
 「製造業者又は経営者は、馳名商標の語を商品自体、商品包装、容器或いは広告宣伝、展示会及びその他の商業活動において用いることは認められない。」

■商標権の保護強化に関する改正
 1.故意による侵害の懲罰的賠償制度の導入
 「悪意で商標権を侵害し、かつ情状が重い場合、権利侵害により実際に受けた損失又は権利侵害により得た利益で算定した額の1~3 倍の範囲で、損害賠償額を確定することができる。」

 2.商標権者の立証責任の軽減
 「権利者が既に立証に尽力したが、権利侵害行為に関する帳簿、資料を主に侵害者が所持する場合、侵害者に関連帳簿、資料の提出を命じることができる。」
 「侵害者が関連帳簿、資料の提出を拒否した場合、人民法院は、権利者の主張及び提出した証拠を参考して損害賠償額を確定することができる。」

 3.損害賠償額の幅の引き上げ
  損害賠償額の上限を、「50 万元以下」から、人民法院の裁量によって「300 万元以下」の賠償を命じる判決を下すことができるようになりました。

 4.不使用登録商標について賠償しない制度の導入
 「商標権者がこれまで3年以内に当該登録商標を実際に使用したことを証明できず、かつ、権利侵害行為によりその他の損害を被ったことを証明できない場合、権利侵害と訴えられた者は賠償責任を負わない。」

■審査・審理手続期間に関する改正
 初期審査期間は9カ月、拒絶査定決定に対する評審委員会の審理期間は9カ月、異議申立てに対する商標局の審理期間は12か月とされました。
 ※拒絶査定決定後、評審委員会へ復審請求するまでの期間は、法改正後も15日のままです。


その他、代理機構による悪意による出願の禁止、商標異議申立制度の完備、無効宣告制度の導入等々、改正項目は盛りだくさんです。