さて、昨日の「商標権の移転」の続きです。
『A社が持っている「介護事業」と「通信事業」の2つのサービス(役務)を指定した商標「X」の商標権を、まるまるB社(「介護事業」のみ行う会社)に譲渡しなければならないか否か』について。
A社が引き続き「通信事業」を行う予定であれば、そのサービス(役務)に係る商標権を残して、「介護事業」のサービス(役務)に係る商標権だけをB社に移転することができます。商標法24条の2では、『商標権の移転は指定商品又は指定役務ごとに分割してすることができる』とされています。
これは便利ですね。
…て、権利の分割譲渡の何が珍しいかって?…ですか
でも、例えば特許権の場合、請求項ごとに移転するってことにはなりません(「請求項」の説明はこちら)。1つの特許権が「A装置」の請求項と「B方法」の請求項に係るものであっても、請求項ごとに別々の会社に移転できるといったような規定はありません。
もちろん、意匠権の場合、そもそも1つのデザインとして権利を得たのにどうやって分割するの?ってことになるから、これも分割譲渡ができるといった規定はありません。
※
おお!商標権だけですか。商標権を分割して移転できると定められてるなんて、便利ですよね!
ところで、上記例のように、A社とB社の業種が結構違う場合は、商標権分割後に「介護事業」に係る商標「X」の権利はB社、「通信事業」に係る商標「X」の権利はA社となっても、商標「X」の出所の混同を生じるといった不都合はあまりなさそうですね。
じゃあ、似たような商品・役務ごとに商標権を分割することになった場合は、どうなるのでしょう?
例えば、商品「アイスクリーム」と商品「クリームパン」を指定した商標「Y」の商標権があったとして、C社に「アイスクリーム」、D社に「クリームパン」と分割して移転した場合、商標「Y」の出所の混同を生じてしまうのでは?
ほら、こんな声が聞こえてきます→「このクリームパン「Y」って書いてあるからぁ、C社のだと思ったんだけどぉ、D社のだったし~。ちょーやばくね?」
…やばいかどうかは明日。
本日はこの辺で。
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