前回の答えです。
(1)商標権:指定商品「印刷物」、商標「POS」
相手方の行為:POS(Problem oriented system=問題指向型診療記録)の解説書に「POS実践マニュアル」等の題号を表記して販売
この場合の相手方の行為は商標権侵害とはなりませんでした。
その理由は、「POS実践マニュアル」等の題号は、
『いずれも被告書籍の内容を表すためにその表紙に表示されているものであって、出版者である被告の商品であることを識別させるための商標として被告書籍に付されたものではない』から。
つまり、相手方が使用した題号等は、『商標としての機能を有しない態様で使用される標章』なので商標権を侵害しないとされたわけです。
(2)商標権:指定商品「レコード」、商標「UNDER THE SUN」
相手方の行為:CD(レコードと類似商品)のアルバムのタイトルとして「UNDER THE SUN」を表記して販売
この場合の相手方の行為も商標権侵害とはなりませんでした。
その理由も、(1)と似ていて、相手方の使用する「UNDER THE SUN」は、
『アルバムに収録されている複数の音楽の集合体を表示するもの(題号)にすぎず、CDの出所たる製造、発売元を表示するものでなく、自己の業務に係る商品と他人の業務に係る商品とを識別する標識としての機能を果たしえない態様で使用されていると認められる』から。
(3)商標権:指定商品「コンピュータ用ゲームソフト」、商標「三国志」
相手方の行為:コンピュータ用ゲームソフトのタイトルとして「三国志 武将争覇」を表記して販売
これも、相手方の行為は商標権侵害となりませんでした。
その理由は、相手方の使用した「三国志 武将争覇」について、
『「三国志」の部分は、同プログラムのアウトプットである映像の内容である同ゲームが、「三国志演義」の題号を有する書籍に題材を取ったものであることを記述する趣旨で、同書籍の内容を引用表示するために表示されているものと言うことができるものであるから、~自他商品の識別機能としての機能を果たす態様で使用されているとは認められない』から。
推測は当っていたでしょうか?
以上のように、作品の名前として使用されている場合(商標としての機能を発揮する態様でない場合)は、商標権侵害となりにくいということがいえます。
…と思いきや、そうでない場合もあるところが、商標のおもしろいところ。
本日はこの辺で。
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コメント
Unknown
なるほど。とは言え、私の理解には時間が掛かりそうです。
権利者の立場からすると、ものを言いたくなりますね。
勉強になりました。有難うございます。
Unknown
ひろたさん。
こんにちわ。
本当にひろたさんのブログ勉強になりますね。
僕は、今日から本格的なスタートをします。
ひろたさんのブログ今後とも活用させて
頂きますので、宜しくお願いいたします。
Unknown
もともと商標が“出所表示機能”“自他商品識別機能”を本質的な機能としているので、このような機能を発揮しない態様で使用されていると「商標」でないということです…。
…つまり「商標」か否かの判断は、ケースバイケースにならざるを得ないと思います。