無料配布の新聞・フリーペーパーは、一体…

<平成19年(行ケ)第10008号 審決取消請求事件>(判決文はこちら
  ※当初の記事内容に加筆修正を加えています

 しばらくサボっていましたが、久々の判例紹介です。今回の事件、実務に結構影響があると思うのですが、最高裁まで行くでしょうか?

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 商標出願で指定する商品・役務を決定する際、「どのような行為で対価・収入を得ていますか?」といった表現を使って、お客様から情報を聞き出すことがよくあります。
 一般的な商売形態では、対価と引き換えに取引される「商品」が指定商品となり、対価と引き換えに提供される「役務(サービス)」が指定役務となることが多いので、一般的にはそういった表現で説明した方がざっくりなイメージ掴み易いと思うからです。

 それでは、街角で無料配布されている新聞フリーペーパーは、対価と引き換えに取引されるわけではありませんが、これらはどのような指定商品又は役務(サービス)となるのでしょうか?

 …というのが、この事件の争点です。
 実際に問題とされたのは、読者に無料で配布されていた新聞で、記事の他に広告も載せていました。収入源は広告主からの広告料です。

 まず、特許庁の言い分を。
 『本件新聞は、他人の広告を掲載し、頒布するために用いられる印刷物にすぎないものであって、市場において独立して商取引の対象として流通に供されたものとは認められないから、指定商品「新聞、雑誌」のいずれにも含まれない商品というべきである。
 『本件新聞は、広告収入で経済的収支が成り立つもので、読者には無償で配布されているチラシの類というべきものであって、~「新聞」とはいえない。
 『~本件商標は、指定商品「新聞、雑誌」に使用されているものではなく、「広告」の役務に使用されているもである。
 なるほど。広告を掲載することによって収入を得ているから、「広告」という役務(サービス)である、と。

 それでは、裁判所の判断を。
 まず、本件新聞が「商品」であるか否かについての判断です。特許庁が「広告」という
役務(サービス)だと言ったので。
 商標法上の「商品」とは何ぞや、という前提から。
 『商標法上の「商品」は,商取引の対象であるから,商品が売買契約の目的物であるなど,対価と引換えに取引されるのが一般的である。
 
 しかし,「商取引」は,契約の種類が売買契約である場合に限られるものではなく,営利を目的として行われる様々な契約形態による場合が含まれ,対価と引換えに取引されなければ,商標法上の「商品」ではないということはできない。取引を全体として観察して,「商品」を対象にした取引が商取引といえるものであれば足りるものと解される。

 それでは、本件新聞は?
 『~読者との間では対価と引換えでないとしても,無料紙を広告主に納品し,あるいは読者に直接配布することによって広告主との間の契約の履行となるのである。現に,本件新聞の創刊号は広告依頼主に商品として納品されているのであり,このような形態の取引を無料配布部分も含めて全体として観察するならば,商取引に供される商品に該当するということができる。
 このようなビジネスモデルは、例えばテレビ放送が、視聴者からでなく広告主から対価を得ていても、指定役務としては「広告」でなく「テレビジョン放送」であるということと同様だ、と。
 
 つまり、商標法上の「商品」「役務」は、一般的には対価と直接交換されるものですが、そうでないものもあり得る、という判断です。
 
 問題となった新聞は、記事&広告で構成されていたので、「新聞」と認められやすかったのでしょうか。
 内容的に、広告とは別の“読むべき情報”が掲載されていた、しかもそれが主要部分でだったということで。
 
 それでは、例えば記事が全くないようなフリーペーパー(お店の紹介&割引チケットだけが載っているようなもの)は、今回のように「新聞、雑誌」と認められるでしょうか…?やはり「広告」のような気がしますよね。

 じゃあ、記事が主要部分なのか広告が主要部分なのか客観的に判断できないような場合は…?
 取消されると怖ろしいので、「新聞,雑誌」も「広告」も指定しておきたい…。
 
 本日はこの辺で。
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