「iモード」が公序良俗違反…?

<平成19年(行ケ)第10303号 審決取消請求事件>(判決文はこちら

 原告は、NTTドコモの登録商標「iモード」を無効にする審判請求をしましたが、請求が認められなかったので、裁判所に提起したのがこの事件です。
 (なお、原告は、発明の名称を「数字キーのみを用いて総ての文字・記号を入力することが可能な入力装置とそれを用いたフィルム描写装置」とする特許(特許第3611580号)の特許権と、関連する米国特許の特許権を有しているようです。)

 この事件において、原告が主張した無効理由は、4条1項7号違反(公序良俗違反)と4条1項19号ですが、主として4条1項7号に関して主張したようなので、こちらをメインにご紹介致します。

 原告が、「iモード」が4条1項7号違反だと主張した理由は、簡単にいうと以下のとおりです。
 『「iモード」の標章を使用して対応端末「デジタル・ムーバーF501i HYPER」を発売したり、この端末の画面操作やインターネットを介してメールの交換等をさせたりする行為は、原告の有する特許権を侵害する。
 だから、「iモード」商標は、「他の法律によってその使用等が禁止されている商標」、「一般に国際信義に反する商標」、「構成自体に問題がなくても、指定商品について使用することが社会公共の利益や一般道徳に反することとなる商標」である。』

 この主張は…代理人をたてなかったからでしょうか??…

 案の定、裁判所はこんなことを言いました。
 『商標が4条1項7号違反に該当するか否かは、特段の事情がない限り、当該商標の構成を基礎として判断されるべきものであり、指定商品等についての商標の使用態様が他人の権利を侵害するか否かを含めて判断されるべきものではない。
 
 そして、特許権との抵触については、商標法でも調整規定(29条)が設けられていることに言及して、こう判断しました。少し長いですが、そのまま引用します。
 『
商標法29条において,商標権者による登録商標の使用が,その使用の態様により出願日前の出願に係る他人の特許権等と抵触するときには,指定商品又は指定役務のうち抵触する部分についてその態様により登録商標の使用をすることができないと定められ,知的財産権相互の調整が図られていること等に照らすならば,
 指定商品又は指定役務についての商標の使用態様によって他人の特許権等を侵害することがあったとしても,すなわち,そのような使用がされたり,あるいはそのような使用がされる事態が想定される状況等があったとしても,そのことから直ちに当該商標が,「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当するものと判断すべきではないといえる。
 
本件においてこれをみると,本件商標は,「iモード」を標準文字で表す構成からなる典型的な文字商標であって,本件商標の構成・内容から,他人の特許権等を侵害するものということはできない。そうすると,原告主張に係る本件商標の使用が原告の有する本件各特許権に抵触するという理由をもって,本件商標が「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当するということはできず,この点の原告の主張は失当である。
 
 そもそも、仮に特許権侵害となるような使用態様であったとしても、そのことから直ちに当該商標が「公序良俗違反」に該当するものと判断すべきでない、と。
 しかも、「iモード」の場合、典型的な文字商標で、特許権を侵害するものということはできないから、もちろん「公序良俗」とはいえない、と。 
 そんなわけで、「iモード」は4条1項7号違反でないと判断されました
  
 また、4条1項19号についても、同号に該当するという事実を原告が何ら主張立証しなかったので、同号の主張自体が認められませんでした。

 本日はこの辺で。
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ちなみに、他の法域の権利と抵触する事件として、以前、他人の実用新案権を侵害するような商品につき、不競法による保護が認められるか否かが争われた事件がありました(判例はこちら)。

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