チョコボールのお兄さん(田中星児)が手にしていたおもちゃの缶詰は児童の憧れでした。それでもわたくし、チョコボールと付き合って○十年になるのに、金や銀のくちばしを見たことがありません。今でも怪談じみた現象にしばしば取り付かれてしまうのに(その現象はこちら)。ひどい
さて、昨日の続きです。
今回の事件では、以下の2つの商標の類否が問題となりました(ともに指定商品は「菓子及びパン」)。
・「エンゼルスィーツ/Angel Sweets」の二段商標
・「天使のスィーツ」
まず、特許庁の審決では『非類似』という判断がなされ、原告の無効審判請求が認められませんでした。
それでは、その審決取消訴訟での裁判所の判断は?
○裁判所の判断
(1)両商標の観念
まず裁判所は、両商標の観念を、次のように認定しました(判決文6頁)。
・「エンゼルスィーツ/Angel Sweets」: 菓子に使用された場合は,菓子と密接に関連する「甘い菓子」を意味する一般的な文字である本件商標中の「スィーツ」の部分からは,出所の識別標識としての称呼,観念は生じず,「エンゼルスィーツ」「Angel Sweets」全体として又は「エンゼル」「Angel」の部分としてのみ称呼,観念が生じる。
・「天使のスィーツ」: 菓子に使用された場合は,菓子と密接接に関連する「甘い菓子」を意味する一般的な文字である本件商標中の「スィーツ」の部分からは,出所の識別標識としての称呼,観念は生じず,「天使のスィーツ」全体として又は「天使」の部分としてのみ称呼,観念が生じる。
→よって,本件商標からは,「天使の甘い菓子」,「天使のような甘い菓子」又は
「天使」という観念が生じる。また,~「エンゼル」「Angel」が「天使」の意味を有する我が国で親しまれた語であることに照らすと,引用商標からも,「天使の甘い菓子」,「天使のような甘い菓子」又は「天使」という観念が生じる。
また、被告の主張に対しては、こう述べています(判決文7頁)。
『被告は,両商標とも全体として特定の観念を生じない造語であると主張する。し
かしながら,「エンゼル」「Angel」が「天使」の意味を有することは,指定商品の取引者や需要者のみならず,我が国の一般的な外来語や英語の理解能力を前提とすると,一般人においても極めて容易に認識し得る程度のものであり,他方「スィーツ」の語が「甘い菓子の総称」という,菓子を意味する一般的な語であるから,「天使のスィーツ」と「エンゼルスィーツ」から,いずれも「天使の甘い菓子」,「天使のような甘い菓子」又は「天使」という観念が生じるものといわざるを得ない。』
(2)両商標の類否
そして裁判所は、両商標の類否について、次のように認定しました(判決文7~8頁)。
・外観: 相違、
・称呼: 相違(本件商標からは,「テンシノスィーツ」又は「テンシノ」の称呼を生じ,
引用商標からは,「エンゼルスィーツ」又は「エンゼル」の称呼を生じる)
・観念: 同一(上記(1)のとおり)
→本件商標と引用商標は,外観及び称呼において類似するとはいえないものの,観念が同一であって,取引者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すると,同一の指定商品である「菓子及びパン」に使用した場合に,商品の出所につき誤認混同されるおそれがあるということができる。なお,これに反する取引の実情は見当たらない。
で、結論として、本件商標は4条1項11号に該当する、という判断となりました。
ふ~む。
今回の事件では「スィーツ」の部分が出所識別標識と認められない(そのため、観念が同一だ)と判断されましたね。
そうですか。
でも、例えば「ラブコスメ」事件なんかが気になったりして。
「ラブコスメ」事件では、『一般的に「コスメ」が「コスメチック」の省略であることが認識されていなかった』とされ(←個人的には“?”)、「ラブコスメ」一連一体として認識すべし、と判示されたのでした(「ラブコスメ」事件についての記事はこちらなど)。
もちろん「ラブコスメ」事件は、今回の事件とドンピシャ同じパターンでないですから(「ラブコスメ」事件では取引実情も参酌されてたし)、「比較すな」と言われたら、すごすご引っ込むしかないですが。
ですが、あるコトバが商品と密接に関係あると認定されそうか否か(出所識別標識と認められそうか否か)を見極めるのって、なかなか難しい…というのが感想でございます。
それでは、本日はこの辺で。
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