その商標、素材のなの?商品のなの?

<平成25年(行ケ)第10032号 審決取消請求事件>(勝手に第一事件 判決文はこちら
<平成25年(行ケ)第10031号 審決取消請求事件>(勝手に第二事件 判決文はこちら

火曜日はビッグニュースがありましたねー。

え、なにって?

次期監督とGMですよ、CDの。

え、そのニュース知らないんですか!?それでも名古屋人と言えるんですか!?(えー言えなくてもいいってー?)

それはさておき、最新判決のアップロードペースにやや遅れをとっておりますひろたです、皆さまいかがお過ごしでしょうか。またもや“新しい”とはいえないくらいの判決ですが、ちょい気になっていたものをご紹介したいと思います。

一部不使用取消審決を受けた商標権者さんが審決を不服として請求した取消訴訟でして、使用商標は同じですが対象となる登録商標は2つあるので勝手に「第一事件」と「第二事件」とさせてもらって、今回は第一事件をご紹介いたします。

■本件商標

「グラム\GRAM」(二段併記)

指定商品:第25類「被服」等

■関係者のいろいろ

商標権者(原告さん)通常使用権者 東R商事さん(中国法人で、サンM社さんからの委託を受けてODM生産) →(販売)→ サンM社さん →(販売)→ マックH社さん

※ODM生産:(Original Design Manufactured) 受託先が商品企画から生産,その後の流通まで行い,委託先に商品(完成品)を提供することを主な業態とするモデル(判決文4頁)

■使用商標

通常使用権者東R商事さんが、ダウンウェア(ダウンジャケット含む。以下「本件商品」といいます。)に、以下のような下げ札(以下、「本件下げ札」といいます。)を付していたとされました。

表面には,その上部に周知著名な繊維メーカーである「TORAY」の文字が表示され,中段には「非常に軽い」を意味する英語「Extra Light Weight」の欧文字と「Gram」の文字が一体的に認識される態様で記載されている。
裏面には,「非常に軽い特殊な素材」,「東レの特殊軽量素材」とその素材の特徴が記載され,下段には表面と同様に「Extra Light Weight」と一体化された「Gram」の文字が書されている。さらに,その下には「この商品は東レのせんいを使用しています。」と記載されている。』(判決文10頁)

■JPOの審決での判断

JPOは、商標権者さんが提出した証拠等からして、通常使用権者の東R商事さんが、要証期間内において、本件商品に、本件商標と同一性のある商標を表示した本件下げ札を付したと認めることはできないとして、本件商標の登録を取り消す旨の審決をしました。

■裁判所の判断

主な争点をざっくり分けると、
(1)本件下げ札を付す指示書や下げ札に関するサンM社さんの代表取締役さんの陳述等の信用性と、
(2)本件下げ札に表示された本件商標が被服について使用されたものか否か
でした。

(1)について、裁判所は、通常使用権者の東R商事さんが本件下げ札を本件商品に付し、これをサンM社に販売し、サンM社さんがさらにこれを販売した事実を認めました。詳しくは判決文6-9頁をご覧ください。

(2)については、ちょっと詳しく触れたいと思います。

本件商品には、本件下げ札の他に、マックH社さんの有するマックハウス商標を表示した襟ネームが付され、かつ、マックハウス商標の表示された下げ札や他の下げ札が付されていたようです。

このことから、被告(審判請求人)さんは、本件下げ札に表示された使用商標は、本件商品の素材について使用されているというべきで、「被服」についての使用には該当しない、と主張されておられました(判決文5-6頁)。

これについて、裁判所は、以下のように述べています。
…,本件商品がマックハウスの「navy natural」ブランドの製品であること,また,東レ(原告)の繊維である特殊な素材を使用することにより本件商品が上記の特徴を有することが認識され得るものといえる。』(判決文10頁)

しかしながら、続いて、以下のように判示しています。
しかし,他方で,本件商品は,上記認定のとおり,東麗商事によりODM型生産され,サン・メンズウェアに譲渡されたものであり,本件下げ札は,その際に本件商品に付されたものである上,東麗商事がODM型生産をした本件商品に使用した東レの素材が非常に軽いため,ダウンジャケットである本件商品が,軽量感のあるソフトな風合いの機能性,快適性に優れるものであることを示すものであるとも解することができ,本件商品が東レの素材を使用した,「Gram」ブランドの衣類であるなどというように,被服である本件商品の出所及び品質等を示すものとして用いられているものとも理解し得るものである。このように,本件商品は,マックハウスの商品として,マックハウス商標が付されると共に,東麗商事により東レの特殊軽量素材の生地を使用してODM型生産された,軽量感のあるソフトな風合いの機能性,快適性に優れた衣類であることも表示するものとして,本件使用商標が付されて販売されたものであり,単に,本件商品に使用された素材を示すために,本件使用商標が本件商品に付されたものとみることは相当ではない。』(判決文10-11頁、下線は私が付しました)

裁判所は、次いで、本件商標と使用商標との同一性を肯定した上で、
本件商標と同一性を有する商標が通常使用権者の東R商事さんによって指定商品「被服」に使用したと認め、JPOの審決を取り消すとの判決をしました。

■コメント

この判決の参考になりそうな事件として、ZAX事件(平成16年(行ケ)404号)とかが思い起こされます。
「不使用取消を宥恕する商標の使用について -審決取消訴訟の判決を巡る一考察-」パテント2005 Vol.58 No.9
↑↑↑
木村先生のお言葉を借りれば、今回の判決は「一歩進んだ判断」だったと言えるでしょうか。

ちなみに、本件の商標権者さんは、「GRAM\グラム」商標を2012年に別件出願しとります(商標 2012-066336)。拒絶理由が出た後に上申書が提出されておりペンディング中のようです。

本日は以上です!

次回も見ていただけるならぽちっと押してくださいな(。-_-。)/

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