本日も中国の意匠のハナシです。ちょい古めですが、プレステの意匠で物品の類似が争われた有名な判決です。
○事件の概要
1995年11月: ソニーコンピュータエンタテイメントさんが中国でプレーステーションの意匠を登録(意匠特許第94311846.8号)。物品名は「コンピューターゲーム機」。
2000年 4月: 中国のB社さんが「VCDプレーヤー」の意匠を登録(意匠特許99335291.X号)。
2000年11月: ソニーCEさんがB社の意匠権の無効宣告を請求。
2001年 9月: B社さんの意匠権の無効決定。
2002年 3月: B社さんが無効決定を不服として北京市第一中級法院(地裁的な裁判所)に提訴。
2002年 9月: B社さんの主張を認める判決。
2002年10月: ソニーSEさんが北京市高級人民法院(高裁的な裁判所)に上訴。
ソニーCEさんの意匠特許(意匠特許第94311846.8号)「コンピューターゲーム機」
B社さんの意匠特許(意匠特許99335291.X号)「VCDプレーヤー」
○争点
ソニーCEさんの意匠特許は「コンピューターゲーム機」に係るもので、B社さんの意匠特許は「VCDプレーヤー」に係るもの。
両物品は意匠分類が異なるが、類似といえるか否か。
○北京市高級人民法院の判断(「中国の知的財産権侵害判例・事例集」JETRO 2004年3月 p,.24-25より抜粋 ←JETROさんお世話になってますよー(仕分けられちゃうの~?さりげにアピールしときますー))
『製品の種類が同一または類似することの判断は、製品の用途が同一または類似するかを基準としなければならない。係争意匠の製品名称は「VCD プレーヤー」であり、対比資料の意匠の製品名称は「コンピューターゲーム機」である。両者が同一または類似の製品に属するか否かの判断の要点は、対比資料中に「VCD を放映する機能を有するコンピューターゲーム機」という点が示されているか否かであり、これは対比資料中の図及び文字により公開される情報に基づいて判断すべきである。対比資料では、製品の名称、分類のみが記載されており、製品の用途について記載はない。対比資料の図では、意匠製品がCD-ROM を有することは見て取れるが、それだけではこれがVCD を放映する機能を有するコンピューターゲーム機であるか否かを判断することはできない。よって、再審委員会による、対比資料のコンピューターゲーム機はVCD の放映にも使用し得るため、両者は用途において類似し、類似する物品であり、可比性を具備するという認定は、事実的依拠に欠ける。』(下線は私が付しました)
旧法56条2項の規定(意匠特許権の保護範囲は図面又は写真中に示された特許製品に基づき定められる)に忠実に沿った判断でございました。
このように両物品は類似しないと判断された結果、ソニーCEさんの訴えが退けられました。
なお、2006年の審査指南の改正によって、多用途の製品には用途に対応する複数(一般的に2つ)の分類番号が与えられることになりましたね。
また、意匠分類については、製品の名称」及び簡単な説明に明記される「所属分野、用途、使用方法及び使用場所」などの情報は、分類のための拠所や参考にすることができるとされましたね。
本日はこの辺で。
次回は…昨日アップされた意匠権侵害訴訟のハナシかなぁ??
次回も見ていただける方、ぷちっと押していただけると嬉しいです。
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この記事を読んでひろた興味を持たれた方は…
【執筆記事】
「知財産管理」誌 VOL.58 NO.5
(「腸能力」審決取消請求事件(平成19年(行ケ)第10042号 審決取消請求事件)
内容はこちらからどうぞ
【関係事件】
代理人になった事件です。負けたのでご紹介するのをためらっておりましたが、思い切って…。
平成18年(行ケ)第10367号審決取消請求事件
なお、牛木理一先生のHPで紹介いただいているので(「特許ニュース」2007年6月29日号の記事です)、そちらも併せてご覧ください~(こちらのB-27の項です)。
【ZIP FM Z-TIME BIZ】
ここのフォトギャラリーになぜかわたくしが。
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