君の脚が好きだから

 昨日は画像アップでテンパってて、東京都の商標権公売の落札情報がすっかり抜け落ちてました。
 ぐずぐずしてたら早速ニュースになってしまったので、それをご紹介してお茶を濁します…えらい値段で落札されてまったがね…(2010.3.9、asahi.comの記事

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 さて。今日こそ終わりたい細胞バナシの続きです。
 
 裁判所は、本件意匠と被告製品意匠の類否判断について、
 ・両意匠の共通点は皆、類否判断に大きな影響を与えるものではない、
 ・両意匠の差異点も、被告製品意匠の「脚部」以外は、類否判断に大きな影響を与えるものではない、
 としたのでありました。

 そして、共通点の中でも、本件意匠の要部と認定された「段差」については、こんな風に言われておりました。
 『本件段差自体の存在のみによって美感を生じているわけでなく,本件段差により,容器本体の下部4分の1程度が,上部より一回り小さな台を形成することにより得られる全体の印象によっても,美感を想起しているということができる。そして,この段差によって分割された下部は,前記…のとおり,被告脚部の存在により,本件登録意匠と顕著な差異点が認められ,その結果,両意匠によって異なる印象を与え,本件段差によって想起される美感は,同じとはいえない』(原審判決文25~26頁。下線は私が付しました)。


 “顕著”と表現された差異点、被告製品意匠の「脚部」をズームアップ!

 
 さて。この差異点2(被告製品意匠の脚部)について、裁判所はどう判示したかというと…
 『被告脚部に係る差異点2について,本件物品においてかかる脚部を設ける構成が,本件出願時において公知ないし周知であったと認めるに足りる証拠はない。
 また,前記本件物品の使用態様によれば,本件物品では,検体を容器に入れて処理した後,トレーに入れ替え,容器本体をトレーに蓋をするように載せて溶融パラフィンを流し込み,容器本体底面にパラフィン標本を付着させ,さらに容器本体を裏返し,その底面を上にしてアダプターに固定してパラフィン標本のスライスを行うというのであり,かかる工程の中で需要者が最も気を遣うのはミクロン単位での標本のスライスを行う作業と考えられる。かかる本件物品の使用態様に照らすと,本件物品において,最も気を遣う作業を行う際の作業台となる容器本体底面の構成は,需要者に注目される重要な部分となるものと認められる
 そして,別紙5写真6及び写真7のように,被告製品の容器本体底部にパラフィン標本を付着させた上で,これを裏返すと,被告脚部は相当に目立つ構成となって需要者の前に現れることになる。しかも,被告が実施したアンケート結果(乙20の1~10,乙22の1~3)によれば,被告脚部は,容器本体底面に付着させたパラフィン標本の動きを規制して剥離するのを防ぐという効果や,被告製品を積み重ねて薬液等による処理を行う際に,容器同士を密着させず,被告脚部の間からも薬液等を流入させるという効果もあると考えられるから,多くの需要者は被告脚部に着目するものと考えられる。現に,上記被告が実施したアンケートの結果によっても,多くの者が被告製品の採用理由として,被告脚部の存在を挙げており,被告脚部が需要者に注目される構成であることが窺える
 なお,原告は,容器本体底面にパラフィン標本を付着させると,被告脚部はパラフィンに埋もれて見えなくなる旨主張するが,容器本体底面に付着させるパラフィン標本の大きさは,溶融パラフィンを充填するトレーの大きさによって異なり得るものであり,必ずしも被告脚部がパラフィンに埋まるとは考えられない。むしろ,証拠(乙19の1の1枚目及び乙21の4枚目)によれば,パラフィン標本は容器本体底面の全面にわたって付着するのではなく,周縁よりも内側に付着するのが通常と考えられるし,被告製品において使用が推奨されている「バイオベッセルトレー」(乙14)の形状からすると,被告製品においても同様と考えられる。そうすると,被告製品において,パラフィン標本を容器本体底面に付着させても,被告脚部がパラフィンに埋もれて見えなくなるとは認められない。
 また,原告は,需要者が別紙5写真6及び写真7の撮影方向から本件物品を眺めることはない旨主張するが,仮に全く同じ角度から視認することはないとしても,被告脚部が同各写真の程度露わになっていれば,乙第1号証2枚目に示されるようにミクロトームに設置してスライスする際においても,需要者は被告脚部の存在に容易に気付き得ると考えられる。
 以上のように,本件物品における容器本体底部の構成は需要者の注意を惹く部分である上,被告製品には被告脚部という従前には見られない新たな形態が付加されており,被告脚部の有無に係る差異点2は両意匠の類否判断に大きな影響を与えるものというべきである
』(原審判決文27~29頁。下線は私が付しました)



 そう、需要者は、アナタの脚に注目するの。アナタの脚が好きなの。
 
 バブリーな時代の終焉の頃、就職活動中に、東○海○なる保険会社の女子学生の採用基準が“脚のきれいさ”だというマコトしやかなウワサが流れており、実際に脚がきれいだった私の友人は採用されましたが、それと同じですね(?)。
 (↑今から考えるとちょーセクハラ。訴えられそう…)

 ということで、脚部のあるなしは“顕著な”差異とされ&限定的ながらも類否判断に影響を与える差異点6(被告蓋切り欠き部)ともあいまって、被告製品意匠は全体として本件意匠と類似するとはいえない、とされたのでした。

 …というのが、原審の判断でした。

 それで、肝心の控訴審判断は?
 
 控訴審は、原審判決に追加や変更を行っておりますが、基本的に原審判決に基づいた判断をしております。
 なお、詳しい追加箇所や変更箇所は…判決文をご覧ください(といって逃げる)。
 
 あ、でもちょっとだけピックアップ。
 『両意匠の容器本体の短辺部の逆凹字状の形状を観察する場合には,被告脚部が同時に観察される。そして,被告製品意匠は,容器本体のみの場合には逆凹字状に差異点6の切り欠き部と被告脚部があいまって短辺部を側面視したときの輪郭及び陰影がリズミカルな印象を与え,容器本体に蓋を係合させた場合には,逆凹字状に蓋のレ状突起と被告脚部があいまって,短辺部を側面視したときの輪郭及び陰影がやはりリズミカルな印象を与える。これに対し,本件意匠は,切り欠き部や被告脚部を有しないため,短辺部を側面視したときにいくぶんどっしりとした安定感ある印象を受ける。』(判決文9頁、原審「ウまとめ」についての控訴人(被告)の主張に対する判示)

 結論として、控訴審でも被告製品意匠は本件意匠と類似しないとされたのでした。

 本日はこの辺で。
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※本件意匠は、無効審判(無効2007-88024)を請求されておりましたが、審決では登録無効になりませんでした。
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